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2009年11月17日

「主語なし会話」という誤解

「発言小町」の、「妻との会話が成り立たない」という男性発のコメントが一部で話題になっている。妻の発言に「主語がない」 ため、意味不明になってしまうのだそうだ。(参照

しかし日本語というのは、主語なしでも大抵意味が通じるものなのである。いちいち主語を付けるのは、村上春樹ぐらいのものだ。

だいいち、普段の会話でいちいち「私は」とか「僕は」とか「わしが」とか主語を付けすぎると、日本語ではちょっとうざったい感じになってしまうことさえある。どうもこの人、言っていることがおかしい。

で、そのコメントをよく読んでみると、こんなことなのである。(以下、引用)

どうも妻との会話がうまくいかなくて困っています。
簡単に言うと、会話に必要な情報が足りなすぎるのです。端的に
言うといわゆる「主語がない」というヤツです。
例えば、休みの日に子供と外出している妻から電話がかかってきます。
「そろそろいかないといけないんだけど」
「どこに?」
「買い物に。」
「あぁ」
「見てもらえる?」
「何を?」
「子供」
「あぁ」
「迎えに来てもらえるかなあ」
「どこに?」
「公園」
「どこの?」
「××公園」
「あぁ」
「私も向かうから」
「どこに」
「うちに」
「で?」
「途中で会えればいいと思って」
「あぁ、そういうことか。で、どういうルートでいったらいいんだろう?すれ違いたくないし」
「左の道」
「誰がどこでどっちをむいての左だよ!」

いつもこんなカンジです。はっきりいって疲れます。

ウチのブログの賢明な読者は、もう最初の 6~7行でお気づきだと思うが、この夫婦の奥さんの発言には確かに主語が欠けているが、「私が」 という言わずもがなの主語を省いているだけなので、全然不都合がない。この会話サンプルで不都合なまでに欠けているのは、決して「主語」なんかじゃない。

そもそも言ってる当人だって、引用文の最後の行が堂々と「主語なし」である。私なら行きがかり上、ここで「一体何が『いつもこんなカンジ』 なんだ ?」「誰が疲れるんだ?」と突っ込みたくなってしまうところだ。

この奥さんの発言で決定的に欠けていて不都合なのは、言うまでもなく「主語」ではなく、「目的語」(あるいは狭義の「補語」)である。これって、多分小学生レベルの文法だろうと思う。そんな低レベルの区別もつかない夫だから、妻の言いたいことを推し量れないのである。

そしてさらに驚いてしまうのが、このコメントにずらりと付けられたレスで、そのことを明確に指摘しているのが 1件もないということだ。

「うちの夫もそうです(笑)」とか 「よくわかります。ウチの妻も似た感じです」とか「すごくわかります。うちの夫も主語の無い話をします」とかいう話のオンパレードで、「本当によくわかっとんのか?」と突っ込みたくなってしまう。

日本人の文法知識って、平均的にはこの程度のものなのだろうか。そうだとしたら、多分、いわゆる「ゆとり教育」のせいだけじゃなく、ずっと昔からこんなものだったんじゃなかろうかという気がする。よく観察すると、団塊の世代でもこのレベルの人はいくらでもいるし。

とにかく一番驚いたのは、次のようなレスだ。

子供を育てる時に1番気をつける事 それは <あれ! これ! それ!>はいけないと教わりました。あれ取って~これ取って~それ取って~!これです。きちんと主語を入れてあげないと 言葉を覚えないそうです。

だぁからぁ、そりゃ、「主語」じゃなくて、目的語でしょ。この人の文章、そもそも、最初のセンテンスからして主語と述語が一致しないし、最後の文も主語がないから、「きちんと主語を入れてあげる」べきなのは誰で、「言葉を覚えない」のは誰なのかと、突っ込まれそうだ。

さらに、「<あれ! これ! それ!>はいけないと教わりました」というちょっと極端な文脈で、その舌の根も乾かぬうちに、わざわざ「これです」と続けるのは、普通はかなり気持ち悪いと思うがなあ。大丈夫かなあ、この人。

というわけで、今回はちょっとだけだけれどいらっときてしまったのを、あえて隠さないため、エレガントじゃない文章になってしまったのである。でもまあ、書いてしまって気が済んだから、もういいや。

毒を食らわば皿まで・・・本宅サイト 「知のヴァーリトゥード」へもどうぞ

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言葉」カテゴリの記事

コメント

ご無沙汰をいたしております。(ハイ主語なし)

 takさんほどではないにしろ、掲出の会話にはあきれてしまいました。

 会話が成立しないということよりも、会話を回避してないか?このご主人。
 奥様と話をすることに、何か一方的な言い負かされ(変な言い回しで恐縮ッス)のトラウマでもあるのでしょうか。

 『お願いだから気づいてよ…』というご主人からのメッセージがヒシヒシと伝わってくるのは、アタクシだけでしょうか…。
 『おして知るべし』の文化が子どもに伝わらないどころか、すでにこの親世代に伝わってないということですなぁ…。

 じつは、この奥様の会話自体、強脚色か作り物(創作)じゃない?


