『唯一郎句集』 レビュー #85
12月最初の日曜日。今年の日曜日は、あと 3回しかない。「3回もある」と思うことができれば、余裕たっぷりなのだが。
さて、今回のレビューはたったの 2句である。前回が初秋の句で、今回もそのようだから、時系列的な連続性はあるもようだ。ただ、同じ年の秋という保証はない。
さて、さっそくレビューに突入する。
秋口のくらしよ砂利舟きしみ過ぎる
これは多分、家の中にいて作った句だ。時分は宵。電球がついて、部屋の隅のほの暗さに、秋を感じる。
新井田川を行き来する砂利舟の砂利の重さに耐えかねてきしむ音が聞こえる。その音はゆっくりと通り過ぎる。そして次第に小さくなって消えていく。残るは、部屋の隅のほの暗さのみ。
むら肝冷ゆるに目の前鶏頭立ちて赤し
「むら肝」 は五臓六腑のこと。24回目のレビュー (参照) に
じつとして母の炊事の音聞いている我がむらぎもも病める如し
という句がある。また鶏頭も時々登場する。唯一郎得意のモチーフのようだ。
秋口の冷え冷えとした日、目の前には鶏頭の花が赤く立っている。内蔵を冷やしてしまったようで腹具合がよくない。腹の中に収まっている内蔵が、鶏頭の花の形と重なるような気もする。
今回はこれにて。
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