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2009年11月29日

『唯一郎句集』 レビュー #83

11月というのは、とても早く過ぎるように感じる。なにしろ 30日までしかない。小の月は隔月で来るが、この小の月は格別に短い。

今日は 29日。仕事関連で庄内に行くので、早めに更新しておく。昨日は 4句だったが、今日の番のページには、2句しか載っていない。それもなんだか気に掛かる 2句である。

本日は、2句まとめて論じてみたい。というのは、どうみても連作で、一晩のうちのこととしか思われないからだ。

月影す産科病院の屋根の雪かな

高槻の梢の雪を被れるそのまま朝となる

最初の句は夜である。月が出ているが、さっきまで雪が降っていたので、産科病院の屋根はうっすらと白くなっている。屋根の雪は、下から見上げたのでは見えない。その産科病院の 2階の病室の窓から眺めたのであろう。

とすると、自分の妻がお産のために入院しているのである。昔のお産は産婆を自宅に呼ぶのが普通だったから、産科病院に入院したというのは、よほどの難産だったのかもしれない。

2句目の「高槻」の「槻(ツキ)」とは、ケヤキの古称。つまり、高いケヤキの梢に雪が積もっていたというのである。雪は夜になる前に止んだのだが、その梢の雪を見守ったまま朝になってしまったというのである。

よほどの難産で、唯一郎はまんじりともしなかったのだ。

私は、これは私の母が生まれた夜のことなのではないかという気がしている。ただ、私の母の誕生日は 10月 30日なので、いくら酒田でも、雪が降るには少し早すぎるので、違うかもしれない。

ただ、私の母は実の母の産後の肥立ちが悪かったので、私の戸籍上の祖父母に預けられたのだと聞いている。しばらく預けたはずが、そのまま無理矢理養女として引き取られてしまったのだ。今なら考えられないような話だが。

唯一郎がまんじりともしなかったほど心配だったのは、やはり母が生まれた日のことだったのではあるまいかという疑念が晴れないのである。もしかしたら、その年は初雪が特別早かったのかもしれないし。

この疑問は、今となっては誰に聞いても解けないだろう。だから、疑問は疑問のままとしておく。

本日はこれにて。

毒を食らわば皿まで・・・本宅サイト 「知のヴァーリトゥード」へもどうぞ

 

 

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