「ミックス」と「ブレンド」の違い
無印良品のポスターで 「首のチクチクを抑えたタートルネックセーター」というのが気になった。ボディ部分はウールだが、首廻りに「コットンミックス」を使用しているのだそうだ。
なかなかいいアイデアだが、気になったのは、この「コットンミックス」という言い方である。ずいぶん細かい話だけれど。
私が大昔に関係していたウールマークの世界では、ピュアニューウール(新毛 100%)に適用されるウールマークのほかに、「ウールマークブレンド」というのがある。これは私の頃には「ウールブレンドマーク」と言われていたが、今はこの名称になって、新毛 50%以上のブレンド素材に適用される。
もうお気づきと思うが、繊維の世界では混紡のことを普通は「ブレンド」という。「ミックス」という言い方はあまりしないのだ。それで「コットンミックス」という言い方に、少し引っかかってしまったわけなのである。
元々の英語では、"mix" も "blend" も「混ぜる」という意味においては似たようなものだが、ニュアンスが少し違う。どう違うのかというと、"mix" は「混ぜこぜ」だが "blend" は「うまい具合によく混ぜる」というニュアンスなのだ。
だから、コーヒーの世界でも異なった種類の豆の特性を活かし、さらに調和したおいしい風味を出すから、「ミックス」とは言わずに「ブレンド」という。「ミックス」というのは、そこまでのレベルではない。
つまり "mix" というのは、どちらかというと、あまりいいニュアンスではない方向に傾きやすい言葉なのだね。だから、"mixed up" という表現だと、"up" という上昇志向の副詞がついても、元々の "mixed" という単語のニュアンスが増幅される方向に働いて、「頭の混乱した、社会的適応のできない」というような意味になる。
要するに私の言いたいのは、「コットンミックス」ではなく、普通に「コットンブレンド」という言葉を使ってもらいたかったと、ただそれだけのことなのだ。ただそれだけのことだが、「コットンブレンド」と言う方が、ずっと滑らか感が表現されると思う。せっかくのいいアイデアなのに、もったいないことである。
ちょっと深読みすると、日本のコーヒーショップなどでは、安い「ブレンド」と 高い「ストレート・コーヒー」というメニュー構成になっていることが多いので、「ブレンド」という言葉のイメージが低いなんて考えて、目新しい「ミックス」を使おうなんて思っちゃったのかもしれない。
だが、「下手の考え休むに似たり」である。日本の広告とかマーケティングの業界というのは(というか、日本国中かもしれないが)、カタカナ言葉に関する感覚がおかしい。ほとんど "mixed up" 状態なんだと思う。
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コメント
音楽業界で、「○○ミックス」という表現をときどき聞きますが(party mixとかdj mixとか)、そのへんのイメージを狙ったんでしょうか……関係ないかな。
投稿: 山辺響 | 2009年11月26日 11:04
ミックスピザとか、フルーツミックスやミックスベジタブルとかの使い方の時はあまり悪い印象も感じない気もしますね。
個人的な印象だけで言えば、ブレンドはそれぞれの特性を兼ね備えた調和の取れたひとつの形(ブレンドコーヒーとかブレンド米wとか)としての”混ぜる”で、ミックスは個々の存在自体はそのままに寄せて集めた集合体的な”混ぜる”の感覚ですね。
そう言う意味じゃ、ウールならブレンドの方が感覚的にはしっくりきそうな気がします。
投稿: きんめ | 2009年11月26日 13:48
山辺響 さん:
>音楽業界で、「○○ミックス」という表現をときどき聞きますが(party mixとかdj mixとか)、そのへんのイメージを狙ったんでしょうか……関係ないかな。
音楽業界のは、いわゆる 「オムニバス」 なんでしょうけどね。
「オムニバス」 だと、懐古的なイメージになっちゃうから、別の言い方にしてるんでしょうね。
「リミックス」 というのは、また別のお話で、いわゆるレコーディング用語の 「ミキシング」 をし直したということなんだと思います。
投稿: tak | 2009年11月26日 14:12
きんめ さん:
>ミックスピザとか、フルーツミックスやミックスベジタブルとかの使い方の時はあまり悪い印象も感じない気もしますね。
