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2009年6月30日

マイコーが教えてくれた

先週の金曜日、朝のニュースでマイケル・ジャクソンが病院に搬送されたと言っていて、昼にインターネットで速報をみると、死亡が確認されたとのことだった。

夜に帰宅すると、今年 22歳の末娘が 「マイコーが死んじゃったね」 と、ぼそりと言った。我が家では、それがすべてだった。

我が家の三人娘は、上から 28歳、25歳、22歳である。長女が生まれた翌年、あの伝説のアルバム "Thriller" が全米チャートで 37週(つまりたっぷり半年以上)にわたってトップに君臨し続けた。次女と三女はまだこの世に存在していなかった。

1987年に "Bad" がリリースされた。私は個人的には、マイケル・ジャクソンはこの "Bad" で終わったと思っているが、この年、我が家の三人娘は、それぞれ 6歳、3歳、1歳だった。3人とも、マイケルの一番すごかった時期を自覚的にはリアルタイムで経験していない。

我が家の娘たちにとってのマイケルは、「昔はとってもかっこよくてスーパースターだったらしいけど、ゴシップまみれのちょっと気持ち悪い人」であるにすぎない。だから 50歳の若さで死んだというニュースにも、「いかにも不健康そうだったもんね」で済んでしまう。

マイケルが一番かっこよかった 1980年代にハイティーンだった 40歳前後の世代からみると、「あの世紀のスーパースターの死に、なぜそんなにも冷淡でいられるのか?」と嘆きたくなるであろうほど、冷静そのものなのである。

それは私の世代が、エルヴィス・プレスリーの死に、とても冷淡だったのと同じようなものだと思う。団塊の世代にとっては死ぬほどかっこよくみえたエルヴィスも、私の世代にとっては、ただの太った不健康そうなおじさんだったのだ。

彼の若い頃の映画をリバイバルで見れば、なるほど、確かにスリムでセクシーでかっこよかったというのはわかるが、晩年の変わり果てた姿の方がリアルタイムのイメージなので、価値観が覆されるまでには到底いたらない。

だから 1980年 12月にジョン・レノンが死んだというニュースをカーラジオで聞いた時には、あまりのショックに手が震えて運転不能状態に陥り、路肩に 30分も停まりっぱなしだった私でも、エルヴィスが死んだと聞いた 1977年は、「ちょうどお盆だしね」なんて、まったく冷静そのものでいられた。団塊の世代にはかなりの衝撃だったようだが。

話は変わって、マイケル・ジャクソンの功績の一つは、英語をカタカナで読むとかっこ悪いということを、日本人に知らしめたことなのではないかと思う。その影響は、我が家の末娘が 「マイコー、死んじゃった」 なんて言っていることにまで連なっている。

"Beat It" は、決して「ビート イット」ではなく、「ビーリッ」であり、"Bad" は「バッド」じゃなく「ベェッ」であり、"Thriller" は「スリラー」じゃなく「トゥイラー」であると、マイコーはあの頃テレビで繰り返し流れたプロモーション・ビデオで教えてくれた。

エルヴィスは自らの南部訛りにそれほどプライドをもっていなかったようで、時代的限界もあって、とくに 60年代になってからは中途半端にきれいな発音を目指していたように思う。だから、団塊の世代のエルヴィス・ファンの多くは、もろにファンキーな英語は苦手なようで、「油煙夏腹」式か、カタカナ英語かのどちらかである。

NHK のラジオ番組でアナウンサーが追悼の意を込めて、「それでは最後に、マイケル・ジャクソンさんの『びーといっと』 をお送りします」なんて言うのを聞くと、私はかなり脱力してしまうのである。

【2020年 3月 19日 付記】

上記の「油煙夏腹」のリンク先の YouTube 動画は削除されたようで閲覧できなくなっている。元々は "Hound Dog" のビデオにリンクされていた。

歌詞の最初の "You ain't nothin' but a hound dog" が「油煙夏腹 ハウンドッグ」と聞こえていた。

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音楽」カテゴリの記事

コメント

ハマコーは、自称「ベェッ」でしたね。

投稿: 乙痴庵 | 2009年6月30日 12:41

マイケルはこれから復活というところだったのに残念でしたね。

Billy Jean も Beat It も Bad も Thriller も Say Say Say も Black Or White も、古くは Ben や I'll Be There なんかも全部好きなんですけど、耳が悪いのか彼の発音はなかなか聞き取れません。

Smooth Criminal なんてホントに何を言っているのかわからなくて、聴くたびに、『ジャンピン・ジャック・フラッシュ』という映画でウーピー・ゴールドバーグが手がかりのローリングストーンズのテープを再生しながら、'Mick Mick Mick, Speak English' と言っていたのを思い出してしまいます (^^;

