青木真也 対 廣田瑞人 の惨劇を廻る冒険
大晦日の 青木真也 対 廣田瑞人 の試合が話題になっている。青木がわずか 77秒で廣田の右腕を骨折させ、試合後に相手を侮辱するパフォーマンスをしたという試合だ。
この試合後の青木の行為が、スポーツマンシップに反するとして非難されている。確かに、どう見ても美しい行為ではない。
私はこの試合を大晦日の夜にテレビで見て、青木のあの行為が生じる以前の問題として、3つの疑問をもった。
- 試合の裏で、何か青木が本当に怒ってしまうような事情でもあったのだろうか。
- 廣田はどうしてあんなにも寝技の基礎がないのだろうか。
- レフリーはどうして止めなかったんだろうか。
この 3つの疑問は、まだ少しも晴れていない。試合の裏の事情は、関係者以外にはわからないことだ。ただ、試合後のインタビューで青木が 「笹原さんが『刺しに行け』って言って、しっかり刺せたんで(技名は)笹原圭一2010です」 なんてコメントしているのが気にかかる。
青木の言っている「笹原さん」とは、青木をライト級チャンピオンと認定している格闘技団体 Dream のプロデューサーである。そのプロデューサーが「刺せ」と、つまり、超ガチンコでつぶしに行けと指示したというのである。確かに、事前の煽りの段階で笹原氏がそう言ったらしい。
笹原氏がこの件に関して公式にコメントしていないので、その真意がどんなことだったかはわからない。もしかしたら、青木が笹原氏の演出オーバーな煽りに過剰反応してしまっただけなのかもしれないが、試合直後の青木の興奮ぶりを見ると、何もなかったとは思いにくい。ここでは「さっぱりわからない」とだけ言っておこう。
2つ目の疑問。廣田の寝技の防御が下手すぎる点である。寝技のスペシャリスト、青木と対戦するなら、どうして最低限の寝技の防御法ぐらいは練習してこなかったのだろうか。寝技を甘く見すぎである。
最初のタックルであっさり左脚を取られてしまうのだが、あれだけ完璧に足を取られる前に、もっとしっかりと上からがぶって切ってしまわなければならなかったところである。タックルに対する防御がなっていない。
あまりがぶり過ぎたら、横になって寝技に持ち込まれると思ったのかもしれないが、きちんと切って上になるのと、中途半端に立とうとして尻もちをつかされるのと、どっちがいいか、それほど考えなくてもわかるだろう。
結局コーナーを背にして尻もちをつかされる。完全に横にされていないだけ、まだ大丈夫と油断したのかもしれないが、あれよあれよという間に、右手首を自分の背中越しに青木の右手でホールドされてしまう(ビデオの 1分過ぎあたり)。これが最後の腕折りにつながるのだが、信じられないほど簡単に取られすぎだ。
自分の背中越しに右手を極められるなんていう屈辱的な状況を避けるためには、右手をマットにしっかりついて踏ん張らなければならないし、さらに取られたとしても今度は腕を伸ばし気味にしながら体を右に反転させ、極められるのを防がなければならない。
ところが、体を反転させる前に右足まで妙な角度で易々と相手の脚に挟まれて、身動きを封じられてしまっている。その後にしても、左手で下から逆スウィング気味に殴ろうなんてことにこだわっている。
そんな無駄で定石と逆の動きをするから、右手は自動的に「どうぞ折ってください」状態に、どんどん追い込まれている。あの時点で、試合は実質的に終わっていたのだ。
最後に、レフリーの判断の悪さである。あの試合の後半で最も危険な状態にあるのは、青木に極められた廣田の右腕なのに、レフリーはそのことに最後の最後まで頓着していない。コーナー際の展開で死角に入っていたとする人もいるが、ビデオの 1分 50秒目あたりから約 10秒間、危険な角度寸前まで極められた廣田の腕が見えていたはずだ。
その後の展開で、さらに腕の角度が危険な状態になっていることは容易にわかるはずなのに、レフリーは見当違いの方向ばかり注目している。どうして廣田の背後に目をやろうとしないのだ。あのレフリーは格闘技の素人か、そうでなければ、わかっていて腕折りをやらせた確信犯かのどちらかである。
というわけで、私はあの残劇には「何らかの裏の事情」「廣田の寝技が下手すぎたこと」「レフリングがおかしかったこと」の、3つの要素が絡んでいると思う。1番目は想像に過ぎないが、残り 2つは誰が見ても明らかなことだ。
そして、試合後の青木の行為についてだが、まあ、人の腕を意識して折るなんていうのは、あのくらいの「狂気モード」に入っていないと、そうそうできることじゃないとだけ言っておこう。昔、UWF の試合で佐山の肩を脱臼させてしまった藤原は、リング上で柄にもなく男泣きに泣いた。私はそれをリングサイドで観戦していた。
