『唯一郎句集』 レビュー #46
今年の夏の天気は、一体どうなっているのだろう。関東は梅雨が明けたと発表されたのだが、実際は完全に戻り梅雨である。この戻り梅雨はいつ明けるのだろう。
はっきりしない週末だが、恒例の 『唯一郎句集』 レビューである。今日は 2句をレビューしてみる。
今回の 2句も、前々回の "「群像」時代" まで下ってきた年代を、少しだけタイムマシンで遡っているように思われる。『唯一郎句集』の後半を占める "「海紅」 時代" という章は、唯一郎が 「朝日歌壇」で認められてからずっと、「海紅」に載せられた句を拾ったもののようで、その前の章と、時間的にはかなり重なるとみていいだろう。
さっそくレビューである。
山吹莖のシンの白きをわすれず
山吹は背がそんなに高くはならないにしても、一応「木」だから、莖(茎の異体字)と言うのはちょっと意外である。しかも「芯」 という漢字を使わず、片仮名で「シン」と言っているのが暗示的だ。
鮮やかな黄色の花を咲かせる山吹だが、その「莖のシン」は白い。
印刷業を継ぐ決意をしたものの、俳句を追及する志は忘れていない自分を表現したとみるのは、深読みすぎるだろうか。
春日町中の出来事の白い鳥籠
"「朝日歌壇」時代" の章にも「鳥籠」が登場する句がある。「朧明りよ 鳥籠今し声したり」というものだ。それと共通したシュールレアリスティックな感覚の句である。同じ頃に作られたものだろうという気がする。
さて、冒頭の「春日町中の」だが、「かすがまち」といった名称の町は、酒田にはない。これは、「春日」と「町中の」に分けて読まなければならない。「春日」は「しゅんじつ」と読み、俳句の季語である。春ののどかな一日、あるいは春の陽光を意味する。
春のうららかな日に照らされる鳥籠。界隈にはいろいろな出来事があるが、そんなことはこの白い鳥籠には届かない。俗事の中にいながらも、それにはまみれない精神。
本日の 2句のキーワードは、「白」 だ。
本日はこれぎり。
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