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2009年10月 9日

インド人は本当に計算に強いのか?

インド人は数学に強くて、計算なんかおそろしく速くて正確というのが、まことしやかに語られていて、今や日本の常識みたいになっているが、果たして本当にそうなんだろうか?

私はこの点に感してものすごく疑問を抱いてしまっている。「彼ら、簡単な計算だってまともにできないじゃん!」とまで思っているのだ。

「インド人/計算に強い」 という 2語でググってみると、何と 12万件がヒットする。そのトップにランクされているのは、「超インド式桜井計算ドリル 2けたの暗算がインド人より強くなるっ ...」とかいう、ちょっと私には怪しげにさえ感じられる本だ。

クリックしてみると、"九九を身につけた日本人であれば、2けた同士のかけ算はもちろん、4けた同士のたし算、ひき算も、簡単にできてしまうのが「超インド式計算法」" という謳い文句である。

一瞬、「そりゃ、すごい!」なんて思ってしまうが、4けた同士のたし算、ひき算ぐらいなら、私だって暗算でできるぞ。ちょっと時間はかかるけど。2けた同士のかけ算を暗記しているらしいというのは、そりゃちょっとしたものだとは思うけどね。

私が、「インド人計算強い説」に疑問を抱くのは、最近、よく本場のインド・カレーとやらを食べる機会があるからだ。今年の 1月に 「本格的インドカレーに期待」なんていう記事を書いたのだが、あの頃から、ちょくちょくインド人(らしい)の経営するインドレストランで食事をしているのだ。

本場のカレー料理は、確かになかなかおいしい。しかし、食べ終わってレジで支払いをするのが、ちょっとやっかいなのである。インド人(だと思う)の店員のレジ打ちが、じれったくなるほど遅いのだ。

計算の苦手なはずの私でさえ、合計金額を暗算でちゃちゃっとはじき出して、お釣りが面倒にならないように、端数分の小銭まで用意して待っているのに、インド人(のように見える)店員は、たかがちょっとした食事の合計金額を計算するために、不器用な手付きで長々とレジと悪戦苦闘するのである。

「あんたたち、計算が得意らしいから、レジ打っている間に頭の中では合計金額が出てるんじゃないの?」なんて言いたくなってしまうが、どうもそういうわけでもないらしい。レジを打ち間違えて滅茶苦茶な計算になっても、こちらが「それ、違うよ」と言うまで間違いに気付かなかったりするから。

「インド人が計算に強いなんて、ウソじゃん!」と言うと、ウチの次女なんかは 「日本でインド料理店をしているのは、パキスタン人が多いらしいよ」なんて、妙にインド人をかばい立てするのだが、それにしてもおかしい。いくらなんでも計算が下手すぎる。

上記の今年 1月の記事のコメントで触れた 、私が昔付き合いのあったインド人は、向こうの上流階級で超インテリだった。私は彼の家に招かれて何度かインド料理をご馳走になったが、お金を払う必要がなかったから、彼がお釣りの計算が早かったかどうかなんて知らない。でもまあ、あんなインテリだから、多分早かったんだろう。

しかし、私がちょくちょく出入りする複数のインドレストランの店員は、どうみても計算が苦手らしいのだ。パキスタン人なのかもしれないけど、「あんた、本当はパキスタン人でしょ」なんて聞いたことがないから、わからないし。

で、もう少しググってみたら、いろいろな記事にぶつかった。実際にインドで暮らしておられる Shiho Andheri さんの Hello from Mumbai!! というブログの、今年 5月 9日の記事には、次のように書かれている。(参照

インド人は数字に強いと聞いていたけれど、こちらで生活してみるとあまりそう思わない。食料品や雑貨の値段の計算はうちの妹のほうが早い。たまにリキシャドライバーなんか10ルピーも多くおつりをくれたりする。同僚も計算弱いから、、とよく言っているし。。。。

ふぅむ、やっぱりインド人が計算に強いというのは、幻想だったのかもしれない。さらに、インド駐在員の fallentimbers さんの Real India since 2008  というブログの今年 1月 28日付記事には、以下のような明快な記述が見つかった。(参照

小学校でインド式掛け算と言ったって、そもそも小学校就学率は50%ともそれ以下とも言われてますし、そんな高度な授業を行っているのは一部の私学に限ったことのようですから、インド人の平均像でも何でもないのです。

(中略)

もちろん強い人はいますよ。特に経理の連中は凄いです。
しかし皆がそうかというと、全然そんなことはないのです。決して暗算の得意ではない私でもできるような二、三桁の数字を二つ三つ『足す』だけでもオタオタして、たどたどしく電卓を叩く始末のインド人がザラですから。

ああ、やっぱりそうだったのか。インド人なら誰でも 2桁の九九を駆使して暗算しまくりというわけじゃなかったのだ。フツーの人は、世界中どこに行ったってフツーだし、計算音痴はどこにでもいるのだ。これを知って私は、何だか妙に安心してしまったのである。