つまり、ねらって相手の腕や肩を折ったり脱臼させたりするというのは、それくらい尋常なことじゃないのだ。繰り返しになってしまうが、あの試合は青木を 「狂気モード」 に入らせてしまう何かがあったのだと、思わざるを得ないのである。
【追記】
よく調べてみるとあの試合は、組み合わせ決定の段階でいろいろすったもんだがあったようだ。青木自身は直前まで大晦日の川尻建也とのタイトルマッチに合意していて、その準備を進めていたところ、いつの間にかポリティックな事情で戦極との対抗戦にすり替わっていたということのようだ。
さらに、22日の記者会見で、川尻との対戦が決まった横田一則がかなり言いたいことを言ったことに青木がぶち切れかかって「黙れよ!」と怒鳴っていたらしい。まあ、かなり怒っていたことは確かなようだ。(参照)
ちなみに、言いたいことを言っていた横田は大晦日の試合で、川尻にいいところなく敗れている。
| 固定リンク
「スポーツ」カテゴリの記事
- 例の小学生空手大会での一件で、遅ればせながら一言(2024.11.14)
- パリ五輪、SNS で「誹謗中傷」することの恥ずかしさ(2024.08.07)
- 野球とサッカーのイメージを比べてみると(2023.05.17)
- 大相撲番付の不思議な伝統(2023.01.23)
- ワールドカップ、既に心は 4年後に(2022.12.06)
コメント
始めまして。
blog拝見させて頂きました
最初は私が来ているジャケットの
ラクーンについて調べている時に
このblogを知りました!
かなり沢山の知恵を貰いました
ありがとうございます。
読んでいると
生まれていないのに
なぜか懐かしいような
内容のものも有り
とても気に入りました。
また見に来ますっ(*´ェ`*)
投稿: ゆう | 2010年1月 4日 04:18
ゆう さん:
コメントありがとうございます。
>最初は私が来ているジャケットの
>ラクーンについて調べている時に
>このblogを知りました!
タヌキとラクーンの件ですね。
https://tak-shonai.cocolog-nifty.com/crack/2007/11/post_3985_1.html
あれは要するに、品質表示ラベルに 「タヌキ」 あるいは 「毛皮」 と書けばいいだけのお話で、
日本人の英語崇拝の馬鹿馬鹿しさを表わしていると思います。
投稿: tak | 2010年1月 4日 10:37
謹賀新年。今年も、楽しい話題をお願いいたします。
廣田ですが、北岡相手のときは、タックルに対して、
良く対応していました。なぜ今回、こんな結果になったのか?北岡の対戦を覚えている私としては納得できないのです。でも、負けてしまったのは事実。タクさんが指摘することは、今回の試合に関しては、その通りとしか、言いようがありません。
しかし、今回の試合を見て、最近の勝負事に対して、敗者に対する勝者の思いやりがなくなっている日本が気になります。相手がいなければ、勝負にもならない。敗者あってこその勝者。日本の武道の良き面が、どんどんなくなってるのは、日本の政治、社会にも問題があるという事でしょうか。
青木の態度を見て、悲しくなるのと同時に、嫌悪感を懐きました。
今回の件で、格闘技がプロレスのように、凋落してしまうのではないかと、危惧しています。
投稿: ヒロ | 2010年1月 4日 11:16
ヒロ さん:
>廣田ですが、北岡相手のときは、タックルに対して、良く対応していました。なぜ今回、こんな結果になったのか?北岡の対戦を覚えている私としては納得できないのです。
私は廣田の試合を見たのは今回が初めてなので、「こいつ、寝技が全然わかってないやつだなあ」と思って見ていました。
あるいは、青木が廣田の防御まですべて封じていたのかもしれませんが。
>青木の態度を見て、悲しくなるのと同時に、嫌悪感を懐きました。
確かに、あの態度は誉められるものではありませんが、青木、初めからかなりムカついてたんだなあと思います。
記者会見の様子を見ても、相当ふてくされてますね。
川尻も、しゃべるのも馬鹿馬鹿しいというほどふてくされてます。
http://www.youtube.com/watch?v=ft5OXjKKn1M
このあたりから、ちょっと危険な匂いがありますね。
投稿: tak | 2010年1月 4日 12:46
貴blog、興味深く拝見しました。
青木、はたして興奮していたから、あの4文字ポーズを採ったのか…
いささか疑問です。
