海外でぼったくられまくる日本人
「日本人観光客へのぼったくり問題で、ローマ副市長が訪日し謝罪へ」というニュースが、一部で話題になっている。
ローマでは、一流と言われるレストランでも「ぼったくり」が横行していたらしいが、「日本人観光客への」という枕詞がどうも気になる。日本人は「カモ」にされているようだ。
同じ日本人である私から見ても、日本人は外国では最高の「カモ」だと思う。警戒心が薄いし、おっとりして争いごとを好まないし、英語はできないし、喧嘩は下手だし、言えば言っただけの金を払うし、すぐに諦めるし、それに何より、なぜか現ナマを持っているし。
25~6年前、会社勤めの頃、上司 2人とロサンジェルスに出張し、リトル東京で晩飯を食おうということになった。私としては、何でロサンジェルスまで来てそんなところで日本メシを食わなきゃいけないんだと思ったが、上司は私が付いていないと外国ではどこにも行けない人たちなので、仕方なくお付き合いである。
今はどうだか知らないが、当時のロサンジェルスのダウンタウンは夜になると物騒だったから、タクシーで行くにこしたことはない。ホテルからリトル東京までのタクシー料金は、よく覚えていないが、大体 5ドルぐらいだったと思う。
適当に大して旨くもないメシを食い、外国で営業しているということが唯一の差別化ポイントであるとしか思えない飲み屋で酒を飲んで、ホテルに戻るために、またタクシーをつかまえた。
タクシーの運転手にホテルの名前を告げると、彼は "OK" と言って発進したが、なぜか料金メーターを始動させない。そのくせ、カー・オーディオで流行りの音楽をかけ、"Service." なんて言って妙な愛想笑いをする。
2人の上司もさすがに不審に思ったようで、「おいおい、こいつメーター倒さへんで、ぼったくりちゃうか」と言い始める(彼らは大阪人である)。私は、「大丈夫大丈夫、任せてください」と答える。
ホテルに着くと、運転手は思ったとおり、「なんてこった、メーターをスタートさせるの忘れてた」と (もちろん、英語だが)、白々しくも言う。私は「知ってたよ」と答える。彼は「安心しなさい。私にとってはいつもの道です。大体 12ドルです」と言う。
"Twelve dollars?" 私はことさらに大声で聞き返す。
"Yes, sir." 彼はいけしゃあしゃあと答える。
「12ドルですってよ」と、私は苦々しげに上司に言う。5ドルで行ったのと同じ道を帰ってきて、12ドルとはふざけている。まあ、30ドルと言わないだけましかもしれないが。
私は運転手に向き直り、即座に「ふざけるんじゃない。行くときには同じルートで 3ドル 75 だった!」と、はったりをかます。日本人なら誰でも言い値で素直に払うと思ったら大間違いだ。「払わない」と言わないだけ、ありがたく思え。
彼は一瞬きょとんとした表情を浮かべたが、すぐに落胆した様子で、「OK、それでいい」と応じた。元はと言えば彼に非があるので、警察を呼ばれたら面倒だし、それに、もらう金額がいくらだろうと、どうせ彼のポケットに入るだけだから、即断即決である。
ところがなんと、そうこうしている間に信じられない光景が現出した。上司の片方が、財布から 10ドル紙幣 1枚と 1ドル紙幣 2枚を取り出し、さっさと運転手に渡してしまったのである。おいおい、私がせっかく 3ドル 75セントにまけさせたのに、一体何を考えてるんだ?
