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2009年12月12日

『唯一郎句集』 レビュー #86

さて、今日で 12月の第2週も終わる。早いものである。年賀状を作らなければならないし、年末進行の原稿も書かなければならない。

あちこちから喪中葉書が相次いで届く。私の年頃だと、親が 80歳を越してしまう時期なので、毎年誰かの親が亡くなる。唯一郎が死んだのは 40代だったが。

さて、さっそくレビューである。改めて確認しておくが、ここに挙げられているのは、唯一郎がまだ 20代の頃の作品である。唯一郎は家業を継いでからはどんどん寡作になっていったので、盛んに句を作っていた頃の最終段階ともいえる時期である。

月の出風が吹いて花畠花屋の娘

このページの 3句は秋の頃の句なので、花畠に咲いているのも秋の花だろう。昔のことだから、菊とか桔梗とかだったのではなかろうかと思う。

その花畠の夕暮れ。東の空に満月が出て、秋風が吹く。花の色が宵闇に褪せていく。そんな中で、花屋の娘が花の吟味をしている。ほっそりとしたシルエットが美しく見える。

風がことしの稲穂をならしている百姓の婆さん

「ことしの稲穂」 というのが、いかにも米どころに住む人間の感性である。ことしの稲穂が風に揺れ、さわさわと鳴る。

百姓の婆さんが畦道に腰掛けて休んでいる。すぐに稲刈りが始まる。昔のことだから、稲刈りは家族総出の作業である。婆さんもまだまだ働くつもりで、頼もしい顔つきである。

海女の子よ藪から顔を出して秋の海原

庄内砂丘を昇っていくと、松の防砂林を抜け、海が目前になったあたりは小さな藪になっている。

その藪から小さな子が顔を出してこちらを見ている。夏の間、海で泳ぎっぱなしだったらしく、真っ黒に日焼けした顔だ。波打ち際では海女が海草獲りの仕事をしている。

日本海の秋の海原は、冬とは違い、まだまだ静かである。

本日はこれぎり

毒を食らわば皿まで・・・本宅サイト 「知のヴァーリトゥード」へもどうぞ

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