こういう場合は、見た目が均一になるほどには混じり合わないので、「ミックス」 ということなんでしょうね。
>個人的な印象だけで言えば、ブレンドはそれぞれの特性を兼ね備えた調和の取れたひとつの形(ブレンドコーヒーとかブレンド米wとか)としての”混ぜる”で、ミックスは個々の存在自体はそのままに寄せて集めた集合体的な”混ぜる”の感覚ですね。
私も、そういうことなんだと思います。
投稿: tak | 2009年11月26日 14:15
Takさん
しばらくご無沙汰でした。
(私事による多忙でしばらくROMってました)
さて、音楽の場合の【MIX】は、異なる音源(≒別々のレコーディング/トラック)をひとつに纏めるという意味で使われていますね。
蛇足ながら、音楽用語としてのミキサーという語句には【行為者】を意味する場合と【機器】を意味する場合とがありますね。混ぜ合わせるところは一緒なんですが。
私見では、blend:同質異種混合、mix:異質混合という印象があります。
blend teaであれば茶葉という同質大分類内での異種の取り合わせ、というような。
重油の使い方にACブレンドというのがありまして、これは文字通りA重油(軽油に近い、サラサラ)とC重油(コールタールに近い、ドロドロ、A重油より安価)を混ぜて使うものですが、油の混合ということでblendを用いているようです。
ガソリンや軽油といった、(霧化した)燃料と空気が混ざり合ったものを混合気と言いますが、英語ではmixtureと呼んでいたかと思います。液体と気体という異質のものであるからでしょう。これも蛇足ながら、均質に綺麗に混ざることで着火状況が良くなり、完全燃焼に近づきます。詳しい説明は省きますが、近年のクルマがおしなべて昔のクルマより燃費が良く排気ガスも綺麗なのは、燃料マネジメント技術の向上で得られた均質、良質な混合気によるものです。
まあ、mixでも(例外かもしれませんが)上手く混ざってるものもあるのですね。
投稿: 貿易風 | 2009年11月27日 01:08
貿易風 さん:
>さて、音楽の場合の【MIX】は、異なる音源(≒別々のレコーディング/トラック)をひとつに纏めるという意味で使われていますね。
なるほど。
厳密に言えば、「オムニバス」 とは違うんですね。
>私見では、blend:同質異種混合、mix:異質混合という印象があります。
かなり本質的に言えてると思います。
>まあ、mixでも(例外かもしれませんが)上手く混ざってるものもあるのですね。
ホットケーキ・ミックスとか。
おっと、英語では Pancake Mix か。
投稿: tak | 2009年11月27日 12:10
競技の男女混合『mixed match』を思い出しました。
やはり根本では相容れない存在なのでしょうか…。
せめて交合と…(以下検閲により削除)
投稿: 乙痴庵 | 2009年11月27日 15:48
乙痴庵 さん:
>競技の男女混合『mixed match』を思い出しました。
ハッスルのインリン様を思い出しました ^^;)
なにやら、ギャラの未払いでもめたようですが、解決したんでしょうか。
投稿: tak | 2009年11月27日 16:46
ミックスと言えば、ペットの雑種がいつの間にかミックスと言い換えられるようになってしまいましたね。
立派な和製英語ですがすっかり定着してしまいました。
最近は複数の猫のことをニャンズなどという言い方もはやっていて、「うちのニャンズ」みたいな表現をしているブログもよく見かけます。ただ、「うちのニャン」という言い方がベースになっているせいか、不思議とあまり違和感がありません。
「ワンズ」は個人的にはまだ何となく違和感があるんですけど、こちらも市民権を得てきているみたいですね。
投稿: ぐすたふ | 2009年11月29日 09:49
ぐすたふ さん:
>ミックスと言えば、ペットの雑種がいつの間にかミックスと言い換えられるようになってしまいましたね。
へぇ、そうだったんですか。
Crossbred という言い方が普通かなと思い、辞書で調べたら、Mixed breed という言い方もあるみたいですね。
この方面はうといので、よくわかりませんが、Cross breed というと、「交配」 による品種改良という意味でも使われてませんかね。
そうか、いにしえの 「ワイルドワンズ」は、「野犬」 という意味だったのか (と、ボケる)
投稿: tak | 2009年11月29日 22:59
