わけのわからない季節感
立春が過ぎてから本格的な冬になってしまったようで、こういうパターンはアパレル業界にとっては最悪である。ただでさえ服の売れない時代なのに、冬物バーゲンを終えて、「さあ、これから春物を売ろう」と思っている矢先に、一番冬らしい天候になってしまったのだ。誰も春物なんか買う気になれない。
バブル崩壊直後のアパレル業界では「服はファッション性で売るものだから、売上の取れないのを景気と天候のせいにしてはいけない」なんて論調がもてはやされたことがあった。怪しげな自称ファッション・マーケッターとか、ファッション勃興期に業界に入ったので服の売れない時代を知らない経営者とかが、そんなことを言っていたものである。
しかしなんだかんだ言っても、服というのは天候要因で売れるという側面が大きいのだ。冬が寒ければ放っといてもコートと保温肌着は売れるし、逆に残暑がいつまでも長引くと、秋物が全然動かなくなる。
最近は暖冬だと思っていると、立春過ぎに寒の戻りが激しかったり、いつまで経っても残暑が続いたりというパターンが多すぎる。これはもう、日本の季節感というものが変わってしまったのだと思う方がいいのかもしれない。
私は近頃、1年のうちで 5月から 9月までの 5ヶ月が夏で、12月から 3月までの 4ヶ月が冬、そして、春と秋は、4月と 10、11月の、それぞれ 1ヶ月と 2ヶ月しかないと思えばいいと感じている。東京では下手すると、10月だって最高気温 25度以上の夏日がちょこちょこあるので、秋らしくないかもしれない。
つまり、1年 12ヶ月のうち、夏と冬が合わせて 9ヶ月で、春と秋は合わせても 3ヶ月しかないというのが実感だ。しかも半年近くが夏なのである。温暖化はここまで進んでいる。
日本は平均的に観ると、ちょっと前までは春夏秋冬がそれぞれ 1年の 4分の 1ずつあって、気候的にはメリハリとモデレートさを併せ持つ素敵な国だったのだが、今や、メリハリだけになってしまったような気がするのである。言い換えれば極端な方向に振れているということだ。
とくに、この冬の天気はくせ者だ。初夏のような暖かさになったかと思うと、翌日には急に真冬の寒さに逆戻りしたりする。昨年秋の段階では、エルニーニョが発生しているので、暖冬になるだろうとの予報が出ていたが、どう評価していいのかわからない結果になっている。少なくとも「当たった」とは言いにくい。
これは、ヨーロッパと北米東側に大雪をもたらした北極の強い寒気と、エルニーニョがせめぎ合っている結果なのだそうだ。北極の寒気というのは、普通はヨーロッパと北米東側に流れ出す時には、同時にアジア大陸東側にも流れてくるものらしい。だから、この三地域は同時に厳冬になりやすい。
ところがこの冬は、太平洋にエルニーニョというとびきりの暖冬要因ががんばっているので、日本だけは寒波を易々と受け入れるという状態にないのだそうである。いわば寒波とエルニーニョの異種格闘技戦だ。
時々、北極からの寒気が連打を繰り出して攻め込んで来るが、それがちょっと打ち疲れを見せるとすぐに、エルニーニョが下からタックルを繰り出して押し戻す。日本付近でそんな状況が続いているらしい。それで、この冬はこんなにもわけがわからない冬なのだ。
自然界というのも、なかなか大変なのである。
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コメント
暖冬だと思っていると - アパレルのトレンドも分かりません。また欧州と日本の天候は異なりますが、温暖化と言われてこのかた十五年ほどの冬は十分に寒くなかったかと思います。しかしここに来て中欧は、夏は春を通り越して早く短くなり、本格的な冬に見舞われており、オヴァーコートがないので皆困っているようです。1980年代に流行っていたようなゲシュタポのような皮のフルコートは皆無となり、1990年代前半に流行った化繊素材のものも殆ど見かけなくなりました。その反面、素材も何もかも薄くなりました。
もし来年も同じよな冬になるとの予想があれば、今年の春からのファッションは百八十度方向転換かと思います。合い言葉は、「動き易い防寒性」ですね。
投稿: pfaelzerwein | 2010年2月15日 13:57
pfaelzerwein さん:
ヨーロッパは十分に寒いようですね。
彼の地の人は、冬はみな分厚いコートを着ているようなイメージがありましたが、どうも違うようですね。
投稿: tak | 2010年2月15日 17:38