むしろ、ひじょうに冷静で、だからこそのポーズだったのではないか。
というのも、「折りに行く」と考えて折ったこと、
その過程はあまりに冷静です。
しかも試合後の「刺しに行けと言われたから…」は、かつて
別の格闘家が言ったことのパクリですし。
たしかキックの山本元気の発言だったような…
わたしにとっては、青木という存在、さらに興味深くなりました。
投稿: fukun | 2010年1月 4日 15:09
fukun さん:
>青木、はたして興奮していたから、あの4文字ポーズを採ったのか…
試合後は確実に興奮してましたよ。
ガクッという衝撃とともに腕を折っちゃってから、一挙にアドレナリン出まくっちゃったのかもしれません。
>というのも、「折りに行く」と考えて折ったこと、その過程はあまりに冷静です。
私は試合前から試合中に到るまでの青木が 「興奮状態にあった」 とは一言も言っていません。
むしろ、青木という人は、怒ると冷静になるタイプなのだと思います。
記者会見での発言を聞いても、テキストとして残っているのは、アイロニカルなまでのクールな言葉が多いし。
彼は 「狂気モード」 と 「冷静」 とを共存させられるタイプでもあるようです。
投稿: tak | 2010年1月 4日 16:55
罵詈雑言プロレスのほうが、見ていて、まだ清々しい。
アタクシやっぱりプロレスでいい。十分です。
相手の肩口に手を置いて、『さぁ、ボディースラムかけて頂戴。』と合図しますから。
投稿: 乙痴庵 | 2010年1月 5日 13:16
乙痴庵 さん:
>アタクシやっぱりプロレスでいい。十分です。
>相手の肩口に手を置いて、『さぁ、ボディースラムかけて頂戴。』と合図しますから。
コーナーポストからのダイビング攻撃は、何はなくとも受け止めて上げなきゃいけないし。
四の字固めは、最初の 2~3回はキックで防いでも、4回目ぐらいにはちゃんと受け入れなきゃいけないし。
投稿: tak | 2010年1月 5日 17:17
結果的に折れたのではなく、本当に折る気で折っていたのであればあまりにもひどすぎますし、いかなる理由があっても容認されるべきではないと思います。認めてしまえば、相手の団体の選手が今後の試合で青木選手の腕を決めて、青木選手が意地を張ってタップせず、審判が止める前に腕を折られてしまう――みたいなことになっても、それもありになってしまいます。
そんなことが実際に起こったら、観ている人はどんな気分になるんでしょう。
現実にはありえないと思いますが、
http://www.daily.co.jp/ring/2010/01/03/0002617440.shtml
なんかを見ていると、ひょっとして、と思ってしまいます(この発言自体は単なるパフォーマンスでしょうが…)。
投稿: ぐすたふ | 2010年1月 5日 18:47
ぐすたふ さん:
>認めてしまえば、相手の団体の選手が今後の試合で青木選手の腕を決めて、青木選手が意地を張ってタップせず、審判が止める前に腕を折られてしまう――みたいなことになっても、それもありになってしまいます。
大晦日の K-1 を見るにつけ、レフリングが打撃に関してはナーバスで、関節技には無頓着すぎる気がしました。
三崎和雄 対 メルヴィン・マヌーフの試合は、私には少し止めるのが早すぎたように思いました。
あのままメルヴィンがパウンドで KO したかもしれませんが、もしかしたら、三崎が相手の脚をホールドして、顔をボコボコに腫らしながらも逆転していたかもしれません。
打撃に関してあれだけ早めのストップをするのに、関節技には無頓着すぎるというのは、私には理解できません。
あれだけ完璧に逃げられない状態で右腕が極められてしまったのだから、もうレフリーの判断でストップすべきでした。
あの試合を教訓として、今後は関節技に関しても脱臼だの骨折だのという事態に至る前に、レフリーの判断でストップしてくれるように望みます。
問題は、関節技の場合、腕十字のように逆関節の場合は瞬時にタップがとれますが、腕ひしぎのように、曲がる方向に限界まで曲げるという技だと、レフリーがストップをかけても、負けた方が 「俺はタップしていない、まだ耐えられた」 と主張することが考えられるということです。
それだけに、レフリーには関節技をきちんと見る目を養ったもらいたいと思います。要するに、惨劇に到る前に、試合を止める技術をもってもらいたいのです。
それには、自分の体で 「痛み」 を知るのが一番ですので、レフリーも時々スパーリングに参加すべきです。
投稿: tak | 2010年1月 5日 19:47
ところで残劇って何でしょう?
