セコムのブランド戦略
電車に乗るとキムタクを起用したセコムのポスターがどっさり貼られている。キャッチフレーズの「セコムしてますか?」は、前世紀に長嶋さんがやっていた頃からの継続だ。
長嶋さんは今でも、CM のテレビ内テレビにまで登場して、「セコムしてますか?」を連発している。さすがスーパースターだ。
セキュリティ業界は、もはやセコムの一人勝ちなのだそうだ。この会社、セキュリティ業界で断トツであるばかりでなく、サービス業全体を見渡しても、株式の時価総額が日本一らしい。
セコムに続くのは綜合警備保障とセントラル警備保障なんだそうだが、この 2社は ブランド戦略をかなり間違えている。
綜合警備保障はつい最近まで「SOK」(ソーケー) なんていっていたように思うが、近頃は「ALSOK」(アルソック)なんてブランドを使っている。ところが、綜合警備保障 = ALSOK というのは、まだ認知度が低い。別の会社だと思っている人も多い。要するに、ブランド・アイデンティティが今イチなのだ。
セントラル警備保障は「センケー」なんてちょっと軽いブランドというか、略称というか、そんな名称を使っているが、星野仙一氏を起用するなんていう、ちょっとベタベタのイメージ戦略が、あまりうまくいっているように思えない。
そこへ行くと、セコムのマーケティング戦略はうまい。セキュリティ業界の人たちに聞くと、高額所得者層の個人住宅警備は、軒並みセコムなのだそうだ。お金持ちともなると、他の安い価格の会社と契約するなんて、沽券に関わるということらしい。
トップブランドの強みはすごい。警備会社=セコムということになってしまっている。「味の素」「カップヌードル」と同様だ。「ググる」とか「チンする」(これはブランドじゃないが)とかと同様に、「セコムする」が普通の動詞的な扱いになってしまいそうだ。
と、ここまでセコムを褒めまくってしまったが、契約してどれだけのセキュリティ効果があるかといえば、セコムだろうがアルソックだろうがセンケーだろうが、あるいはローカルな小規模会社だろうが、あまり変わりないらしい。やることはほとんど一緒だもの。
セコムの最大の差別化効果というのは、門の所にセコムのラベルが貼ってあって、「この家はセコムが警備してますよ」と満天下に知らしめることで、これはある意味、ステイタス訴求にはなる。まあ、言ってしまえばその程度のことだ。逆に言えば、セコムのラベルは「この家は大金持ちですよ」と泥棒に知らせてあげていることにもなる。
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