 ホントに、ご無沙汰をいたしておりました。またおじゃまいたします。

投稿: 乙痴庵 | 2009年11月17日 13:41

乙痴庵 さん:

>『おして知るべし』の文化が子どもに伝わらないどころか、すでにこの親世代に伝わってないということですなぁ…。

とくに、

>「誰がどこでどっちをむいての左だよ!」

なんていうのは、
「奥さんが公園からウチの方を向いての左」 に決まってんじゃん! と突っ込みたくなりますね。

投稿: tak | 2009年11月17日 16:04

件の元記事もコメントもそうですが、「主語」を「主な文章要素」くらいの意味合いで使っているように見えますね。

>日本人の文法知識って、平均的にはこの程度のものなのだろうか

そうなのだろうと思いますよ。昔、伊藤和夫という駿台予備校の英語講師が書いた『英文解釈教室』という名参考書がありましたが、この本も煎じ詰めれば、「どれが主語でどれが動詞(述語)なのか」を判定できれば英文の難解さはほとんど解消する、ということを教えていたように思いますし、逆に言えば皆いかにそれが分かっていないか、ですから。

もちろん、ラテン文法をまるっと適用することが日本語にフィットするのかという問題はあるのでしょうけど。

それにしても元記事の夫婦の会話は、文法以前の共通理解が不足していますよね……。

投稿: 山辺響 | 2009年11月18日 10:47

山辺響 さん:

>件の元記事もコメントもそうですが、「主語」を「主な文章要素」くらいの意味合いで使っているように見えますね。

そうですね。
でも、それじゃ困るんですけどね。

>それにしても元記事の夫婦の会話は、文法以前の共通理解が不足していますよね……。

ダンナの方は、理解する喜びよりもやりこめる喜びを重視しているようですね。

投稿: tak | 2009年11月18日 11:24

いまさらですが
通りすがったので一言

>「主語」 じゃなくて、目的語でしょ
あなたは、枝葉の部分を必死に突っ込んでますが
物事の本質が見えてないように思います
彼が言いたいのは、主語とか述語、目的語などを
省略して話す嫁さんとの会話を理解するのは大変で苦労しているということです
私はこのように理解してます

投稿: いまさらの通りすがり | 2013年12月26日 23:45

いまさらの通りすがりさん:

>あなたは、枝葉の部分を必死に突っ込んでますが

ほほう、「枝葉」ですか?
「必死」ですか?

>彼が言いたいのは、主語とか述語、目的語などを
>省略して話す嫁さんとの会話を理解するのは大変で苦労しているということです

そんなこと、今さらあなたに言われなくても、誰だってわかりますさ。
「苦労してる」オーラ出しまくりですもの。
ただ、苦労しているこの旦那も、五十歩百歩ってことです。

投稿: tak | 2013年12月27日 00:59

庄内様
夜分に返信いただきありがとうございます
>ただ、苦労しているこの旦那も、五十歩百歩ってことです。
日本語の文法に疎い私ですが、あなたの聡明な日本語を見て
誰と誰が、五十歩百歩の関係にあるかがよくわかりました
ありがとうございました!

投稿: いまさらの通りすがりです | 2013年12月27日 01:13

庄内様
通りすがりの分際にもかかわらず
書き込みすることをお許しいただきありがとうございます
>理解する喜びよりもやりこめる喜びを重視しているようですね。
人格者に相応しい聡明なご発言に感動しました
>そんなこと、今さらあなたに言われなくても、誰だってわかりますさ。
私も庄内様のような人格者になれるよう精進したいと思います
ありがとうございました!

投稿: いまさらの通りすがりです | 2013年12月27日 02:05

いまさらの通りすがりです さん:

過分なまでのご丁寧なコメント、大変恐縮です。
ありがとうございます。

投稿: tak | 2013年12月27日 21:02

いまさらの通りすがりです さん:

過分なまでのご丁寧なコメント、大変恐縮です。
ありがとうございます。

投稿: tak | 2013年12月27日 21:02

本当の馬鹿みたいですね

※主語がなくてもわかるそうなので敢えて省いたけど
当然わかりますよね? ですが誤解しないでね
まぁ偉そうに能書きたれてるからわかるよね

投稿: 主語を抜いてみた | 2018年4月10日 20:39

主語を抜いてみた さん:

>まぁ偉そうに能書きたれてるからわかるよね

恐縮ながら、わかりません。

投稿: tak | 2018年4月10日 21:09

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