辞書で引いても出てこないし、検索してもコレというものが出てきません。
惨劇(さんげき)の訛りでしょうか?
投稿: 夜の指揮者 | 2010年1月 5日 20:09
夜の指揮者 さん:
ありゃ、本当だ。
頭の中で 「残酷」 の 「残」 の字が浮かんじゃってたようです。
誠に失礼しました。修正しました。
ご指摘、ありがとうございます。
今後ともよろしくお願い致します。
投稿: tak | 2010年1月 5日 20:45
廣田は寝技下手ではありませんよ。
でなきゃ北岡の猛攻を凌げるはずがありません。
青木の極めの強さがかなり目立っていますが、以前からテイクダウン能力が非常に高く、その後の脚を使ってのコントロールも非常にうまいです。
私の見解では、テイクダウン→ポジショニング→サブミッションのようなオーソドックスな寝技の動き(今回で言えばマッハ対郷野のような)には対応できるが、青木のまとわりついて直接極めにかかる変則サブミッションには対応できなかったのではないかと思っています。
試合後のアレは…まあ残念ですね
投稿: シャオリン | 2010年1月 6日 01:57
仮にも打倒極を主にする修斗のトップランカーだったのだから寝技は素人では有りませんよ廣田氏は。廣田は北岡同様青木のタックルを腰を落として切ろうとしていました。青木が上手いのはコーナーまで押し込んでから足を狩っていたんですね。これをやられるとどんな腰の重い選手でもテイクダウンされてしまいます。廣田が下手なんじゃなく青木のタックルが上手いんです。北岡の様なフィジカルに頼ったテイクダウンとは技術が全然違いますよ。北岡自身青木には勝てないと言ってますからね。廣田が寝技下手に見えてしまうくらい青木が凄いという事です。なので廣田が寝技が下手という認識は違うと思います。寧ろ青木のテイクダウンの技術、寝技の技術を誉めるべきでしょう。試合後の行為に関しては同意ですね。裏で何か無ければあんな非常識な行為は有り得ないです
折った事に関してですが、全てのグラップラーは折るつもりでやってます。じゃないと極められないし、関節はちょっとでもズレると極まりません。一瞬極まったでも迷いが生じるとズレる時が有ります。しかも関節はかなり体力を消耗します。タップを待ってる余裕など無いのです。ですから青木の最初から折るつもりというのは別に普通な事なんですよ。廣田がタップせず、セコンドもタオルを投げず、レェフリーも止めないなら折るしか無いです。だから折った事に関しては青木に非は無いです。問題は試合後の侮辱行為だけなのです
投稿: 姫川勉 | 2010年1月 6日 06:09
シャオリン さん:
>私の見解では、テイクダウン→ポジショニング→サブミッションのようなオーソドックスな寝技の動き(今回で言えばマッハ対郷野のような)には対応できるが、青木のまとわりついて直接極めにかかる変則サブミッションには対応できなかったのではないかと思っています。
なるほど。
確かに、廣田は完全に戸惑ってますね。
青木の動きはものすごく無駄がなくて、しかも驚くほど理にかなっているし。
投稿: tak | 2010年1月 6日 08:44
姫川勉 さん:
>青木が上手いのはコーナーまで押し込んでから足を狩っていたんですね。これをやられるとどんな腰の重い選手でもテイクダウンされてしまいます。
なるほど。コーナーというもののある試合場でやっさもっさやったことのない (畳の上しか知らない) 私には、これは未知の技術でした。ご教示ありがとうございます。
しかも、1ラウンドの腕の筋肉疲労のない時間帯で思い切り足をすくってますね。
たしかに、青木の技術と戦略はすごいです。
つまり、廣田の寝技が幼稚だったのではなく、青木がうますぎたということのようですね。
>折った事に関してですが、全てのグラップラーは折るつもりでやってます。
言い方の問題は別としても、それは確かにそうでしょうね。
関節技が極まりきれないケースというのは、技術不足とともに、「折ってでも極めてやる」 という意志がちょっとだけ弱かったんじゃないかと、思っています。
貴殿のおっしゃる 「一瞬極まったでも迷いが生じるとズレる時が有ります」 というのがそれですね。
相手も必死ですから、少しでもずらそうとしますからね。
>廣田がタップせず、セコンドもタオルを投げず、レェフリーも止めないなら折るしか無いです。だから折った事に関しては青木に非は無いです。
それだけに、レフリーがきちんと止めてもらいたかったと、私は思います。
それから、セコンドがタオル投入しなかったのも、確かに問題ですね。
>問題は試合後の侮辱行為だけなのです
その通りだと思います。
