食い物のおいしさ
実は今、仕事で北海道の小樽に来ている。札幌までは何度も来たことがあるが、小樽は初めてだ。来てみて、人口 14万の地方都市にしてはあか抜けしているのに驚いた。
あか抜けしているのも道理で、この街は日本有数の観光都市であるらしい。そういえば、石原裕次郎記念館なんていうのまである。
仕事でバタバタしてしまっていて、ブログ更新の時間をとるにも苦労しているが、なかなかいい街である。私は気に入ってしまった。港町というのは、人間が「気楽になんでも受け入れ型」にできているから、こちらも構えずにいられる。食い物も、海の幸を初めとしておいしいし。
ただ、なまじ観光都市として開けてしまうと、ちょっと荒れてしまうところもある。昨夜、有名な倉庫街の中の、倉庫を改造して造られたいかにも観光客向けの店で海鮮丼を食べたら、高いばかりで期待からはかなりかけ離れていた。あれだったら、東京のフツーのスーパーで買える食材と変わらない。
今朝、ホテルでビュッフェスタイルの朝食で、海鮮の食材がたっぷりあったので、ご飯に乗せて海鮮丼もどきにして食べたら、こちらの方がずっとおいしかった。値段は観光客向けのお店の 6割程度である。これでカニ汁だのサラダだの漬け物だのフレッシュジュースだのコーヒーだのも付く。いったいどうなってるんだ。
実は、私はこう見えても舌はずいぶん肥えているのである。なにしろ庄内平野というおいしい食材の宝庫で育ったし、父は脱サラで海産物問屋をして、北海道から高級食材を仕入れていたから、母が忙しくて晩飯を作れなかったときなど、けっこう高いウニだのいくらだのをわしわし食っていた。だから、そんじょそこらの味音痴の観光客とはわけが違うのだ。
人と食事をして、「ここの店は相変わらず旨いねぇ」なんて言われても、内心では「いや、前回来た時よりも、かなり味が落ちたんだけど、こんな明白な違いに、この人、どうして気付かないんだろう?」なんて思うことが度々ある。
あくまでも個人的印象かも知れないが、自称「俺は食い物にはうるさいよ」なんて言う人ほど、実は違いがわかっていないように思う。彼らはただ、ブランドと値段にだまされているだけだ。
庄内で育ってしまった私は、かなりおいしいものを、「フツーのメシ」として食べていたもので、東京に出てきてうまいと評判の店で食事をしても、「ふぅん、まあ、この程度なのね」 なんて思ったりする。ただ、私はよっぽど出来損ないの料理でない限り、「まずい」とは決して言わない。ちゃんと感謝していただくことにしている。
そして本当においしいものを食べると、その感謝の度合いがアップして、とても幸せな気分になるのである。
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コメント
激しく同感です。
「喰わせてやる」、「勝手に喰えば」というお店でないことを祈りつつ…。
感謝しない客から発せられたしわ寄せが、感謝する客に及ぶ不条理を憂いつつ…。
(長くなるので手短に)
投稿: 乙痴庵 | 2009年7月13日 01:28
私も私の味覚には自信がありますが、それはさておき
よく、テレビや週刊誌などで「うまい店」などを紹介しいますね
あれは、ほとんど、ウソです
取材した当人達が証言していることですから (笑)
本当に美味しい店や料理なんて、実際のところ、なかなかありません
私は、昔、商社に勤めていて外国からの大事な客の接待で、金を惜しまず(惜しまなかったのは会社ですが) (笑)いろんな一流店に行きました
そんな店が必ずしも、素晴らしく美味しかったとはいいませんが、まあ金にまかせれば、ある一定の水準の味は確保できることは確かでしょう
しかしテレビなどで、吉本などのふだん美食になれているとは思えない安給料の(失礼)若手芸能人が、そのへんの店にかたっぱしから行って、料理を口に入れるか入れないうちに「う~~~ん!美味しいっ!」などとほざきますが、「うそを言えっ!」と思います
舌の肥えた人間をうならせるような料理は、よほどの場合でないとあり得ません
それが現実です
それに今のご時世で、アフリカの饑餓の人々を思えば、われわれがのほほんと美食に淫すること自体、なんとなく後ろめたい事です
それにメチャ高価な銀座の寿司屋でも、食材の質はともかく、新鮮さだけを言えば、最高とは言えません
東北や北海道などの港町での産地での新鮮さに敵いません
ただ、腹がへっていれば、どんなものでも美味しいのも事実ですが (笑)
この間、韓国の釜山に行って、刺身、ウニ、アワビ、エビ、カニなどの海産物を食べてみたら、その新鮮さと安価さに驚きました
少なくとも値段は日本の値段の10~20%以下なのです
ウォン安も寄与しているのかも知れませんが
