私の田舎の海水浴場が閉鎖だって
知り合いのカメラマンが、「ねぇ、tak さんの田舎で砂浜がなくなっちゃって、海水浴場が閉鎖されたんだってね」と言う。最近のテレビでやっていたんだそうだ。
ウチの田舎で砂浜がなくなったなんてことはない。何かの間違いだ。なにしろ日本三大砂丘の一つ、庄内砂丘である。
とはいえ、少し気になってググって見たら、十里塚というところの海水浴場が閉鎖したんだそうだ(参照)。十里塚は、酒田の中心街から最上川にかかる出羽大橋を渡り、庄内空港に向かう辺りの集落。中学校の頃に死んだ祖母の出身地である。古い人は「じゅうりづか」なんて言わず、「じょづが」と頭高型アクセントで発音する。ああ、濃いなあ。
ここの小さな海水浴場が、海水浴客の減少と波の浸食による地形変化で閉鎖せざるを得なくなったんだそうだ。海水浴客の減少といっても、ここはマイナーな海水浴場だから、近所の子どもたちとか、酒田の街中から急に思い立って「ちょっとだけ泳ぐか」みたいな客しかこないだろうから、それほどの変化というわけじゃない。
庄内浜の海水浴場といえば、鳥海山の裾野が日本海に沈む遊佐(ゆざ)町の吹浦(ふくら)とか、鶴岡市の温泉と直結した湯野浜、温海(あつみ)、由良(ゆら)あたりがメジャーなのである。
ちなみに、吹浦、由良は、日本の海岸の地名としてはフォークロアリスティックにものすごく正統派といえるもので、民俗学を学んだ人なら嬉しくなってしまうだろう。それにしても、我が酒田市にメジャーな海水浴場がないのに今気付いて、愕然としてしまったが。
吹浦、湯野浜、温海、由良なんかは、多少のことがあっても閉鎖なんてことにはならない。しかし十里塚となると、私自身「まだやってたの?」と思ったぐらいだから、閉鎖しても不思議じゃない。庄内も年寄りばかりになってきたから、泳ぎに来る子どもの数が減るのは当然だし。
とはいえ、聞き捨てならないのは、波の浸食による地形変化という話である。日本には本当に海岸の地形自体が変わってしまって、砂浜が消滅したなんて例があるらしい。十里塚の場合はそこまではいかないが、これまで遠浅だった海底地形が変わってしまったようだ。
ニュースによると、「1メートルほど沖に出ると場所によっては水深が約1.5メートルと急に深くなり、遊泳の危険性が高まった」なんてことになったらしい。海辺で育った人間は、1メートル出たぐらいでは 「沖」 なんて言わないが、その程度で水深が約1.5メートルになるなんてことは、昔は考えられないことだった。
高校まで庄内で過ごした私のイメージでは、吹浦はどこまで行っても遠浅で、一度深くなってももう少し沖に行くとまた浅くなったりする。一番深いのは由良海岸だと思っていたが、それでも、記事に書かれているように 「チャプ、ドボン!」なんてことはなかった。
海の底までは普通は目に見えないが、知らないうちにかなり大きな変化が進んでいると思うほかない。その変化の要因の大きな部分は、海に注ぐ川の変化なんだろう。
川の途中にいくつものダムができて、本来ならコンスタントに注がれる土砂が供給されなくなったり、上流の森林が荒れて沿岸の生態系を形成する成分が流れてこなくなったりしているのではあるまいか。そんなのは他の地方の話と思っていたが、我が庄内にまで及んでいるなんて。
ああ、心配なのである。目は見えないが、海底の裾野が浸食されたら、長い間には日本列島が崩れちゃうじゃないか。ダムなんか造って便利になったような錯覚にとらわれていても、日本列島が狭くなっちゃったら意味ないだろうに。
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コメント
takさま;
>1メートルほど沖
誤記かと思ってしまいました(^^;;;
砂浜の浸食が進んでいるという話は聞いていましたが、これほどとは驚きです。
私の故郷、大磯のこゆるぎの浜、照ヶ崎海岸は海水浴場発祥の地と言われていますが、やはり砂浜侵食が進んでいるようで、心が痛みます。
