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2009年6月 4日

「めあ うま」 が "Man and Woman"だって?

近頃の日本の歌を聴いていると、日本人のシンガーもずいぶん英語の発音がよくなったものだと、しみじみ思う。

帰国子女とか、インターナショナル・スクール出身とかが増えたんだろうなあ。口の中の構造がアメリカ人という感じのシンガーが、全然珍しくなくなった。

ビジネス英語など、とにかく国際的に通じりゃいいというようなケースでは、私はカタカナ英語だろうがなんだろうが構わないと思う。そりゃ、ネイティブ・スピーカーのように流れるようにしゃべれる方が、ビジネスだってずっとやりやすいのだが、とりあえずは「意味が通じる」ことが先決だ。

しかし、歌の場合は違う。意味が通じりゃいいってものじゃない。なにしろ音楽は雰囲気のものである。歌詞だって英語らしい発音があってこそ心地よくリズムとメロディに乗るのだ。カタカナ英語でジャズやロックを歌われると、少なくとも私は少々萎えてしまう。

昔の日本では、プロの歌手の多くがスタンダード・ジャズをカタカナ英語で歌っていた。私はそれを聞きながら、「どうして耳で丸ごと覚えて、自分の口で再現できないんだろう」と、不思議でしょうがなかった。彼らは多分、カタカナでフリガナを振って歌詞を覚えたんだろう。日本人が英語を話したり歌ったりしようとする時の最大の敵は、実はカタカナである。

ところが、最近の若いシンガーの中には、英語を英語としてフツーに歌える人が増えてきた。ロックでも R&B でもジャズでもフォークソングでも、これでこそちゃんとした雰囲気が出せるというもので、喜ばしいことである。「♪ だし・おーるないっ」(Dancing All Night)の時代は、遠く過ぎ去ったのである。

そういえば、あの聖子ちゃんも、ベルリッツで英語を習ったという噂の割には "Kiss in blue heaven" とは、何度聞いても自然には聞こえなかった。まあ、この場合は発音云々より "the" が抜けていることの方が大きいと思うのだが。

"Sun" とか "sea" とか "ocean" とかには "the" が付きものである。で、"heaven" の場合もこうしたケースでは、前に来るのは "the" と刷り込まれているから、"blue" が自然に "blue" とは聞こえない。

注: "My Blue Heaven" (『私の青空』)など、所有格がついちゃう場合とか、"go to heaven" (死んじゃうこと) や "by Heaven" (神かけて) などイディオム的な例外を言い出せばきりがなくて、"I'm in heaven" (死ぬほどいい気持ち) なんていう、すごく官能的な言い回しがあったりもするけどね。

そんなわけで、「聖子ちゃんって、"the" を 『ズー』 と発音する娘なんだ」 と、私はずっと思っていた。まあ、本来は "Kisses in the Blue Heaven" としてもらいたかったところである。

だが、これまでで一番驚いたのは、My Little Lover というグループの "Man and Woman" という歌である。わたしはつい最近まで、この歌のリフレイン 「♪ めあ ♪ うま」 って、一体なんの呪文だろうと思っていた。

まさか 「♪ めあ ♪ うま」 が "Man and Woman" だったとは、夢にも思わなかったよ。題名知らなかったし。

毒を食らわば皿まで・・・本宅サイト 「知のヴァーリトゥード」へもどうぞ

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コメント

中学の英語の授業で、「英語はあなたを尊重する言い回し」ということで、「You and Me」と表現するように習いました。(という記憶が…、あるんです…。)
 同様に、女性を先にいいなはれということも…、習ったような…、いい加減な記憶でスンマセン。

 厳密な発音は置き去りにして、「めあ うま」の“め”はMenじゃないのぉ?“め”なら“ウィミン”でしょうし…。

 最近どっかで、「Me and You」という歌詞を聴きましたし…。

投稿: 乙痴庵 | 2009年6月 4日 12:25

乙痴庵 さん:

>同様に、女性を先にいいなはれということも…、習ったような…、

"Ladies and gentlemen" は、決まり文句ですが、その他でよく聞くのは、"boys and girls" ですね。

決まり文句以外は、どっちでもいいのかも。

>厳密な発音は置き去りにして、「めあ うま」の“め”はMenじゃないのぉ?

