中国とイスラム・テロ組織
新疆ウイグル自治区で、イスラム教を信仰するウィグル人があれだけ明白な弾圧を受けているのに、イスラム原理主義者は何も反応しないのだろうかと、私は訝っていた。
しかしここにきてアルカイダ系のグループが、北アフリカで働く中国人に「報復」を開始するとの声明を出したようだ。(参照)
しかし、イスラム系テロ組織の「報復」は、当面は限定的なものになりそうだ。英国の民間情報会社「スターリング・アシント」によると、アルジェリアを拠点に活動する 「イスラム・マグレブ諸国のアルカイダ組織」が、アルジェリアで働く約5万人の中国人と、中国が北アフリカで展開するプロジェクトを標的にすると警告したという。
つまり中国本土を直接的に狙うと言明したわけではなく、自らの活動地域内にいる中国人と中国プロジェクトを攻撃するというのである。あの 9.11 でワールドトレードセンタービルを破壊したような派手なことは、当面はないようなのだ。
アルカイダ系の組織の直接的な「敵」は、何と言ってもやっぱり米国なのであ。米国を標的にしてずっとやってきただけに、いきなり「中国も敵」というのは難しいのだろう、路線修正には、多少手間がかかるに違いない。
しかし北京政府がウィグル弾圧をこれ以上強化するようだと、イスラム・テロ組織も黙ってはいられなくなるはずだ。米国としても、テロ組織の標的というやっかいな役割を一手に引き受けるのもうっとうしい話だから、中国にも少しは向いてくれる方がいいと考えるに違いない。
その意味では、米国に亡命しているというラビア・カーディル女史を支援するか、あるいはそこまで行かなくても、しっかりと保護するぐらいのことはするだろう。彼女が立ち上げたという「世界ウイグル会議」には、がんばってもらいたいはずだ。
私は「米国 - 中国 - イスラム原理主義」の三極構造の様相を、この世界が持ち始めたんじゃないかと思っている。下手すると、米国が中国の台頭を抑えるために、ある程度イスラム・テロ組織を利用するなんていう裏の事情が発生しないとも限らない。
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コメント
中国政府、対応策でしょうかねhttp://www.asahi.com/international/update/0715/TKY200907150410.html?ref=rss
現在、広州に3万に以上のアフリカ人がいて、
その3割が、違法滞在だそうです。1日40元の
2畳くらいの部屋を転々として、生活しているようです。それでも、アフリカの母国に帰るより、
ずっと良い生活なのでしょう。
投稿: ヒロ | 2009年7月17日 09:42
先日のNHKクローズアップ現代でもやっていましたね。
国内の少数民族問題もさることながら、中国は中近東・アフリカにも積極的に資源外交をかけていますので、イスラムとの関係悪化はなんとしても避けたいところみたいですね。
しかしながら、中国と比較してみると、本当に日本という国は宗教的緊張感というのが少ない国なんですね。歴史的な経緯もあるのでしょうが、これは外交的には大きな利点なんだというのを改めて感じました。
投稿: 雪山男 | 2009年7月17日 12:30
ヒロ さん:
>中国政府、対応策でしょうかねhttp://www.asahi.com/international/update/0715/TKY200907150410.html?ref=rss
なんの関係もないとは言い難いでしょうね。
>現在、広州に3万に以上のアフリカ人がいて、
>その3割が、違法滞在だそうです。
日本にも違法滞在の中国人はいくらでもいるようですがね ^^;)
投稿: tak | 2009年7月17日 12:58
雪山男 さん:
>国内の少数民族問題もさることながら、中国は中近東・アフリカにも積極的に資源外交をかけていますので、イスラムとの関係悪化はなんとしても避けたいところみたいですね。
ちょっとしたジレンマでしょうね。
中東、アフリカの資源を得るために、新疆ウイグル自治区の埋蔵資源を手放すというのでは、彼らに取っては本末転倒でしょうし。
>しかしながら、中国と比較してみると、本当に日本という国は宗教的緊張感というのが少ない国なんですね。歴史的な経緯もあるのでしょうが、これは外交的には大きな利点なんだというのを改めて感じました。
どことも宗教戦争しなくて済むということはありますね。
ただ、中国も宗教的にはずいぶんゆるゆるで、決して仏教国というわけでもないし、道教と称される、世界的にはマイナーな宗教が普及しているといわれていますが、彼らの宗教意識はよくわからないところがあります。
道教は、「宗教」 というより、「道徳、思想」 だという人もいますが、道教の神様というのもちゃんといるので、一応宗教としておいてもいいんじゃないかと思います。
(その辺が、儒教との違いだと思います)
ただ、宗教としては、ものすごく大いばりで現世利益を追求するところが、さすが中国だと思います。
とりあえず、イスラムとの間でも、決して 「宗教戦争」 ということにはならないでしょう。
投稿: tak | 2009年7月17日 13:10