毒を食らわば皿まで・・・本宅サイト 「知のヴァーリトゥード」へもどうぞ

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コメント

この問題は単純ではなさそうですね

インド人の収容民族はアーリア人ですから、論理的な思考の性向がある人々だと思います
サンスクリット語は(おそらくぱーり語も)印欧語系ですし
ゼロという観念を発明したのはインド人と言われている
二桁暗算を授業でやっているのも確かである
私の知人がNYで人材会社につと馬手いるのですが、コンピューター・エンジニアのほとんどがインド人だという
こう列挙してゆくとインド人は計算に強い伝説が句連れ瑠事も無さそうですが、
反対にその牙城を崩す?要素もいろいろ考えられます
二桁かけ算暗算も果たしてどの学校でもやっているものなのか?
アンタッチャブルの人達の地区や貧民地区や僻地では学校すらないのではないか?
勉強に熱心なインド人ばかりでもないだろうとか

二桁かけ算も最後までは教えないという話ですし
コンピューター・エンジニアになるというのも、教材などがあまりひつようでないからではないか?
・・・などといろいろ考えられます

しかし、いずれにしても、数学がインドで発達したという事実と、米国でのコンピューター・エンジニアの大半がインド人であるということは、少なくともインド人とアグロリズムとの相性がいいということは否定できないでしょう
いわゆる、インド人の理屈も、日本人のような感情的・情緒的・浪花節的なものではなくて、直裁ですし、例え屁理屈ではあっても一応理屈は立っている・・・というものです


投稿: alex99 | 2009年10月 9日 11:07

alex さん:

>いわゆる、インド人の理屈も、日本人のような感情的・情緒的・浪花節的なものではなくて、直裁ですし、例え屁理屈ではあっても一応理屈は立っている・・・というものです

私の限られたインド人との付き合いから得られたインドの印象は、

上流階級: おっとり。何事も 「よきにはからえ」 って感じ

ビジネスマン (というより、「商売人」): やたら押しが強くて屁理屈をこねる

そのへんのおっさん: もっさりしてるけど、いい人

という感じなんですが、いかがでしょうか?

投稿: tak | 2009年10月 9日 21:04

tak-shonai さん

おっしゃるとおりだと思います
言い得て妙ですね(笑)

考えてみれば、英国同様、他民族の階級社会ですから、階級によって人間性が大きく違う
まとめて一口で言っては不適切となりますね

投稿: alex99 | 2009年10月 9日 21:26

訂正です

他民族 → 多民族

失礼しました

投稿: alex99 | 2009年10月 9日 21:27

alex さん:

>考えてみれば、英国同様、他民族の階級社会ですから、階級によって人間性が大きく違う

日本も江戸時代まではそんなところがあったんでしょうがね。
言葉遣いだって、階級で違ってました。

>まとめて一口で言っては不適切となりますね

まあ、ざっとした印象ということですので。

投稿: tak | 2009年10月 9日 21:44

聞いた話では、未だカースト制が根強く残る影響で、職業制限が厳しく、
制度の対象外である新しい産業のIT関係に人が集中しているそうです。
インドも人口が多い国ですし、IT以外に名を馳せる道がなければ、才能ある人が集まるのでしょう。
それで世界で活躍するインド人が理系に偏ってしまい、
インド人は計算が得意と言われるようになったのではないでしょうか。
ちなみに日本でも一部の塾では、小学生に2桁の掛け算を暗記させ、19×19まで覚えます。
もう12年も前のことです。

余談ですが、上の階級以外は資産的に大学に通うのが難しいそうです。
しかし、それを覆す努力と才能で花開いていく人もいるそうです。
ラマヌジャンという人の話しが印象的です。

投稿: 夜の指揮者 | 2009年10月10日 06:36

夜の指揮者 さん:

>聞いた話では、未だカースト制が根強く残る影響で、職業制限が厳しく、
>制度の対象外である新しい産業のIT関係に人が集中しているそうです。

なるほど、あり得る話ですね。

>ラマヌジャンという人の話しが印象的です。

初めて聞く名前です。
Wikipedia で調べたら、なるほど、印象的ですね。

数学研究に関する 「直観性」 というのが、なかなか興味深いです。

投稿: tak | 2009年10月10日 19:41

実は「天才」という言葉でまっさきに思い浮かぶのがラマヌジャンだったりします。
あんな円周率の式を思い付くだけでもすごいですが、収束が速いというところに特別な才能を感じてしまいます。

2桁のかけ算は、1^2(1の2乗) =1, 2^2(2の2乗) = 4といったように2乗した数を暗記しておくと、 (a+b)*(a-b)=a^2-b^2という公式を使って基本的に足し算と引き算にしてしまえるので、テストなどでは20の2乗まで覚えておいてそれで暗算していました。

たとえば15*17は、(16-1)*(16+1) = 16^2-1 = 256-1 = 255みたいな感じです。
15*18なら15*17+15として、255+15 = 270になります。

数学というとあまり実用性のない学問というイメージがありますけど、こういうのは結構便利です。

投稿: ぐすたふ | 2009年10月11日 12:16

ぐすたふ さん:

>実は「天才」という言葉でまっさきに思い浮かぶのがラマヌジャンだったりします。

いやはや、夜の指揮者さんにコメントをいただくまで、ラマヌジャンの名は全然知りませんでした。
スゴイ人だったんですね。

>2桁のかけ算は、1^2(1の2乗) =1, 2^2(2の2乗) = 4といったように2乗した数を暗記しておくと、(a+b)*(a-b)=a^2-b^2という公式を使って基本的に足し算と引き算にしてしまえるので、テストなどでは20の2乗まで覚えておいてそれで暗算していました。

私にはぐすたふさんが十分に天才に見えてしまいます。
(理数音痴なので ^^;)

投稿: tak | 2009年10月11日 23:24

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