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2009年11月 5日

レヴィ=ストロースは 1冊も読んでないけど

今さらながらのようなことを書くが、クロード・レヴィ=ストロースが先月の 30日に 100歳で亡くなったのだそうだ。ずいぶん長生きしてるとは知っていたが、100歳とは知らなかった。

レヴィ=ストロースは、なんだかお馴染みのような気がしていたのだが、考えてみれば彼の著作は 1冊も読んでいないのだった。

1冊も読んでいないのに、なんでそんなに身近に感じていたのかというと、これはもう、構造主義哲学の入門書とか構造主義的人類学を論じた本とかを読むと、必ず彼の業績がしっかりと紹介されていて、それはもう、「構造主義の前提」みたいな位置づけになっているようなので、いつの間にか少しは読んだような錯覚にさえとらわれていたのだった。

で、レヴィ=ストロースの業績に触れるにつけても、彼以後の思想というのは、「哲学」という感じではなく、それはもう、「思想」というほかないみたいな、何というか、時代の転換点を作っちゃった人みたいな気がするのである。

「哲学」だと思って彼の業績に触れると、「ちっとも哲学っぽくないじゃん!」という印象を、誰もが持つと思う。サルトルの思想(「実存主義」っていう、よくわからないやつね)が「すっご~く、哲学っぽい」とすると、レヴィ=ストロースって、いわゆる「哲学」とは印象が全然違うんだよね。

Wikipedia でも「フランスの社会人類学者、思想家」と紹介されている(参照)。ところが、西洋で言うところの「哲学」(pholosohy)って、ものすごく裾野が広いらしくて、例えば、英国の大学でマーケティングを勉強したやつが、Master of Philosophy (哲学修士)なんていう称号をもらって帰ってきたりする。よくわからんところがあるのだ。

だから、人類学者のレヴィ=ストロースが実存主義哲学者のサルトルを批判して、「君たち、ずいぶんエラソーな論を展開しているけど、人間とか世の中の成り立ちって、そんなもんじゃないだろうよ」と、とても実証的な見地からものを言って、当然の如く勝っちゃったというのも、まあ、そういうことなんだろうなあと思う。

「そういうこと」ってどういうことなんだと言われても、うまく説明できないけどね。何しろ、まともには彼の著作を  1冊も読んでないから。

ただ、私は構造主義というものを知る前からフォークロアに関してはずいぶん入り込んでいたので、レヴィ=ストロースの人類学的アプローチというのが全然違和感なく、「そりゃそうじゃん、当たり前じゃん」みたいな感じで受け入れられたという気がする。つまり、私はレヴィ=ストロースが好きなのである。 1冊も読んでないくせに。

今から少しは読めと言われても、なかなか時間が取れないから、ちょっと大変だろうなあ。

ちなみに、クロード・レヴィ=ストロースと、あのジーンズのリーヴァイ・ストラウスとは、どちらも "Levi Strauss" で同じスペルである。スペルが同じだけではなく、遠縁に当たるという説がまことしやかに語られているが、それは実は明確には証明されていないらしい。

毒を食らわば皿まで・・・本宅サイト 「知のヴァーリトゥード」へもどうぞ

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哲学・精神世界」カテゴリの記事

コメント

自分は哲学というものに昔から苦手意識があって、この手の本になかなか手が伸びません。何しろ「ソフィの世界」ですら途中で挫折してしまいました(笑)。

その後に読んだのは、山辺響さんに紹介していただいた例の本くらいです(あの方は難しい言葉を使わない主義みたいなので言っていることがよくわかりました。最初は突き放したもの言いから「形而上」の人なのかと思ったのですが、途中で陸田死刑囚の軌道修正をしていましたし、それなりに地に足についたスタンスの人だったみたいですね)。

昔、「ショーペンハウエル読んだ?」と訊かれて、「何それ」と答えて恥ずかしい思いをしたのを思い出してしまいました(^^;

いわゆる「哲学的」なこと(何かの真理を含んでいるようで考えさせられること)は大好きなんですけどね。

わからないからこそ理解したという気持ちはあって、いずれ心の準備ができたら本格的に勉強したいと思っています。
でも、やっぱり挫折しそうな気も…。

投稿: ぐすたふ | 2009年11月 5日 19:23

ぐすたふ さん:

>その後に読んだのは、山辺響さんに紹介していただいた例の本くらいです(あの方は難しい言葉を使わない主義みたいなので言っていることがよくわかりました。最初は突き放したもの言いから「形而上」の人なのかと思ったのですが、途中で陸田死刑囚の軌道修正をしていましたし、それなりに地に足についたスタンスの人だったみたいですね)。

「死と生きる」は、なかなか歯応えのある本でしたね。

ソクラテスとかヘーゲルとかドストエフスキーとか、今となっては古典的と言われそうな話が、改めて現実感をともなって迫ってきました。

私としては、カントをきっちり理解したいという気持ちがあるんですが、『純粋理性批判』 はいつも、ものすごく効き目のある睡眠導入剤になってしまって ^^;)

でも、何度か拾い読みしているうちに、少しずつ印象が固まってきているような感じもあって、勝手に、「この人、プラトンの生まれ変わりなのよね」 なんて思ったりしています。

投稿: tak | 2009年11月 5日 23:24

リーバイスジーンズの"Levi Strauss"をみて、"レビィ・ストロース"とも読めるなぁ、関係あるのかなぁ、と漠然とした疑問を長年抱いていたのですが、tak さんのおかげですっきりしました。
ありがとうございました。

投稿: hirosu | 2009年11月 7日 14:35

hirosu さん:

>リーバイスジーンズの"Levi Strauss"をみて、"レビィ・ストロース"とも読めるなぁ、関係あるのかなぁ、と漠然とした疑問を長年抱いていたのですが、tak さんのおかげですっきりしました。

すっきりして、なによりです。

旧約聖書にも 「レヴィ記」 というのがありますが、レヴィはユダヤ民族の総元締め的先祖であるヤコブの子とされています。

レヴィ、ヤコブは、英語ではそれぞれ リーヴァイ、ジェイコブです。

投稿: tak | 2009年11月 7日 22:26

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