マイケルの歌は、ラブソング以外にもメッセージ性のある曲や、スリラーのようにストーリーのある曲があったりと、バラエティに富んでいていいですね。

日本の歌は、恋愛の歌か人生の応援歌に二分されている印象で、今ひとつ面白みにかける気がしてしまいます。

それ以外の曲も作られているんでしょうが、いかにも大衆ウケを狙ったようなもの以外はなかなか表に出てこない感じですね。

戸川純みたいなインパクトのある歌をときどきは聴きたいなあと思っています。

>NHK のラジオ番組でアナウンサーが追悼の意を込めて、「それでは最後に、マイケル・ジャクソンさんの 『びーといっと』 をお送りします」 なんて言うのを聞くと、私はかなり脱力してしまうのである。

確かに興ざめですね。アナウンサーが「『ビーリッ』をお送りします」と言うところ、ちょっと聞いてみたい気もします(笑)
(『ビーリッ』だと、「マイケル・ジャクソンで『ビーリッ』」みたいに語順も変えないとなんか収まりが悪いですね)。

投稿: ぐすたふ | 2009年6月30日 21:28

乙痴庵 さん:

>ハマコーは、自称「ベェッ」でしたね。

ここでハマコーが出てくるとは思いませんでした。
(マイコーと韻を踏んでるけど ^^;)

ハマコーは、マイコーより村田英夫がお好きのようです。

投稿: tak | 2009年6月30日 23:55

ぐすたふ さん:

>マイケルはこれから復活というところだったのに残念でしたね。

復活しても、ちゃんとダンスができたでしょうかね。

エルヴィスの晩年のステージ (あの白いびらびら服の、もっさりとした動きの) を思い出してしまい、マイケルもあんなになったらやだなあと思っていたところでした。

>耳が悪いのか彼の発音はなかなか聞き取れません。

彼の発音は、結構濃厚な R&B の系譜に乗っかっていますので、グスタフさんの耳が悪いわけではないと思いますよ。

>マイケルの歌は、ラブソング以外にもメッセージ性のある曲や、スリラーのようにストーリーのある曲があったりと、バラエティに富んでいていいですね。

それは本当にいえます。
ものすごい才能だと思います。

投稿: tak | 2009年7月 1日 00:01

>NHK のラジオ番組でアナウンサーが追悼の意を込めて、「それでは最後に、マイケル・ジャクソンさんの 『びーといっと』 をお送りします」 なんて言うのを聞くと、私はかなり脱力してしまうのである。

NHKの歌番組で司会がPOPSの紹介をするときには完全にひらがな英語ですね。雰囲気ぶち壊しです。

小林克也氏のようにいかないものか。

投稿: 偽浜っ子 | 2009年7月 1日 02:33

偽浜っ子 さん:

>NHKの歌番組で司会がPOPSの紹介をするときには完全にひらがな英語ですね。雰囲気ぶち壊しです。

逆に、あれが NHK の 「テイスト」 というものと思えば、まったりできたりして ^^;)

でも、一度でいいから、NHK のアナウンサーに、「ナァウ、ウィゴナ プリゼンチュー マイコー・ジャクスンズ ビィリッ! ゲリロォン!!」 とやってもらいたい気もします (^o^)

投稿: tak | 2009年7月 1日 11:08

御歳80ウン歳のうちのばあちゃんも「マイケル・ジャクソン死んじゃったんだねぇ。」と知っていました。
プレスリーやジョン・レノンやマイコーの様な老若男女ほとんどの日本人が知っている外国人アーティストって、後はほとんどいないんじゃないですかね。(あとはポールかマドンナぐらい?)

そういえば、子どもの頃「bad」を始めて聞いた頃、「何でこの人は「んだべー」って(福島の方言を)連呼しているんだろう?」と思っていたんですけど、takさんのお話だとあながち間違いではないようですね。

投稿: 雪山男 | 2009年7月 1日 12:28

雪山男 さん:

>御歳80ウン歳のうちのばあちゃんも「マイケル・ジャクソン死んじゃったんだねぇ。」と知っていました。

それは素晴らしい!

>プレスリーやジョン・レノンやマイコーの様な老若男女ほとんどの日本人が知っている外国人アーティストって、後はほとんどいないんじゃないですかね。(あとはポールかマドンナぐらい?)

そうですね。
名前を言われて、ほとんどの人が曲と顔を思い浮かべられるというのは、本当にポールとマドンナぐらいしか残っていませんね。

ちなみに、ポールとマドンナは、カタカナであらわしたら「ポー」と 「ムダァヌ」という感じの発音でしょうかね ^^;)

>そういえば、子どもの頃「bad」を始めて聞いた頃、「何でこの人は「んだべー」って(福島の方言を)連呼しているんだろう?」と思っていたんですけど、

カタカナ英語の人は、「べぇっ」 が "bad" とは気付いていないこともあるみたいです。

"Thriller" も、「トゥイラー」 のリフレインががそうなんだとは思っていないかも。

投稿: tak | 2009年7月 1日 12:55

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