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2009年9月24日

公益法人見直しで思うこと

民主党政府は公益法人の見直しを行うと明言している。いいことである。無駄な法人は本当にたくさんあるから。

大分前のことだが、ある地方都市のパンフレットを英訳するという仕事を請け負ったことがある。外国人向けにアピールする必要があるからというのだ。

パンフレットの巻末には、その地方都市にある官庁、公益団体の名前がずらずらっとリストアップされている。それも全部英訳してもらいたいという。そこで当然にも、私は依頼会社の担当者にこう言った。

「ちょっと待ってくださいよ。官庁や団体の固有名詞を勝手に英訳してしまっちゃ、まずいでしょ。正式の英文名称があるはずだから、それをまとめて送ってちょうだいよ」
「いやぁ、そんなのないみたいですよ。日本語の名前しかないみたい。この際、一度に英文名をつけてもらう方がいいって言ってます」
「いくらなんでも、そんなはずないでしょ。そこの団体の職員が海外出張するときとか、どんな名刺持っていったわけ?」
「海外出張なんて滅多にないし、たまにあっても、いつも適当にやってて、フィックスされた英文名称ってないみたい。だからこの際、お願いしますよ」

というわけで、半ばあきれながら翻訳にとりかかったのだが、そこでまた困ってしまった。英語に翻訳するとまったく同じになってしまうような、とてもよく似た名前の団体がいくつもあるのだ。日本語の小手先レベルで表現を微妙に変化させても、フツーに英語にすると、みんな同じ言い方に収斂されてしまう。

名は体を表すというから、同じような仕事をする団体が、いくつもあるということである。私はまた、担当者に問い合わせた。

「どう考えても同じようなことをしてるとしか思えない、似た名前の法人がたくさんあるんですけど、これって、どう区別したらいいんですか?」
「まあ、確かに、似たようなことを垣根争いしながらやってるみたいです。そこはまあ、適当にお願いします」

まあ、実態って、そんなようなことらしいのだ。

私はその仕事を請け負うまで、そんな地方都市のレベルでまで、一つの団体でこなせるような仕事を、3つも 4つもの団体が群がって、妙な分業でこなしているとは、実感として知らなかった。同じような仕事をいろいろな複数の団体が分業的に受け持って、それぞれに理事長だの専務理事だの事務局長だの経理担当だのがいるわけだ。

誰が考えても、似たような仕事は一つの団体がまとめてやる方が効率がいいのだが、効率よりも天下り先のポストをたくさん用意する方が重要と考える人が力を持っているから、こうなるのである。「本当にもう、一体、誰の金だと思ってるんだよ」と、私はつぶやいたものである。

それぞれの団体が少しは収益事業(まあ、ちょっとした手数料徴収とか)を運営してはいるんだろうが、多くは税金が注ぎ込まれているのである。うまくやればそれぞれ 1人ずつで済むはずの理事長とか、専務理事とか、事務局長とか、経理担当とかが、それぞれ団体の数だけ存在し、その複数分の給料を税金を注ぎ込んで払っているのだ。

民主党政権になって、こうした公益団体の見直しを行うというのは、大賛成である。政権交代がないと、こうしたことはやりにくい。何度も書いているように、私は全然民主党支持ではないのだけれど、やはり時々は政権交代のある方がいい。

ちなみに、前にもちょっと書いたのだが、私がさんざんくさした「正しい和食認証制度」関連で、いつの間にか、ちゃんと農水省関連の立派な天下り先ができていた(参照)。「日本食レストラン海外普及推進機構(JRO)」なんていう法人である。これがどれほど役に立つものなのか、私には甚だ疑問である。

毒を食らわば皿まで・・・本宅サイト 「知のヴァーリトゥード」へもどうぞ

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コメント

>同じような仕事を、いろいろな複数の団体が分業的に受け持って、それぞれに理事長だの専務理事だの事務局長だの経理担当だのがいるわけだ。

それで理事長には高級車がついて専属の運転手がいるわけですね。殆んどが朝晩の送り迎えだけです。運転手の人件費がなんだかんだで一千万、車のコストが百万/年、一日の通勤費が四万ですね。

理事長の机上にあるのは電話と既決と未決の箱だけです。実にシンプル。

投稿: ハマッコー | 2009年9月24日 16:48

おかしい…。
 ハマッコーさんのコメントと合わせて拝読するうちに、ヘラヘラ笑いがこみ上げてきました。


 あるスポーツ関係(マイナーって呼ばれるのが悔しい…)の“天下り”は、教諭定年後に協会理事長ポストに就き(天上り?)、半分手弁当で交通費は燃料手当と鉄道の実費のみ…。
 「まだ手当が出るだけ、まし。」と、楽しく過ごしておられました。

