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2009年7月30日

「ミス・ユニバース」というビジネス

ミス・ユニバース日本代表のナショナル・コスチュームとやらが、「まるでポルノ女優」とまで言われて、甚だ不評らしい。

こちら に飛べばどんな衣装なのかわかるが、なるほど、かなり悪趣味っぽい。ファッションの世界の方程式で言うと、「話題になりさえすれば、目的は達せられる」という類のものだ。

この衣装が制作された背景には、イネス・ログリンというフランス人のおばさんが重要な役割を果たしているらしい。このおばさんが、「和服再興を目指して東京・原宿を中心に展開するデザイナーズブランド「義志」(よしゆき)の緒方義志社長」(ニュースからそのまま引用)を起用してデザインさせたという。

ちなみに、この緒方義志という人は、「2006年準優勝の知花くららや、07年優勝の森理世の衣装も担当した実力者」なのだそうだが、やはりイネス・ログリンからの指名で制作したもののようだ。つまり、この二人は相当しっかりとコラボする関係みたいなのだ。

報道によると「ミス・ユニバースの世界ではイネス氏の権限は絶大」ということで、つまり、もうやりたい放題できる地位にあるということのようだ。それは、2006年と 07年に、続けざまに日本人をミス・ユニバース準優勝と優勝に導いたという実績によるのだろう。

大方の見るところでは、この実績は「外国人の目からみたジャパニーズ・ビューティ」というものを的確に理解・把握していて、それを効果的に演出できる才能による。つまり彼女がやると、しっかりと「ミス・ユニバース審査のツボ」にはまるらしい。

別の言い方をすれば、「彼女の目」を借りないと、日本人のセンスだけではミス・ユニバース国際大会の「傾向と対策」ができないのだ。どうも日本人のセンスだと淡泊すぎるようなのである。グローバル・スタンダードとローカル・スタンダードの違いだ。

国際舞台に出たら、しっかり肉を食って「濃すぎるぐらい」のアピールをしなければいけない。かくまでに「美の基準」が違うから、ミス・ユニバース準優勝の知花くららや優勝の森理世は、日本に戻るとそんなに受けるわけじゃない。

とはいいながら、今回の衣装はいくらなんでも国際的にも評価が芳しくないようだ。ニュースは次のように伝えている。

ミス・ユニバースの最新情報を伝える米サイト「ビューティーイン ページェンツ」は 「世界中のファンは一様にポルノ女優のようだという反応を示した。イネス氏以外は、この衣装が 優勝の機会を損なうと考え失望した」などと論評。

こうした悪評に対してイネス・ログリンは自身のブログで、「ファッションの保守主義者や流行遅れの "恐竜" たちは彼女のコスチュームを批判していますが、ファッショニスタたちはそれを愛しています。私が気にするのはファッション産業の有力者の評価だけ」(夕刊フジ訳) と応えているそうだ。なかなか勇ましいことである。

どうやら今回、彼女はミス・ユニバース国際大会での上位入賞は諦めて、ひたすら話題になることの方を狙っているように見える。

これまで優勝 1回、準優勝 1回の実績を作っても、その実績に見合うだけのビッグネームを獲得できていないという不満があるのではなかろうか。確かに、世間的にはほとんど知られておらず、私だって今回初めて彼女の名前を知ったし、デザイナーの「緒方義志」という名前も同様だ。

それならばいっそ、今回は名誉よりも話題を取ってしまおうと彼らが考えたとしても、理解できないストーリーではない。名誉だけでは不十分だった部分を、話題を得ることで補ってしまおうというわけだ。どんな話題だろうと、世間に名を売っておく方が、今後のビジネス・チャンスはずっと拡大する。

とまあ、それだけのお話で、それについてどうのこうの批判しようとは、私は思わない。さらに、あの衣装でことさらに「日本が誤解される」とも思わない。どうせ誤解はされまくってるのだし。

【8月 1日 追記】

どうやらあのデザインは不評すぎて、変更されることになったようだ。帯を提供した呉服店や職人が「あのデザインを知っていれば提供しなかった」「変更しない限り使用を認めない」などと拒否反応を示したことで、変更に追い込まれたらしい。(参照

イネス・ログリン、緒方義志両氏は、ずいぶん勇ましいことをおっしゃっていた割には、あっさりと折れてしまったようで、逆にがっかり。

毒を食らわば皿まで・・・本宅サイト 「知のヴァーリトゥード」へもどうぞ

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コメント

昨日の『ジョシコーセー』のスカート丈にスペシャルアゲーンストですなぁ。
 これからジョシコーセーには、レオタードにガーターベルト丸出しで歩いてもらわにゃ…。

 っていうか、着物がツーピースと考えられている時点で、着物の様式美が損なわれてしまった感があります。下着着用自体、ルール違反?
 いくら最新のファッションといわれても、機能美、様式美を損ねてまで、主張していただきたくないなぁ…。

 え?材質、レザーなんですか?ということは、制作費ケチるために『超ミニ振袖』に落ち着いたということか。
 どーせなら、越後のちりめんでも大島紬でも西陣織でも使ってよ!国内産国内消費で!

 …とりとめ、なくなっちゃいました。

投稿: 乙痴庵 | 2009年7月30日 12:38

乙痴庵 さん:

>っていうか、着物がツーピースと考えられている時点で、着物の様式美が損なわれてしまった感があります。

このコスチュームの制作意図というか、コンセプトが、様式美の破壊というところにあるのでしょうから、それはそれで認めてあげてもいいように思います。

要は、それが好きか嫌いかということで、嫌いという人が多いのも、それはそれで、アバンギャルドの常なので、仕方ないと思います。

ただ、コンセプトを認めることと、作品の出来がいいと認めることとは違います。

同じコンセプトでも、もっとこなしようがあっただろうにと、私は思ってしまいます。

ファッションの保守性を批判しながら、保守性にかなりよりかかったデザイン (帯とか、レザーの質感とか) が、中途半端だと思います。

帯とレザーのどちらか一つをアバンギャルドにしていれば、もっと意図がはっきりしただろうに。

あ、本文で批判しようとは思わないと書いたのに、つい、ここで少しだけしちゃった ^^;)

投稿: tak | 2009年7月30日 15:52

様式美を破壊しつつ、蒸れないように下は涼しくして機能美も実現!
てなことではないでしょうね(^^;

それにしても水玉のセンスが…。

投稿: ぐすたふ | 2009年7月30日 18:52

ぐすたふ さん:

>様式美を破壊しつつ、蒸れないように下は涼しくして機能美も実現!
>てなことではないでしょうね(^^;

いやいや、決して機能的じゃないですよ。
あれ、レオタードだそうですから、オシッコするのが大変 ^^;)

投稿: tak | 2009年7月30日 19:33

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