『唯一郎句集』 レビュー #87
尊敬する I さんに「最上川舟歌の四季」という CD をいただいた。正調最上川舟歌の後に、フラメンコ・ギターと尺八のデュエットで、春夏秋冬バージョンの変奏曲が続く。
I さんは、先月末にアルケッチャーノで食事をした(参照)のがきっかけで、すっかり庄内びいきになられたようだ。
この CD を iPhone に入れて聞きながら、唯一郎句集のレビューである。今回のレビューは 4句。見開きの右側のページに 3句、左側に 1句という所載なので、まとめて 4句のレビューである。
朝乏しい甘藷をはかるおそい南瓜の花
「甘藷」はサツマイモのこと。朝、あまり量の多くないサツマイモの目方を量っていると、遅成りの南瓜の花が目についたということだろうか。
カボチャの花は鮮やかな黄色。晩秋だけに、これから成る実はそれほど大きくはならないかもしれない。
あが身よけて聞く秋風のぬけてゆく樹々
ずいぶんシュールな句である。はや吹き始めた秋風の樹々の間を抜けて行く音を聞いている。「あが身よけて」 というのは、風が自分の身をよけて吹いていくのか、あるいは別のシュールなイメージを醸し出すためのレトリックなのか。
児ら貯金箱をつくりその屋根を赤くぬりさまざまな虫なく夜
こちらはわかりやすい。子供らが工作で貯金箱をつくり、その屋根を赤く塗っているというのである。夏休みの工作の宿題でもあったのだろうか。その工作をしていると、庭から様々な虫の鳴き声が聞こえる。
晩秋から秋にかけて、夜が長くなりつつある頃の独特の色合い。
ことに朴の葉は秋の日だまりの中にゆれずも
朴(ホオ の木の葉は大きい。40センチ近いものもあるという。秋の日だまり、風がほとんどないので、木の葉は揺れない。ことにホオの木の葉は大きいので、揺れずに垂れ下がっている。
夏から秋に向う変化の中で、動かないものがある。それをホオの木の葉の中に見出している。
本日はこれにて。
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