片山さつきさんの土下座
既にあちこちで書かれているし、こんなこと自分で書いたってしょうがないだろうと思い、敢えて触れずにきたのだけれど、どうにも夢見が悪いのでやっぱり書いてしまうことにする。
今回の選挙速報番組では、自民党候補者の「土下座」場面が繰り返し放映された。あれを見た人の多くは、不愉快になっただろう。
テレビで一番多く流されたのが、あの片山さつき氏の土下座場面だろう(参照)。あの東大法学部卒で大蔵官僚というキャリアをもつエリート中のエリートが、切羽詰まると土下座までしてしまうというストーリーは、かなりセンセーショナルなものだったのだろう。
ところが、このパフォーマンスに対してあちこちから批判の声があがっている。もっとも正論なのは「国会議員の議席は個人のためにあるのではない」という指摘だ。有権者は有権者の都合で投票するのである。候補者が自分の都合で「お願いします、助けてください」と言って土下座するのは、お門違いというものだ。
しかしこの国では、このお門違いが時々通ってしまっていた。有権者が情にほだされて一票を投じてしまうということが、ままあったのである。ところが今回の片山さんの場合は、「情にほだされる」というバックグラウンドがなかった。地元では「どうせ落下傘」と思われていたのである。
ほだされる情が醸造されていないところにもってきて、急に自分の都合で土下座なんかされても、何も効果がなかったばかりか、逆に哀れさを増幅するという結果にしかならなかったのである。
今回、片山さんの土下座に対してあちこちのブログで不快を表明する記事がアップされているのは、こうした背景があったのだと、私は思っている。
土下座選挙が完全にナンセンスとして批判されているわけじゃない。土下座が素直に受け入れられる土壌を、選挙区に作る努力を怠ってきたくせに、唐突に哀れを乞うようなまねをしてみせるから、そのギャップが不快感を呼んだ。あるいは、「いい気味だ」と思われてしまったのかもしれないのである。
この国でもようやく「土下座選挙」がナンセンスと思われてしまうという、当たり前の感覚が養われてきたという指摘が多いが、私はそれを言うには早計だと思う。片山さんの土下座があまりにも唐突だっただけで、他の候補の土下座は案外素直に受け入れられていたりする。
まだまだ土下座が有効だと思われているのは、我々選挙民の責任でもある。そんなに見くびられるような存在でしかないのだ。悲しいことに。
最後にへそ曲がりとして、ちょっと別の視点から言わせてもらうのだが、片山さんのあの「土下座」は、写真を見る限り「正しい土下座」になっていない。中途半端すぎる。正しい土下座は、あんな風に足のつま先を立てて伏すものじゃない。ちゃんと足の甲まで地面に付けて、正座しなければならないのだ。
土下座だって、きちんとやればそれはそれで美しいものだったりするのだが、あれでは哀れなだけだ。土下座なんてしたことないから、やり方を知らなかったのかなあ。それとも、最後の最後までプライドが邪魔しちゃったのかしらん。
| 固定リンク
「世間話」カテゴリの記事
- タバコは目の前で吸われるのでなくても迷惑(2023.09.17)
- すき家 駐車場の貼り紙騒動(2023.09.09)
- 崎陽軒の CM ソング、ずっと誤解してた(2023.09.03)
- 道路の「ゼブラゾーン」を巡る冒険(2023.09.01)
- PL とか BS とかいう言葉に疎くなってしまった(2023.08.25)
コメント
ふえぇ。こんなことがあったのですか…。(知りませんでした)
中学校の頃でしたか、生徒会の役員選挙のときに、やっぱり土下座する候補者がいて、翌年『土下座禁止令』が出ていたことを思い出しました。
進学にしても、就職にしても、未だ『入ることが目的』の若者が多いような気がします。逆に『この学問(業種)を極めたいから入る!』という猛々しい若者は、(就職雑誌の中など)ごく一部のようです。
さつきちゃんも、『とりあえず永田町への切符』というスタンスだったのかしら?
爪先が残っているので、猫背になっちゃいましたね。
投稿: 乙痴庵 | 2009年9月 4日 12:43
takさん
わが意を得たりです。
麻生氏も、解散直後は演説をお詫びで始めていましたが、取って付けたような感じで逆効果でしたね。
その違和感に対して、「首相たるものがお詫びしてばかりでは」という声が出てやめたみたいですが、問題は首相が詫びてはいけないということではなくて、お詫びがいかにも白々しいということだったように思います。
それにつけても、わが国の首相になる人物ってのはどいつもこいつも…
http://www.independent.co.uk/news/world/asia/i-have-been-abducted-by-aliens-says-japans-first-lady-1780888.html
投稿: きっしー | 2009年9月 4日 13:26
土下座というとハラケンさん。(といってももうわからない人も多くなってきているんじゃないでしょうか?)
それはまあ見事な土下座だったというのが、子どもながらに記憶に残っています。
この人こそ情に訴える土下座の達人だったんでしょうね。
片山さんの場合、保守分裂の選挙区の事情や、小泉改革への反動などアゲインストの風が強かったとはいえ、東京で反麻生なんてやっている暇があるんだったら、まあ城内さん並とはいわないまでも地元回り、辻立ちをしなければならなかったんでしょうね。
投稿: 雪山男 | 2009年9月 4日 16:31
乙痴庵 さん:
> 中学校の頃でしたか、生徒会の役員選挙のときに、やっぱり土下座する候補者がいて、翌年『土下座禁止令』が出ていたことを思い出しました。
スゴイですね。
公職選挙法でも、「演説会に於いては土下座をしてはならない」なんて条項を盛り込みましょうか (^o^)
> 爪先が残っているので、猫背になっちゃいましたね。
さすが、身内に神主さんがいるだけあって鋭い指摘ですね。
本当の座礼は、腰から後頭部まで一直線ですからね。
これをきっちり、しかもさりげなくきめるのは、修行が必要です。
投稿: tak | 2009年9月 5日 10:00
きっしー さん:
>問題は首相が詫びてはいけないということではなくて、お詫びがいかにも白々しいということだったように思います。
そうですね。
しょうがないから言ってるだけで。
>それにつけても、わが国の首相になる人物ってのはどいつもこいつも…
>http://www.independent.co.uk/news/world/asia/i-have-been-abducted-by-aliens-says-japans-first-lady-1780888.html
わはは (^o^)
見出しで目が点になり、写真 (とそのキャプション) を見て吹き出しました。
投稿: tak | 2009年9月 5日 10:04
雪山男 さん:
>土下座というとハラケンさん。(といってももうわからない人も多くなってきているんじゃないでしょうか?)
伝説の原健三郎さんですね。
>それはまあ見事な土下座だったというのが、子どもながらに記憶に残っています。
「原健三郎 土下座」 で画像検索したんですが、見つかりませんでした。
だれか写真持ってて、アップしてくれないかなあ (^o^)
>この人こそ情に訴える土下座の達人だったんでしょうね。
というか、それしかしないというか ^^;)
投稿: tak | 2009年9月 5日 10:06
>http://www.independent.co.uk/news/world/asia/i-have-been-abducted-by-aliens-says-japans-first-lady-1780888.html
an alien なら鳩山さんということである意味合ってるかもしれません(笑)
投稿: ぐすたふ | 2009年9月 5日 10:32
グスタフさん:
>an alien なら鳩山さんということである意味合ってるかもしれません(笑)
わはは (^o^)
でも、どっちが誘拐されたんだかわからないですね。
投稿: tak | 2009年9月 5日 20:42