日本人の耳には "man" でもどっちかというと 「マン」 よりは 「メン」 に聞こえますね。

>最近どっかで、「Me and You」という歌詞を聴きましたし…。

順序としてそう言わなければならない必然性がある場合を別とすれば、普通は "you and me" でしょうね。

投稿: tak | 2009年6月 4日 13:18

聞いてみました。めあ うま はひどいですね。
これじゃ誰も man and woman とは思わない。
“n”を何で発音しないのだろう。

日本人がジャズやAmerican popsを歌うと語尾の“n”や“t”を発音しないケースが殆んどですね。
nativeが歌うと“n”や“t”はどんなに小さくとも必ず発音してますよね。

美空ひばりのジャズのレコードを持ってますが、彼女は英語を耳で聞いて歌ってますね。“n”と“t”は微かに、しっかりと発音されてます。

船会社の人が英語で電話しているのを聞いたことがあります。呆れるほどのカタカナ英語でしたがしっかり会話してました。でも歌は別ですよね。情景が伝わらない。

投稿: 偽浜っ子 | 2009年6月 4日 15:19

偽浜っ子 さん:

>nativeが歌うと“n”や“t”はどんなに小さくとも必ず発音してますよね。

"n" については、結構はっきり発音される傾向がありますが、語尾の子音一般については、一概に言えません。

例えば 「雨にぬれても」は、「レインドロップス フォリノマ ヘッ」 としか聞こえませんし。
(最後の "d" が聞こえない ^^;)

大体、"head" は 「ヘッ」 としか聞こえません。
「1人 5ドルずつの割り勘」 は、「ファイヴ ダラーズ パ ヘッ」 ("five dollars per head") なんて言います。

「パーヘッド」 とは絶対に聞こえませんが、最後はきちんと下の先が上の歯茎の裏に付いて、"d" の形になっています。だから、その後に母音が来ればリエゾンはきちんとします。

要はリエゾンです。次の母音に続けてくれれば、そこに子音があると明確にわかります。

「めあ うま」 のケースでも、「メナンドゥマン」 (あるいはもう少し軽く 「メナンヌゥマン」) という感じで歌ってくれれば、きちんと "Men and Woman" と聞こえるわけなんですがね。

ただ、いずれにしても、普通の英語の感覚で "men and woman" という場合には、あんな風なリズムとメロディはあり得ない感じがします。

とってつけたような感じですね。
まあ、日本語の歌に出てくる英語は大抵そうですが。

>美空ひばりのジャズのレコードを持ってますが、彼女は英語を耳で聞いて歌ってますね。

これ、本文で触れようと思いつつ、あまり長くなりそうなのでやめといたことなんですが、まさに本当です。
(代わりに触れてくださって、ありがとうございます)

彼女は英語がしゃべれたとは思えないんですが、ジャズのスタンダードを歌っても、きちんと雰囲気出してます。
よほど耳がいいんですね。
やっぱり天才です。

投稿: tak | 2009年6月 4日 15:43


Me and My Shadow
と言う題名のポピュラーソングがありますね

美空ひばりさんのジャズソング
雰囲気はチャンと出ていますか?

私は、不思議な (笑) 雰囲気だと思いました
すみません (笑)

投稿: alex99 | 2009年6月 4日 19:08

alex さん:

>美空ひばりさんのジャズソング
>雰囲気はチャンと出ていますか?

>私は、不思議な (笑) 雰囲気だと思いました

そりゃ、言っちゃえば、なんでも 「ひばり節」 にしちゃう人ですから ^^;)

投稿: tak | 2009年6月 4日 19:15

>「パーヘッド」 とは絶対に聞こえませんが、最後はきちんと下の先が上の歯茎の裏に付いて、"d" の形になっています。だから、その後に母音が来ればリエゾンはきちんとします。

私が書きたかったのはここなんです。語尾の子音がはっきり発音されてると書いたのは、舌がその形になっているということなんです。スピーカーで聞くと“d”や“t”は聞こえないことが多いですが、ヘッドフォンで聞くと舌の先が歯茎の裏に当たってるのがよくわかります。nativeが言うには発音しなくてもかまわないけど、舌の先を歯茎の裏にあてなくてはいけないのだそうです。
日本人の英語の歌はフレーズの語尾の子音の発音(というか歯茎の裏に舌の先を触れる動作)が省略されてるからおかしくなるのです。

alexさん
私はジャズは好きですが、美空ひばりのジャズは、発音、音程の正確さ、ノリのよさを総合すると日本人ではトップだと思います。
多少、ひばり節は入りますが、ひばりが歌うのですからそれで構わないし、むしろそうすべきだと思います。

投稿: 偽浜っ子 | 2009年6月 4日 20:20

私は、左ききに関する歌で一世を風靡した某女性歌手の大ファンなのですが、その方がAs Time Goes By(映画「カサブランカ」で出てきた曲です)をカタカナで歌っているのをユーチューブで見て、ちょっとガクッと来ました。
元アイドル歌手と言えども、歌そのものは上手な方なんですけどね。お年を召されてからも「左きき」を歌う姿はとてもチャーミングで、私は年甲斐も無くハートを奪われ、先日ファンクラブに入会してしまいました。