投稿: hemp | 2009年7月14日 15:54
hemp さん:
>>1メートルほど沖
>誤記かと思ってしまいました(^^;;;
まったくですね。
他に書きようがなかったものか ^^;)
>私の故郷、大磯のこゆるぎの浜、照ヶ崎海岸は海水浴場発祥の地と言われていますが、やはり砂浜侵食が進んでいるようで、心が痛みます。
ダムはダムでどんどん作り、海岸浸食については、妙な防波堤だかなんだかで対応し、そのせいで潮の流れが変わって漁業被害が発生したら、その対策でお金が必要になって、財政赤字になって、税金上がって ……
投稿: tak | 2009年7月14日 16:37
takさん:
まだ滞在していらっしゃるのか分かりませんが、小樽は我が故郷です。
小樽の海水浴場も浸食はひどく、10年ほど前は海岸沿いの線路が地下からえぐりとられたこともありました。
私が生まれる前は線路と海岸の間はもっともっと広くそこらじゅうで水遊びができたそうです。
山から流されてくる土砂を道路や線路の敷設によって止めてしまったからなのかと勝手な思い込みをしています。
投稿: とも | 2009年7月15日 11:21
うちの嫁さんの実家である、九十九里でもそういうことがあるみたいです。
嫁の家の近くのそれほどメジャーではない浜辺ですが、子どもの頃は海水浴ができたのに、今はサーファー御用達になっちゃっています。
やはり「防波堤ができてきてかららしい。」というのは、共通した認識のようです。
ダムとか、防波堤とか人間がよかれと思ってやると、結局自然の大きなバランスが壊れてしまうんですね。
投稿: 雪山男 | 2009年7月15日 12:15
そうか…。
『命を守る砂防ダム』から、『砂浜を殺す砂防ダム』という認識に移行してきました。
はい。山国サイドは砂防ダムがいっぱいです。
投稿: 乙痴庵 | 2009年7月15日 12:52
とも さん:
>小樽の海水浴場も浸食はひどく、10年ほど前は海岸沿いの線路が地下からえぐりとられたこともありました。
札幌から小樽に行く途中、鉄道が海岸線ギリギリを走っているようなところがありましたね。
きっと海岸浸食が進んでるんだろうと思って眺めていました。
狭い日本が、ますます狭くなりますね。
投稿: tak | 2009年7月15日 15:33
雪山男 さん:
>うちの嫁さんの実家である、九十九里でもそういうことがあるみたいです。
そういえば、こういう話になると九十九里は決まって話題になりますね。
>ダムとか、防波堤とか人間がよかれと思ってやると、結局自然の大きなバランスが壊れてしまうんですね。
うちの田舎、酒田の隣の鶴岡市でも、水道水を地下水から月山ダムの水に切り替えたせいで、悪評フンプンのようです。
おかげで、鶴岡市の水道料金は倍にはね上がったらしいです。(水はまずくなったのに)
要するに、造らなくてもいいダムを造っちゃったみたい。
投稿: tak | 2009年7月15日 15:44
乙痴庵 さん:
>そうか…。
> 『命を守る砂防ダム』から、『砂浜を殺す砂防ダム』という認識に移行してきました。
>
> はい。山国サイドは砂防ダムがいっぱいです。
砂防ダムに関しては、頭の痛いところですね。
地滑りという問題もあるし。
元々あった広葉樹林を伐採して針葉樹を植えたら、森林が荒れてしまったことが諸悪の根源なのかもしれません。
針葉樹は根っこが浅いから、ちょっとした台風でも土砂崩れを起こします。本当に、土砂崩れの現場の写真をみると、スギの木がゴロゴロ転げ落ちていることが多いです。
広葉樹林にしておけば、保水力はダム以上に期待できて、砂防ダムもいらないのに。
針葉樹林が流されて裸の斜面になったところに、砂防ダムがばんばん造られています。余計な金かけて。
さらに、スギ林が荒れてしまっているので、スギとしても種の保存に危機感をもって、花粉をバシバシ飛ばすようになり、花粉症被害まで広がっています。
投稿: tak | 2009年7月15日 15:52