『唯一郎句集』 レビュー #51
『唯一郎句集』 も今回で 50回目である。おそらく 100回ぐらいのシリーズになるだろうとは覚悟していたが、50回目にしてページ数の半分もこなせていない。
(注: 後日に連番の付け間違いが発見され、修正したので、実はこれは 51回目である)
まだまだ続くことになる。月遅れのお盆を過ぎても半分に到達していないという、祖父の句集の重さを感じる。
今日は 2句である。さっそくレビューを始めよう。
たづね行く途にて公孫樹の夏の夜風に逢ひ
「公孫樹」はイチョウの漢語。唯一郎は時々古めかしい言葉を使うのが好きだ。かえって若さ故なのかもしれない。
夏の盛りの夜、初めて訪ねるところに行く途中、大きなイチョウの木がある。葉は青々と繁り、大きなシルエットである。その大きなシルエットをわずかに揺らし、夜風に吹かれる。
気持ちのいい風ではあるが、イチョウの大きなシルエットに圧倒されもする。初めての途なので、その感が増幅される。
七夕の蚊遣香を据えては消え入る如き
酒田の七夕は月遅れだから、8月 7日に祝われる。一番暑い盛りだが、夜になれば少しは涼しい風も吹く。もうすぐ盆だ。
蚊遣香とは蚊取り線香だろう。ちなみに蚊取り線香が渦巻き型になったのは戦後のことらしいので、この当時の 「蚊遣香」 は、普通の線香のように立てておいたもののようだ。
「消え入る如き」というのは、線香の小さな火であるだけでなく、天の川の下に暮らす自分の心持ちも言っているような気がする。
本日はこれまで。
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