一方、昨年亡くなったファッションモデルの甲田美也子さんが歌っているこの↓Over the Rainbow は、フランス訛りの英語という高等技術です。耳で覚えられたんでしょうね。
http://www.youtube.com/watch?v=jOizZ7PT17E

投稿: きっしー | 2009年6月 4日 21:24

訂正です。
「フランス訛り風」とすべきでした。
聞き直してみたら、フランス語の形跡が明確にあるわけじゃあないのですが、なんとなくそう感じてしまうオーラがあるんです。

投稿: きっしー | 2009年6月 4日 21:31


偽浜っ子 |さん

私は、あまり日本人のジャズ・ヴォーカルを聴いたことが無いし、50・60年代のモダンジャズだけが好きな偏狭な人間なので (笑) 偏見ご容赦

美空ひばりさんのジャズも、二・三回、それも昔、聴いただけでした
失礼しました

投稿: alex99 | 2009年6月 4日 21:48

偽浜っ子 さん:

>日本人の英語の歌はフレーズの語尾の子音の発音(というか歯茎の裏に舌の先を触れる動作)が省略されてるからおかしくなるのです。

「めあ うま」 の場合は、明確に "n" の舌の形にしないで、鼻濁音の、舌の奥でやる 「ん」 にしちゃって、しかもその後に続く "and" との間で 「声門閉鎖」 してるので、困るんです。

この場合の 「声門閉鎖」 とは、 「砂糖屋」 と 「里親」 を区別する際に、「里親」 を言うときに 「さと・おや」 として、ナカグロの部分でちょっとだけ息を殺していることを言います。

「めあ うま」 は、するべきでないところで声門閉鎖しているので、自然なリエゾンが消えて、わけわからなくなっています。

ちなみに、JR の英語車内アナウンスも、余計なところで声門閉鎖していて、気になります。

"We look forword to seeing you again."

の最後が自然に 「スィインギュー」 にならずに、「スィイン(グ) ユー」 になってます。

>多少、ひばり節は入りますが、ひばりが歌うのですからそれで構わないし、むしろそうすべきだと思います。

私もそれに賛成です。

投稿: tak | 2009年6月 4日 22:39

きっしー さん:

みましたみました。

2000年の 「左利き」 は、なかなかですね。
"As time goes by" は、もっとカタカナの人、いくらでもいますから、そんなにガクっとこないでおいてください。

YouTube ではみつかりませんでしたけど。

>一方、昨年亡くなったファッションモデルの甲田美也子さんが歌っているこの↓Over the Rainbow は、フランス訛りの英語という高等技術です。

「フランス訛り風」というか、アストラッド・ジルベルトの正調 「台所の鼻歌風」の系譜というか、なかなかのものですね (^o^)

投稿: tak | 2009年6月 4日 23:00

>近頃の日本の歌を聴いていると、日本人のシンガーもずいぶん英語の発音がよくなったものだと、しみじみ思う。

きっしーさんの紹介されている方もそうですけど、女性歌手は発音がほとんどネイティブと変わらない人が結構いますね。
男だと布施明くらいしか思い浮かびません。

めあうまは、雌馬=mareなので、ある意味間違いではないような気もします(笑)。

投稿: ぐすたふ | 2009年6月 6日 09:42

めあ、うま。
わたしはこの歌詞をかなり長いこと
「♪出会うわ」
という日本語だと空耳してました。
たぶんタイトルは認識していたにも関わらず…。

美空ひばりのジャズ、つい最近始めてラジオで聴いたのですが
(平井賢がそれに自分の歌をかぶせてデュエット風にしたものを新譜に収録したそうです)、とても気に入りました。
わたしは今まで「ひばり節」があまり好きじゃなかったのですが、これはまったくクセが気にならなかったです。
タイトなロングドレスのアメリカ人女性が歌ってる姿をイメージしながら聞きほれていました。

投稿: らぶ | 2009年6月 6日 16:58

ぐすたふ さん:

確かに、日本のポピュラー音楽の世界では、男性で英語の発音いい人、少ないですね。

不思議。

>めあうまは、雌馬=mareなので、ある意味間違いではないような気もします(笑)。

わはは (^o^)

投稿: tak | 2009年6月 7日 08:57

らぶ さん:

>わたしはこの歌詞をかなり長いこと
>「♪出会うわ」
>という日本語だと空耳してました。

そうとも聞こえないことはないですね。
ある意味、聞く方の聞きたいように聞こえます。

私は呪文だと思ってましたが ^^;)

>わたしは今まで「ひばり節」があまり好きじゃなかったのですが、これはまったくクセが気にならなかったです。

やっぱり浜っ子なんですね。

投稿: tak | 2009年6月 7日 08:59

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