「渋滞吸収運転」の威力
3年以上も前の "「渋滞学」 ってのは、面白そうだ" という私の記事は、今でも検索サイト経由で訪問者の多い記事になっている。
なにしろ、「渋滞学」 でググルと、今日現在、私の記事が上から 6番目のポジションにいる。それどころか、1~2年前は私の記事が長らくトップにランクされていた。
件の記事で紹介した 『渋滞学』という本の著者、西成活裕先生は、3年前は東大助教授という肩書きだったが、今は教授になられているようだ。渋滞学という斬新な視点の学問が世間の注目を集めたことが大きいんではなかろうか。
3年前、私もさっそく『渋滞学』という本を買って読んだのだが、そのレビューをしそびれていた。今さらのようだが、なかなかおもしろいのでオススメである。渋滞回避のヒントが得られるばかりでなく、人間学の一環としても興味深い。
私がこの本を読んで得た渋滞回避運転のヒントは、ブレーキを踏まないということだ。それでは危なすぎるじゃないかという人のために、もう少し詳しく言うが、やたらとブレーキを踏んでブレーキランプを点灯させなくてもいいように、前の車との車間距離をたっぷりととって、ゆっくりと行くのが渋滞回避につながるのである。
ブレーキランプが灯るというのは、とにかく渋滞の一番大きな原因になるんじゃなかろうかとさえ思える。後に続く車が軒並みブレーキを踏んでしまうので、団子になる。そして、そこが渋滞の先頭になりやすい。
高速道路のトンネルの入り口などで、少なからぬ車が無意識に速度を落とす。その後にぴったりとつけていた車は、追突を避けるためにブレーキを踏む。すると、そこから後の車が連鎖的に全部ブレーキを踏む。それで、トンネルの入り口は渋滞の先頭になりやすい。
この現象で有名なのが、東北道の福島トンネル付近である。単にトンネルがあるというだけの理由で、そこに渋滞が発生し、そこを通り過ぎると嘘のように渋滞は解消される。
今年のゴールデンウィークの帰郷の際に、私は西成教授のいう「渋滞吸収運転」 というのを心がけてみた。高速道路に「○km 先、渋滞」という表示があるのを発見すると、意識してスピードを落とすのである。すると、確かに周囲の車は増えるが、本格的渋滞の最後尾にはなかなか追いつかない。
そして、スピードは確かに落ちるが、時速 60km より遅くなることはほとんどない。だから、ストレスもない。気付いてみると、渋滞区間と言われていたポイントは知らぬ間に通り過ぎていて、そこから先はまたスムーズな高速運転ができる。
こうした「渋滞吸収運転」について、Trendy Net で紹介されているのでご覧いただきたい(参照)。「『ゆっくり走る』は金も時間もオトク」なのだそうだ。
実は昨日も常磐道を通って水戸方面から帰ってくるとき、同じように渋滞吸収運転をした。道路の電光表示は、「友部パーキングより先は渋滞 20km」となっている。それで、友部の手前で意識して時速を 80km 以下に落とした。前の車との車間距離は、意識して「なんでこんなに」と思えるほど十分に取る。
なるほど、友部パーキングを過ぎると、周囲を走る車の台数がやたらと増え始め、スピードが遅くなる。時速 80km すら維持できない。大体 60km ぐらいになる。だが、車間距離を十分とっている限り、極端なノロノロ運転になるということはほとんどないし、ましてやストップしてしまうということはない。
車間距離が短いと、追突を避けるために急ブレーキをかけなければならない事態が頻繁に生じるが、前の車との余裕が十分だと、その必要はない。前の車のブレーキランプが点灯しても、こちらはエンジンブレーキで対応できるので、あまりブレーキを踏む必要がない。すると、後ろの車もブレーキを踏まずに済んでいるはずだ。
時として時速 30km ぐらいにまで落ちるが、それは長くは続かず、すぐに時速 60km ぐらいに回復する。だから、あまりストレスはない。下手に急いで前の車との車間距離を詰めたら、ストップしないまでも、時速 5km 以下の歩くより遅いノロノロ運転に、頻繁に陥ってしまっていたと思う。
で、ふと気づくといつの間にか渋滞区間を通り抜け、時速 100km が回復されていた。この間、スピードが極端に落ちた時でもブレーキを踏んでいないので、燃費効率は落ちていないはずだ。経済的で、ストレスがないというのは、なによりである。
問題は、件の記事で紹介されていたように「金も時間もオトク」かどうかだ。金に関しては、ほぼ確実にオトクになっていると思うが、時間もオトクだったかどうかは検証できない。ただ、少なくとも「ゆっくり走ったから時間がかかった」というような実感はない。一度も止まらずに済んでいるので、全然遅くなってはいないと思う。
こうした「渋滞吸収運転」が多くのドライバーに認知され、実感として理解されれば、高速道路上の渋滞は劇的に減ると思う。渋滞は下手な運転のせいで、必要以上に作り出されているのだ。
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コメント
こちらは、渋滞にバッチリ巻き込まれてきました。
あらかじめの車間も、速度調整も、はたまた車線変更の妙技も“筋金入りのA型”運転でクリアしてきているつもりなのですが…。
わざわざ割り込んできて、すかさずブレーキ踏むバカ。
空いているのではなく、空けてあることに気づけ!
しかしマァ、渋滞のメッカ(中国道宝塚トンネル付近)を中心に、行きも帰りものんびり渋滞ライフを楽しんできました。
究極の暇つぶしは、家族で『エアーUNO』でした。
投稿: 乙痴庵 | 2009年9月24日 12:35
乙痴庵 さん:
>こちらは、渋滞にバッチリ巻き込まれてきました。
>
> あらかじめの車間も、速度調整も、はたまた車線変更の妙技も“筋金入りのA型”運転でクリアしてきているつもりなのですが…。
渋滞になる一歩手前で、多くの車が渋滞吸収運転をしてくれると、渋滞にならずに済むと思います。
あるいは、既に渋滞が発生していても、その後ろから迫る車がゆっくり行けば、渋滞は長くならないうちに、いつの間にか解消しそうな気がします。
ただ、時々止まって時々動くみたいな極端な渋滞になってしまうと、残念ながら、渋滞吸収運転も効き目ありませんね。
> わざわざ割り込んできて、すかさずブレーキ踏むバカ。
> 空いているのではなく、空けてあることに気づけ!
お恥ずかしい。私も前はそういうバカをやっていました。
それをやってもそんなに速く進めるわけじゃないんですね。
(渋滞区間を抜け出してからあっという間に取り戻せるぐらいの差しか出ない)
その上、渋滞をさらにひどくすることになる。
それに気付いたのは、40歳を越えてからでした。
反省。
投稿: tak | 2009年9月24日 14:12
takさんの反省、恐縮至極にございます。
そんな、そんな。
現状とこれからが改善されれば、少なくとも“渋滞”については実害が少なくなる方向です。
ただ、今回の渋滞で学んだことは、いくら自分がスローダウンを試みても、その後ろで新たな渋滞を醸成する輩が迫ってきている…、ということです。
>渋滞になる一歩手前で、多くの車が渋滞吸収運転をしてくれると、渋滞にならずに済むと思います。
結局は思いやり運転。
坂道&トンネルスローダウンの車を、どれだけの人が理解(認知)して、どれだけ回避(最前スローダウンなりエクセレント車線変更)するかにかかっているような気がします。
渋滞だって、立派なコミュニティーです。
少なくとも、路肩走行の車はさっさと拿捕されなさい。
投稿: 乙痴庵 | 2009年9月24日 20:16