無抵抗で殴られることの陶酔感
大分前のことだが、西武池袋線の電車内で喧嘩を目撃した。いや、喧嘩というのは当たらないかもしれない。なにしろ、片方が一方的に殴り、殴られる方はただ耐えている。
こりゃまずいと思い、助けに入ろうとして近づいていったところ、どうも様子がおかしいことに気が付いた。
一方的に殴られたり頭突きをくらったりしている方の顔は血にまみれている。額が切れてしまっているようだ。しかし、どうみてもおかしい。何がおかしいかというと、一方的に殴り続けている方が弱そうで、ただ耐えている方がずっと強そうだ。
こんな状態で助けに入ったら、実は強いのであろう殴られている方に失礼な気がして、ちょっと躊躇してしまった。なんだか、余計なことをしてしまうことになるんじゃあるまいかという気がしてしまったのだ。
ただ、黙ってみているわけにも行かないので、「おい、いい加減にしとけよ!」と声をかけると、殴り続けていたやつは体力と緊張感の限界を超えてしまったようで、駅に止まったのを幸いに、逃げるように降りていってしまった。
血だらけのままで立っている兄さんに、私は声をかけた
「一体どうしちゃったの?」
「はぁ、変な因縁を付けられたんですが、自分は空手の有段者なんで、手出しできないんです。手を出したらただじゃ済まなくなりますから」
「手を出せないのはわかるけどさぁ、防御ぐらいはしたらどうなの?」
「いやぁ、あんなのは、防御するまでもないっす。ちっとも痛くないですから」
いやはや、それはそうかも知れないけれど、電車の中で顔面血まみれで立っていられたら、周りが穏やかじゃいられない。そこまで考えてもらいたかったところだ。当人としては、痛くもないし、多少の流血も全然平気なのかもしれないが。
こんなことを急に思い出してしまったのは、例のテレンス・リー氏の「ヨッパライにボコられた」事件の記事を読んでしまったからだ(参照)。テレンス・リー氏も 「「私が手を出せば、相手が危険なことになっていた」 なんてことを言っているようなのである。
巷では、「テレンス、本当は弱いんじゃないの?」なんて疑念が出ているようなのだが、それは多分、間違いだ。テレンス氏の肩を持つわけじゃないが、彼は本当に強いのである。弱かったら、逃げ出してしまうところなのである。逃げ出さずに、ただ殴られ続けたというところが、強い証拠なのだ。
ただ、空手をやって強い人って、妙に殴られることを耐えることに関して、自己陶酔してしまうところがあるんじゃないかと、私は疑っている。多分、本当にそれほど痛いとも思っていないんだろうけど、だからといって、それに耐え続けても、周りからの理解は得られないだろうし、異様なことに思われてしまうんじゃないかと、私は思ってしまうのだよね。
最後に断っておくが、フツーのよい子は、殴られっぱなしになんかならないように。頭と首がいかれてしまうから。
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コメント
私の友人にも少林寺拳法の有段者がいますが、ある程度以上の段位を持つ人は地元の警察に登録されると言っていました。任意か法的拘束力があるのかは知りませんが……。凶器扱いなんでしょう(笑)
しかしまぁ、おっしゃるとおり、流血しない程度には防御していただきたいですね。血を見て卒倒しちゃう人だっているんだから……。
現場にいたわけじゃないから分かりませんけど、殴り続けていた方は後で大変なことになっているかもしれませんね。訓練していない人間が鍛えている奴を殴り続けたら、指や掌の骨、かなり行っちゃっているんじゃないかと。
投稿: 山辺響 | 2009年12月15日 09:29
山辺響 さん:
>流血しない程度には防御していただきたいですね。
まあ、顔面って、ちょっとしたことで流血しやすいですし、自分では顔面流血に気付かない(見えないので)ということもあるのですが、それでも、やっぱりね …… ^^;)
>殴り続けていた方は後で大変なことになっているかもしれませんね。訓練していない人間が鍛えている奴を殴り続けたら、指や掌の骨、かなり行っちゃっているんじゃないかと。
指の骨折ぐらいは、しているかもしれませんね。
まあ、そんなような状況に遭遇しないように気を付けましょう。
投稿: tak | 2009年12月15日 19:06