ただ、あのようなちょっと異常な事態になった直後なので、私としては、きちんと謝れば、それ以上の責めはしたくないですね。
本文で触れた、「藤原の男泣き」 の青木バージョンが、あの行為だったんだと思います。
まあ、藤原の場合は、相手の佐山が盟友で、青木の場合は 「むかつく相手」 だったという違いにもよるんじゃないかと思っています。
余談ですが、この記事をアップするとき、「もしかしたら荒れるじゃなかろうか」 と、ちょっとだけ心配していたんですが、一つ前のシャリオンさんや姫川勉さんのようなハイレベルの真摯なコメントをいただいて、非常にありがたく思っています。
投稿: tak | 2010年1月 6日 09:02
「折れたのは仕方ない」という人が多いですが、それはあくまで時と場合によるんですよ。私は仕方ないなんて微塵も思っていません。あの骨折は青木の感情から生まれたものです。
あの試合、廣田は青木の寝技に序盤からずっと抵抗できていませんでした。誰しもあの状態から体を抜くのは無理と思ったでしょう。
だからこそ、負けが決まってもタップしなかった廣田がその部分では非難されているのです。
しかし、廣田はあんな風に腕を取られたのは恐らく初めてです。最終体制になった後に頭の中でどういう動きをすれば逃げられるか考えたはずです。
考えてる段階だったのです。
ようするに、青木は早まったのです。
相手を殺すつもりだと言う桜庭や、吉田でも、極めた後、ほぼ必ずレフリーを見ます。それは「もう極めてるけど、止めないの?」という合図です。
その後、徐々に深くしていき、相手がタップするという展開が主です。
だがしかし、青木はレフリーを見ません、廣田がタップしないのでレフリーは青木が決めかねてると、判断したのです。
レフリーには、当然見えない箇所もあります。
そういう場合、選手が教えなければいけないのです。
納得できないでしょうか。
では、吉田なら折っていたと思いますか?
あれは、青木だから起こった、
青木が起こした骨折なのです。
廣田は、確かに判断が遅すぎました。
だが遅すぎただけなのです。
残り時間が迫っていたでしょうか?
いいえ、青木が早まっただけです。
彼が普通じゃないのは、試合後の中指でお分かりだと思います。
悔しいことに青木を裁くのは難しいですが、私はもう彼の試合は絶対見ません。
心技体で一番大事な「心」がない者を格闘家だなんて思いません。
投稿: 紹運 | 2010年1月 7日 01:52
紹運 さん:
>あの骨折は青木の感情から生まれたものです。
それは確かにその通りだと、私も思います。
今後、青木はデインジャラス・ファイターとして、レフリーから要注意人物と見られるでしょう。
>しかし、廣田はあんな風に腕を取られたのは恐らく初めてです。最終体制になった後に頭の中でどういう動きをすれば逃げられるか考えたはずです。
>考えてる段階だったのです。
廣田は終始戸惑ったままだったと思います。
(「考えている」というよりは、戸惑っていたのだと、私は思っています)
>相手を殺すつもりだと言う桜庭や、吉田でも、極めた後、ほぼ必ずレフリーを見ます。それは「もう極めてるけど、止めないの?」という合図です。
確かに、「折るつもり」で極めても、本当に折るのは夢見が悪いので 「もう、止めてくれよ」 という思いでレフリーにサインを送りますね。
>だがしかし、青木はレフリーを見ません、廣田がタップしないのでレフリーは青木が決めかねてると、判断したのです。
その辺が、私の視点からすると 「レフリーは素人か、わかってて腕折りをさせた確信犯か、どっちか」 と言っているところです。
位置取りも悪すぎるし。
「合図」 がなければ極まってるかどうかもわからないレフリーでは、あまりにも心許ないです。
あんなにまで極まる過程は見えていた (少なくとも、見ようと思えば見ることができた) のですから、きちんと割って入ってでも止めるべきでした。
最後の最後で反転して腕がおかしな方向に極まってしまう前に止めたら、廣田は 「俺はタップしてない」 と言うでしょうが、そこはレフリー権限で止めなければいけないところだったと思います。
(廣田としては、腕がもう少し伸びていた段階で反転しつつ、ポイントをずらすべきだったのですが、その直前に脚までコントロールされてしまったので、できませんでした。青木の理詰めの戦略の後手後手を踏んでしまいました)
今回の試合を教訓として、「完全に極まったとレフリーが判断したら、試合を止める」という方向にルールを整備してもらいたいと思います。
それには、レフリーの資質向上も必要ですが。
投稿: tak | 2010年1月 7日 10:29