『唯一郎句集』 レビュー #104
今回の 『唯一郎句集』 レビューは、たったの 3句だが、ページは 2ページにまたがっている。見開きの右側、P132 に、春の季節の 2句、そして右側の P133 に、晩秋(多分)の 1句しか載せられていない。
P134 から P137 までも、1句ずつしか載っていない。どうしてこのようなスタイルになったのか、何の説明もない。もしかしたら、このあたりは唯一郎がとても寡作な時期だったのかもしれない。
とりあえず、レビューである。
雉子が啼いてたらの芽のとぼしきかたち
たらの芽は 「山菜の王」 と呼ばれるほどおいしい。桜の咲く頃、山にはたらの芽が出て、それを天ぷらなどにして食べる。
里山にたらの芽採りに分け入ると、雉の鳴き声が聞こえる。たらの芽はかなり採られてしまっていて、もう貧弱なものしか残っていない。唯一郎はやはり街場育ちである。たらの芽採りは上手ではないようだ。
藪の中たらの木の芽を吹き立てり
藪の中の道を上り、ようやく見つけたたらの芽は、顔のあたりの高さにある。ふうふうと荒い息をつくと、たらの芽を吹いているような気がする。
この句はなんと、五七五の定型になっている。意識して定型の俳句を作ろうとしたわけではなく、「たらの芽を吹き立てり」 だと、木の枝の先に出ているたらの芽というのが伝わらないので、「たらの木の芽を吹き立てり」にした結果が、たまたま定型だったのだろうと思う。
ここでページが代わり、つぎはもう初冬の句だ。
るしゃな佛おんひざの初霜のして
毘盧遮那仏の仏像が、霜の降りるような屋外に安置されているというのは、いったいどこの寺なのか、調べがつかない。
大仏の膝の上に初霜が降りる。凛とした寒さの中に、それを和らげるような仏像眼差し。不思議な光景である。
次回のレビューは、とりあえず P134 から P137 を一気にレビューすることにしよう。一度に 4ページとはいえ、たったの 4句だ。
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