こ~ゆ~海産物などは、高飛車な寿司職人の腕という付加価値とは関係なく、食材の良さ新鮮さだけの問題ですからね
日本で、本当に美味しいものを食べようとすると、残念ながら、なかなか、リーズナブルな値段では食することが出来ませんね
日本は、なんでもコストが高い国です
投稿: alex99 | 2009年7月13日 02:50
日曜日、秋葉原に行ったのであの蕎麦屋さんを探し当てました。やはり日曜日はやってませんでしたね(ブログに書いてありましたね)
悔しいのでメニューだけみて帰ってきました。
横浜とその周辺では500円前後でおいしい蕎麦に出会ったことがなく、秋葉原の蕎麦屋さんには興味津々です。
楽しみが伸びてしまいました。
投稿: 偽浜っ子 | 2009年7月13日 14:58
乙痴庵 さん:
>「喰わせてやる」、「勝手に喰えば」というお店でないことを祈りつつ…。
>感謝しない客から発せられたしわ寄せが、感謝する客に及ぶ不条理を憂いつつ…。
おぉ、これこそ普遍的な願いだと思います。
投稿: tak | 2009年7月13日 19:55
alex99 さん:
>そんな店が必ずしも、素晴らしく美味しかったとはいいませんが、まあ金にまかせれば、ある一定の水準の味は確保できることは確かでしょう
それは確実に言えます。
高い金さえかければ、それなりに旨い料理は食えます。
ただ、それが感動的に旨いかどうかは、別問題ですね。
>しかしテレビなどで、吉本などのふだん美食になれているとは思えない安給料の(失礼)若手芸能人が、そのへんの店にかたっぱしから行って、料理を口に入れるか入れないうちに「う~~~ん!美味しいっ!」などとほざきますが、「うそを言えっ!」と思います
あれは、「旨そうに食ってみせる芸」 を競っているのであって、食ったものが本当においしいかどうかは、関係ないことだと理解しています。
>それにメチャ高価な銀座の寿司屋でも、食材の質はともかく、新鮮さだけを言えば、最高とは言えません
>東北や北海道などの港町での産地での新鮮さに敵いません
そうなんですよね。
酒田の魚は旨いですよ~~。
朝に獲れた魚を夕方に食って育った私は、その点では幸せ者です。
>日本で、本当に美味しいものを食べようとすると、残念ながら、なかなか、リーズナブルな値段では食することが出来ませんね
>日本は、なんでもコストが高い国です
こればかりは、産地に行くのが一番です。
投稿: tak | 2009年7月13日 20:02
偽浜っ子 さん:
>日曜日、秋葉原に行ったのであの蕎麦屋さんを探し当てました。やはり日曜日はやってませんでしたね
あのお店のそばは、そりゃ、立ち食いのカテゴリーでの話ですから、そんなに感動するほどうまいというわけじゃありません。
でも、昼時にあの値段でさっと食えるという条件下で考えれば、これは相当にポイント高いです。
感動的とまでは言わないにしろ、うまいのは確かですから。
投稿: tak | 2009年7月13日 20:05
昨日は、朝取りキュウリをたくさんいただいたので、子どもたちと一緒にみそをつけて「ぼりぼり」と食べていました。
おいしく食べさせる腕はともかくとしても、素材のうまさという点に関しては、地方は東京の一流店にも負けていないと思っています。
庄内は、農産物に加えて海産物もですからね。takさんの舌が肥えるのもわかるような。。。
ただ、この時期はどうしてもキュウリが重なってしまいますので。。。しばらくは、食卓にキュウリがレギュラー定着しそうです。(笑)
ちなみに今年は、春先の小雨がたたって葉物が不作とかで、この時期においしい、モロヘイヤとかのできは悪いようです。
投稿: 雪山男 | 2009年7月14日 09:08
雪山男 さん:
>おいしく食べさせる腕はともかくとしても、素材のうまさという点に関しては、地方は東京の一流店にも負けていないと思っています。
食べ物に限らず、素材の力は大きいですからね。
素材が新鮮なら、余計な調理はいらないですね。塩か醤油か味噌 (その味噌も自家製だったりする) をちょっと付けるだけで、十分においしいので。
>ただ、この時期はどうしてもキュウリが重なってしまいますので。。。しばらくは、食卓にキュウリがレギュラー定着しそうです。(笑)
昔食べていた、ぼつぼつの表面に粉を吹いたようなキュウリが、関東では見当たりません。
皮が薄くて、噛みきる時にちょっとしたシナリがあって、奥の方に絶妙のほのかな苦みがあるやつですが、あれって、実は在来品種で、今では庄内の一部でしか作られていないらしいです。
ああ、あのキュウリが食いたい!
今では有名になっちゃった 「だだちゃまめ」 よりすごいんだけどなあ。
投稿: tak | 2009年7月14日 10:17