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2010年2月28日

『唯一郎句集』 レビュー #108

今日は秋の頃の句である。季節の反対側だが、俳句というものの力は大したものだ。目の前に秋の光景が広がる心地がする。

  京野氏別荘にて

くぬぎやぶなやひたむきに落葉してやまず

京野氏の別荘に招かれて作った句であることは明白だが、その京野氏とは一体誰で、唯一郎とどんな関係だったのか、とんとわからない。

ただ、それはあまり重要な問題ではない。重要なのは、別荘から見える自然林の、くぬぎやぶなの葉が、絶えずひらひらと舞い落ちている光景である。

その落葉を、「ひたむきに」と表現しているのが、まさに「ひたむき」という気がしてしまう。

  羽黒山上北日本海紅俳句大会にて

芝生ふけそめて萩のたるるに

羽黒山で、日本海の北側の海紅同人の俳句大会が催されたようだ。

ここに出てくる芝生が、どこにあるのか、羽黒山の近辺にあるのかどうか、わからない。ただ、これもどこにあるかは重要な問題ではないようだ。

芝生が古くなりかけている。それ 「ふけそめて」と表現するところが、ちょっと意表をついているかも知れない。

そして、その古くなりかけた芝生の上に、見事な萩の花が垂れかかっている。枯れた芝色と、萩のみずみずしさの対照。

羽黒樹うれの秋雲をうごかさず

「うれ」 とは、万葉の昔からの言葉で、木や草、枝の先端のことを言う、この句の場合は、羽黒山に育つ木々の上に接して浮かぶように見える秋の雲を題材にしている。

木々の先端によってピンで留めているように、秋の雲が動かず、じっと浮かんでいる。霊山である羽黒山では、時間が止まっているように感じられる (参照)。雲も動かず、止まっている。

本日はこれぎり。

 

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