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2009年8月29日

『唯一郎句集』 レビュー #56

あっという間に週末になってしまった。夏の終わりから秋にかけては、時の流れが速い。年の瀬は追い立てられるような時の流れだが、今の時分は流れていく時である。

『唯一郎句集』のレビューも、今回で 55回目である。ページ数からいうと、ようやく半分を越えようとしているところだ。

今日のレビューは 2句である。鮭網を詠んだものだ。昔は酒田でも、秋になれば川を鮭が遡上したのだろう。鮭は塩にして保存食にする。冬の庄内の、貴重な栄養源だ。

さっそくレビューである

夕陽の中に人がぼやけて鮭網の後の河水

これはわかりやすい。鮭網漁が終わり、夕陽の中を人が帰っていく情景だ。ただ、そうした牧歌的な情景に取り残された、暗い河の水に、唯一郎はちゃんと注目する。

ちょっとした対比である。

鮭網の歸りは重たく酔ひ野菊など投げつける

鮭網漁が終わると、いつもは寡黙で物静かな唯一郎も、少しは気分が高揚していつもより酒を飲んでしまうのだろう。

家路を辿りながら、道端に咲く野菊などを抜いて、川面に向って投げつける。そうしたちょっと野蛮な振る舞いをする自分を、酔ってはいながら物珍しく客観的にみつめる自分がいる。

本日はこれぎり。

毒を食らわば皿まで・・・本宅サイト 「知のヴァーリトゥード」へもどうぞ

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