 専用の運転手もいない。手配できるのは、臨時雇い(無給)の運転手。
 ちなみにその臨時雇いは、時刻表で鉄道乗換ルート策定と金額算出、理事長マイカー出動時の目的地カーナビ設定、協会からのメール文書の印刷や、FAX送信、メール送信…。

 「すべては、そのスポーツをもっと盛り上げるために!」


 …がんばったな。親父。(オッチャンは臨時雇いの“ある意味”専用運転手)

投稿: 乙痴庵 | 2009年9月24日 20:45

ハマッコー さん:

>それで理事長には高級車がついて専属の運転手がいるわけですね。殆んどが朝晩の送り迎えだけです。運転手の人件費がなんだかんだで一千万、車のコストが百万/年、一日の通勤費が四万ですね。

>理事長の机上にあるのは電話と既決と未決の箱だけです。実にシンプル。

具体的ですね。
だいぶお馴染みの状況とお察ししました ^^;)

投稿: tak | 2009年9月24日 22:20

乙痴庵 さん:

>…がんばったな。親父。(オッチャンは臨時雇いの“ある意味”専用運転手)

素晴らしい!

そんな風に苦労してる団体も多いんだろうなあと思いました。
(とくに、文科省管轄?)

投稿: tak | 2009年9月24日 22:25

「日本食レストラン海外普及推進機構 (JRO)」 - あれだけ利権構造の中で動いていると批判しても、それを抜きにしても自らのポストを作るだけで良い訳ですから、ああした動きになるのですね。

こうした新たな構造(ポスト)つくりは世界の役人の常套手段ですが、こうした意味のない法人が立法と同時進行しているのが恐ろしいです。

それにしてもなんて厚顔な恥知らずの連中なのでしょう。そこからまた美味い汁を吸う族議員が寄生する構造を本当に破壊できるのでしょうか?

投稿: pfaelzerwein | 2009年9月25日 15:58

はじめまして。いつも楽しく拝見させてもらってます。

事実関係として少し気になったので若干コメントを。

>多くは税金が注ぎ込まれているのである。うまくやればそれぞれ 1人ずつで済むはずの理事長とか、専務理事とか、事務局長とか、
>経理担当とかが、ぉれぞれ団体の数だけ存在し、その複数分の給料を税金を注ぎ込んで払っているのだ。

公益法人のうち補助金などの税金が流れているのは一部だと思います。国の公益法人でも地方自治体のものでも同じかと。

補助金などが流れていても、私の知っている限り、理事長の給料や運転手の人件費を税金で賄っている団体なんてありません(そもそも専属の運転手なんていない団体がほとんどかと)。

似たような名前の団体が多いのは事実ですし、整理統合を進める方向は正しいと思いますが・・。

投稿: tetoo | 2009年9月26日 00:47

pfaelzerwein さん:

>「日本食レストラン海外普及推進機構 (JRO)」 - あれだけ利権構造の中で動いていると批判しても、それを抜きにしても自らのポストを作るだけで良い訳ですから、ああした動きになるのですね。

ブログの世界では、誰とはいいませんが、「正しい日本食認定、大賛成」 を唱えている人もいましたが、どうせ天下り先が一つ増えておしまいになるということが見えていなかったようです。

投稿: tak | 2009年9月26日 09:18

tetoo さん:

>公益法人のうち補助金などの税金が流れているのは一部だと思います。国の公益法人でも地方自治体のものでも同じかと。

もちろん、私もそれは理解しています。

公益法人の中には、上記の乙痴庵さんの父君のように、手弁当で奮闘しているところも多く、現実に私が仕事上で付き合っている法人も、資金不足で苦労しているところばかりです。

ただ、その一方で、必要とも思われない事業をアリバイ作りのごとく、無理矢理に毎年繰り返している法人もあります。

必要でもない事業に付き合わせるために、周囲に補助金を配りまくる窓口になっている法人もいくつもあり、私はため息が出てしまいます。

理事長とか専務理事とかが天下り役人だと、こうした予算が付きやすいんですね。
あるいは、そうしたおいしいところに天下りが集中しやすいという、卵と鶏の関係でもあるんでしょうが。

>補助金などが流れていても、私の知っている限り、理事長の給料や運転手の人件費を税金で賄っている団体なんてありません(そもそも専属の運転手なんていない団体がほとんどかと)。

まさにその通りですね。
ただ、専属の運転手を抱えることのできる団体は、国からの補助金がふんだんに入ってきて、予算に余裕があるからできるというのも事実です。

>似たような名前の団体が多いのは事実ですし、整理統合を進める方向は正しいと思いますが・・。

これは急いでやってもらいたいと思っています。

投稿: tak | 2009年9月26日 09:31

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