『唯一郎句集』 レビュー #42
三連休の集中的『唯一郎句集』レビューの中日。今回はたったの 2句である。というのは、この句集の P65 には、2句しか載っていないからである。
思えばこの句集は追悼句集だけに、ずいぶん贅沢な作りである。1ページに 1句しか載っていないこともある。
このレビューシリーズは、原則として 1回に 1ページ分の句を取り上げている。初期の頃は、1ページに 2句しかなかったりすると、隣のページの 3句と合わせて 5句分をレビューしたこともあったが、回が進むにつれて、1ページ分のみとすることにした。もっとも、1ページに 1句しかない場合は、隣のページと合わせてしまうが。
というわけで、レビューに入る。
あ児の玩具を買って來て冬夜をおどけて見る
前回の句が晩秋から初冬の作品で、今回は冬になっている。ここに出てくる 「あ児」 は、次男だろうか。彼はまだ元気で生きている。
子供用のおもちゃを買ってきて、おどけてみせる唯一郎。多分、長男が赤ん坊だった頃よりも、父親としての余裕が出てきているのだろう。珍しく親密で明るさのある句だ。
冬の夜がかなしうてがらがら玩具を鳴らしてあ児よ
庄内の冬の夜は長く、悲しい。しかし、この句は 「かなしうて」 と言っている割には切なさがない。やはり父親としての情愛が、生来のペシミズムを影に追いやっているのだろう。
唯一郎は、人付き合いは上手ではなかったらしいが、実は情愛に溢れたひとだったようだ。
とりあえず、本日はこれまで。
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