>Crossbred という言い方が普通かなと思い、辞書で調べたら、Mixed breed という言い方もあるみたいですね。
ありゃりゃ、となると必ずしも和製英語とは言えませんね。さすがに mix では通じないだろう、と思ってググってみたら Terrier Mix Puppy なんていう表現が普通にありました。しかもカリフォルニアのサイトです(-.-
犬の雑種は mongrel だと思っていたのですが、思い込みは恐ろしいですね。
気が付いてよかった(^^; ご指摘ありがとうございます。
>そうか、いにしえの 「ワイルドワンズ」は、「野犬」 という意味だったのか (と、ボケる)
自分の場合、ワンズと聞くと真っ先に思い浮かぶのは麻雀だったりします(最近はマンズ派のほうが多いのかもしれませんが…)。
投稿: ぐすたふ | 2009年11月30日 18:20
ぐすたふ さん:
>ありゃりゃ、となると必ずしも和製英語とは言えませんね。さすがに mix では通じないだろう、と思ってググってみたら Terrier Mix Puppy なんていう表現が普通にありました。しかもカリフォルニアのサイトです(-.-
でも、単に "mix" では通じないでしょうね。
>自分の場合、ワンズと聞くと真っ先に思い浮かぶのは麻雀だったりします(最近はマンズ派のほうが多いのかもしれませんが…)。
私、麻雀は全然知らないので、ググってしまいました ^^;)
投稿: tak | 2009年12月 1日 00:31
はじめましてです。
面白い記事ですね~
おっしゃる通り、ブレンドの方が格調高い印象を受けますね。
服飾業界などイメージを優先しそうなところで
あえてミックスを選ぶというのは理由が気になるところです。
やっぱり、カタカナ言葉に関する感覚がおかしいのかな?^^;
音楽でいうオムニバスは
複数の曲を1枚のCDにまとめるような意味ですよね?
曲名に~ミックスなんて付く場合は、
別々の曲だったものを一つにまとめたり、
ある曲に新しい楽器や、異なる演奏手法をとりこんでみたりというやり方で、結局新しい1つの曲にしてしまうことですね。
(制作過程では音源を1つにまとめるだけの意味なのでしょう)
音楽を作るクリエイティブな人たちは、
オリジナルに敬意を払ってブレンドとは言わないのかなぁ
なーんて思いました。
投稿: IfThenElse | 2009年12月 5日 21:02
IfThenElse さん:
ようこそ。
>音楽でいうオムニバスは
>複数の曲を1枚のCDにまとめるような意味ですよね?
映画の場合だと、複数のストーリーを一本の映画にまとめたものですね。
>曲名に~ミックスなんて付く場合は、
>別々の曲だったものを一つにまとめたり、
>ある曲に新しい楽器や、異なる演奏手法をとりこんでみたりというやり方で、結局新しい1つの曲にしてしまうことですね。
と、そのような手法が一つのジャンルとして確率してしまったようですね。
>音楽を作るクリエイティブな人たちは、
>オリジナルに敬意を払ってブレンドとは言わないのかなぁ
>なーんて思いました。
というか、音楽はブレンドしようがないですね ^^;)
投稿: tak | 2009年12月 5日 23:00
どうもです。
おぉ、そういえばオムニバス映画なる言葉を聞いたことがありました・・・
が、見たことないですね~~
>というか、音楽はブレンドしようがないですね ^^;)
やっていることは大して変わらなくても、
誰かがこれはミックスじゃなくてブレンドだ!
と主張したら、
音楽の場合はなんとなく受け入れてしまいそうな自分が居ますw
投稿: IfThenElse | 2009年12月 7日 21:23
IfThenElse さん:
>おぉ、そういえばオムニバス映画なる言葉を聞いたことがありました・・・
>が、見たことないですね~~
その昔、「世にも怪奇な物語」という超豪華オムニバス作品がありました。
どんなに豪華かというと、これもんです ↓
第1話『黒馬の哭く館』
監督:ロジェ・ヴァディム
出演:ジェーン・フォンダ、ピーター・フォンダ
第2話『影を殺した男』
監督:ルイ・マル
出演:アラン・ドロン、ブリジッド・バルドー
第3話『悪魔の首飾り』
監督:フェデリコ・フェリーニ
出演:テレンス・スタンプ
見応えありすぎて、「ごちそうさま、もうたくさん!」という感じでした。
投稿: tak | 2009年12月 8日 15:07