でっごぐさんのとしや(大黒様の歳夜) #1
庄内には「でっごぐさんのとしや」(大黒さんの歳夜)という行事がある。鶴岡あたりでは上品に「大黒様のお歳夜」なんて言うらしいが、酒田の我が家ではワイルドに「でっごぐさんのとしや」と言っていた。
それとも、奈良時代の発音をしていた私の祖母 (参照) が特別訛っていたのかなあ。
「でっごぐさんのとしや」 は明日、12月 9日の夜の行事である。もっとも、特別な神事を執り行うわけではなく、ましてや大黒舞を舞ったりするというわけでもない。この日の夜が大黒様の年越し(大晦日)であるとして、特別のごちそうを大黒様に供える。それだけの行事である。
特別のごちそうとは、ハタハタの田楽とまっか大根。これだけは必須条件で、あとは納豆汁とか膾(なます)とかを適当に加えるようだ。そもそも家庭内の行事だから、必須条件さえ満たせば、あとは案外自由度が高い。
ハタハタは冬の日本海で捕れる魚で、小さくて食べる身の部分も少ないのだが、とろっとした食感がよくて、なかなかいける。これに田楽みそを添える。何でハタハタなのか知らないが、何しろ、漢字では「さかなへんに神=鰰」と書くぐらいだから、特別な意味があるのだろう。
まっか大根とは、別に赤蕪みたいに赤い色をしているわけではない。先が分かれて二股になっている大根である。このまっか大根は、調理しないで、生のそのままの形で供えるということからも、その形状に意味があるというのは明らかだ。そこに子孫繁栄などの意味を見いだしているのだろう (わかるよね?)。
まっか大根がつきものという根拠には、おもしろい伝説もある。ざっといえば、大国主命がまっか大根のおかげで胸やけから逃れたという言い伝えなのだが、詳細はここで書くと長くなるので、こちら を参照ねがいたい。この行事の詳しい知識も仕入れられる。
ただ、この伝説は理に落ちすぎて、後代の作という感じがする。やはり子孫繁栄の方が根元的な意義だろう。私個人としては 「でっごぐさんのとしや」 といえば、ハタハタを食う印象の方が強いのだが、本来の意味合いでは、まっか大根の方が重要のようだ。ハタハタは、冬の日本海側のローカル・ルールかもしれない。
ちなみに、「まっか大根 は「まっかん大根」とも言われる。あの「最上川舟歌」に出てくる 「まっかんだいごの塩汁煮」というのはこれのことである。
さて、前段の部分でかなり長くなってしまったが、私が一番の問題としたいのは、どうして「でっごぐさんのとしや」が 12月 9日なのかということである。これがどうしてもわからない。これに関する確固たる文献も見たことがない。
どうでもいいことかも知れないが、私はこうした些細なことが気になってしまう性分なのである。気になって眠れなくなるというわけじゃないが、常に心の片隅に引っかかっている。で、この際だから徹底的に調べてみようと、インターネットを検索しまくってみて、ある程度の見当がつくところまでは調べがついた。
ただ、長くなってしまうので、気を持たせるようで恐縮だが、続きは明日ということに。行事の本番も明日だし。
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