ああ、そうか、このオッサン、目の前の英語のやり取りが理解できていないのだ。その直前に私が言った 「12ドルですってよ」 で、情報がフィックスされてしまっていたのだ。それにしても、それを素直に払うなんて大阪人とも思われない所業は、私としてはまったく想定外だった。
「ちょっと、ちょっと、この兄ちゃんは 3ドル 75 でいいって言ってるんですよ」
「まあ、ええやないか、面倒やから、12ドルぐらいなら、気持ちよく払っといたろやないか」
私はこの瞬間、うら悲しくなってしまった。国内ではしみったれのくせに、外国に来るとどうしてそんなに、急に太っ腹になれるのだ、このオッサンは。
"No tips!" (チップはなし!) と私が吐き捨てるように言うと、運転手は嬉しそうに "Sure. Thank you, sir!" とウィンクしやがった。
とまあ、こんな苦々しい経験があるのだが、ことほど左様に、こんなだから日本人は外国で甘く見られるのである。言葉ができなかったら、とりあえず日本語でいいから怒りまくったふりを見せ、そして一言 "Police!" と叫べばいいのに。
自分一人だけ泣き寝入りすればいいと思っているのだろうが、そうではない。それによって日本人全体が、ますます甘く見られるのである。
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コメント
国内でもカモにされる日本人。
私はあの突き出し(名前からして恐ろしい、関東ではお通し)というヤツが納得いきません。注文してないのに勝手に持ってきて、結構な料金を取るんですね。突き出しの中身が充実したものならば黙ってますが、殆んどは食材のクズで作ったようなもので、ほぼ無価値です。こんな悪習が蔓延るのも“まあ、ええやないか、気持ちよく払うといたれ”という人が殆んどだからですね。業界もかなりあつかましいですが、客が業界を増長させてしまった結果でしょうね。
イタリアも日本も飲食業界というところは困ったモンです。
投稿: 偽浜っ子 | 2009年8月10日 02:05
偽浜っ子 さん:
>私はあの突き出し(名前からして恐ろしい、関東ではお通し)というヤツが納得いきません。注文してないのに勝手に持ってきて、結構な料金を取るんですね。
私はあまり居酒屋というところに出入りしないし、出入りするとしたら、大勢で行って、支払いは丼勘定の割り勘というのがほとんどです。
そういうわけで、今日の今日まで、あの 「お通し」 (あるいは 「突き出し」) なるものにチャージが発生しているとは考えたことがありませんでした。
(伝票の明細をよく見たことがないもので)
あれって、サービスで出てくるものだとばかり思ってましたが、どさくさまぎれの商法だったのね。
何も出さずに 「テーブルチャージ」 とされる方が、まだ納得いきやすいですね。
それにしても、あのロサンジェルスのタクシーのケースでは、あのカーオーディオの音楽が、高い 「お通し」 だったのね ^^;)
投稿: tak | 2009年8月10日 06:21
タクシー:初めてのプラハ(7年くらい前)で、プラハ中央駅から、タクシーで5分ほどのホテルに、メーター料金で行くことで合意。しかし、ホテルに着いたら、日本円で約12000円のメーター料金。(インチキメーターでした)連れをタクシーに残し、ホテルのフロントに直行。警官を呼んでもらいました。到着まで、約10分間。英語、片言ドイツ語で、交渉。タクシー運転手は、チェコ語。背は大きくないですが、刺青でなかなかの筋肉質。ちょうど、道路工事作業の隣だったので、大勢の作業員が、見守ってくれ、安全でした。
警官がきて、事情を説明したら、3分くらいで、お金は払わなくてよいと言われ、ホテルに、無事到着。夜に、広場でビールを飲んでましたら、朝の警官にまた会い、感謝。初めてのプラハは、その後快適でした。
付きだし:中国では、ポケットティッシュが、レストランで出される事が、非常に多いのです。清算の時に、未使用のものは、突っ返さないと、ポケットティッシュ1個1元取られます。場所によっては、ボックス・ティッシュで5元です。
投稿: ヒロ | 2009年8月10日 10:12
ヒロ さん:
非常に賢明な対処をなさいましたね。
私のロサンジェルスの場合も、日本円で 1万円以上だったら、太っ腹ではいられなかったでしょうね ^^;)
中国ではティッシュペーパーが突き出しですか。
いろいろあるものですね ^^;)
投稿: tak | 2009年8月10日 11:22
やっぱり海外で必要なのは、語学力と度胸と交渉力ですね。
学校でも外国語の決まり切った文を暗記させるより、市場での値引き交渉なんかを授業でやった方がよいかもしれませんね。(笑)海外の文化を教えながら。
まあ、日本人は日本語でさえも交渉力っていうのはあまりないので、その辺も鍛える必要もありそうです。
投稿: 雪山男 | 2009年8月10日 12:36
雪山男 さん:
>やっぱり海外で必要なのは、語学力と度胸と交渉力ですね。
英語がしゃべれること、自動車が運転できること、武道で黒帯をもっていることという三要素があれば、海外でのサバイバルの可能性が高くなると、どこかで読んだことがあります。
私、恥ずかしながら、この三要素を辛うじて満たしているので、海外では割と強気で渡ってます ^^;)
投稿: tak | 2009年8月10日 12:43