連休分散案と道州制
日本を 5分割して春秋の 5連休を分散させるという政府案が、にわかに注目されている。5分割案は、北から順に「北海道・東北・北関東」「南関東」「中部・北陸・信越」「近畿」「中国・四国・九州・沖縄」という、かなり大ざっぱなブロック分けだ。
連休分散の基本コンセプトは、季節の進行に合わせるというもので、春は「中国・四国・九州・沖縄」ブロックからスタートし、秋は逆に「北海道・東北・北関東」から始まるということのようだ。なるほどね。
私はこの話を聞いた時から、「それって、将来の道州制に向けた第一歩なんじゃないの?」と思っていた。ところが、発表されたブロック案は、必ずしも道州制に直結するものでもなさそうなのである。
何しろ、北海道・東北・北関東が一つにまとめられて、南関東は別になってしまっている。私の居住地である茨城県は北関東だから、北海道・東北と一緒だが、私の仕事の基盤は東京都内にある。だから、この制度がそのまま通ったとしたら、連休は南関東に合わせることになるのだろう。それって、ちょっとやりにくい。
例えば茨城県南部に住んでいる一家があって、父親が東京の会社に通勤し、子どもたちは地元の学校に通っているとする。実際、そんな例はいくらでもある。すると、春と秋の連休が親子でずれてしまって、一家でどこかに出かけるというのが難しくなる。
それだけでなく、北関東の会社の主要取引先が東京にあると、連休のズレによって春と秋の 2週間ずつは、連絡が取りにくくなるだろう。注文した品物が納品されるのが、ちょっと遅れがちになるかもしれない。
北関東と南関東はかなり密接な関係があるから、この分割案をそのまま将来の道州制にスライドさせたら、かなりやりにくいことになってしまうのが確実だ。どうも、この分割案は連休を春と秋のそれぞれ約 1ヶ月間に分散させることが主眼で、道州制はまた別の問題と考えるほかないようだ。
政府によると、フランスとドイツでも国内の地域ごとに連休をずらして実施しているというが、この 2国は元々、道州制(のようなもの)と連邦制というシステムで地方分権を実施してきている。というか、中世の昔から地方分権が当たり前で、身に付いている。
一方日本人は明治の御一新からこのかたずっと、強力な中央集権システムでやってきてしまったから、このあたりの感覚がまだ成熟していない。だから、関東を北と南で分けてしまうなんていうことを平気でやってしまう。
この制度を実施するにしても、政府案は単なる叩き台として、各方面からの意見を取り入れなければならないだろう。ただ、あまり取り入れすぎるとまとまりがつかなくなるので、ある程度のところで、「えいや!」で進めなければ、何事も前に行けなくなってしまう。
最後に念のために言っておくと、私は基本的に地方分権には賛成なので、連休分散にも決して反対というわけではない。地方分権に関する私の基本的な考え方は、以下の過去記事をご覧いただけばわかる。
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コメント
国が決めた休日・祝日でないとまとまった休みが取りにくいという状況が変われば、象徴的な休日・祝日を残すだけでいいということになりそうな気がします。ハッピーマンデーなど小細工を弄して連休を作ったり、はたまた今回のように連休を分散させる必要もなくなる。
でも、そのためにはもっと大きな変革が必要なのかもしれない……。
投稿: 山辺響 | 2010年3月 5日 16:54
「この制度を実施するにしても、政府案は単なる叩き台として」 - そもそも対症療法の浅はかな考え方ですよ。英国やフランスは中央集権政府ですが、ドイツの連邦制度でも常に重要な政治課題です。
幾ら日本人がコピーが巧いといっても、利点や欠点があるからそうした制度だけを真似しても駄目です。ドイツの場合でも、同一生活圏でも河を隔てれば州が異なりますから、東京23区内を半分に分けたものと地学的にはあまりかわりません。
要は、教育・経済など国防以外のものを如何に地方自治に委ねることが出来るかという問題でしょう。地域コミュニティーの自治が発展していない以上休暇だけを弄っても駄目ですね。
投稿: pfaelzerwein | 2010年3月 5日 20:09
この馬鹿なアイディアは、観光業者と高速道路のことだけを考えたんじゃないでしょうか?
生産業を始め、産業界は迷惑ばかりでしょう
カンバン方式などの納期なんてメチャメチャになりかねない
民主党の連中って、思った以上にはるかにバカですね
この頃、ボロがボロボロに(笑)出てきたものだから、新味を出して目くらましをしようと(笑)いろいろ愚策を出してきますね
もし、地方分権ともなれば、ますます「外国人の地方参政権問題」が問題になります
大都市はともかく、まず手始めとして、小さな町などを乗っ取ることなど、集団で住民票を移せば簡単です
さしあたり、韓国人が自国の領土だと騒いでいる対馬や、中国・台湾などとの国境線に近い沖縄の離島など危ないですね
また、北教組が「竹島は韓国領だ」(笑)と教えていた北海道なども、危ないですね(笑)
投稿: alex99 | 2010年3月 5日 21:49
結局、大企業にとっての「使い勝手」が優先されるのでしょうか。
大企業のサラリーマンは地方出身者が大半ですから、『フレックス』とか『分散休暇』(中小零細経験しかないので妥当な言葉が出ません!汗…)の柔軟対応で、なんとかなる…、するんじゃないかなぁ…、と思いました。
「今度休暇だから、帰っていい?」という問い合わせに、「タワケ!わしんたぁ仕事だわ!」なんて会話が…、ないともいえない。
逆に、分散連休の影響で残業増えたりして。(無責任発言)
投稿: 乙痴庵 | 2010年3月 5日 22:02
山辺響 さん:
>国が決めた休日・祝日でないとまとまった休みが取りにくいという状況が変われば、象徴的な休日・祝日を残すだけでいいということになりそうな気がします。
みんなが休む時でないと休めないという 「空気」 は、昔は生産性の向上に寄与したんでしょうが、今は 「どうかな」 という感じですね。
今となっては、昔ながらの非効率の土壌を温存しているだけなのかもしれません。
投稿: tak | 2010年3月 5日 23:39
pfaelzerwein さん:
>「この制度を実施するにしても、政府案は単なる叩き台として」 - そもそも対症療法の浅はかな考え方ですよ。英国やフランスは中央集権政府ですが、ドイツの連邦制度でも常に重要な政治課題です。
きちんと地方分権のコンセプトが定着してから、連休分散の話に移行するんでないと、混乱が生じるだけということになりますね。
投稿: tak | 2010年3月 5日 23:41
alex さん:
>この馬鹿なアイディアは、観光業者と高速道路のことだけを考えたんじゃないでしょうか?
どうも、そんな気がしないでもないですね ^^;)
>もし、地方分権ともなれば、ますます「外国人の地方参政権問題」が問題になります
>大都市はともかく、まず手始めとして、小さな町などを乗っ取ることなど、集団で住民票を移せば簡単です
私は外国人の参政権に関しては、基本的に反対ですが、未来永劫 「絶対反対」 というわけでもありません。
ただ、現状ではとにかく反対するしかないです。
投稿: tak | 2010年3月 5日 23:45
乙痴庵 さん:
>結局、大企業にとっての「使い勝手」が優先されるのでしょうか。
というか、大企業 (とくに製造業) は今でも、カレンダー通りの連休にはこだわらず、いかに製造ラインを動かしたり停めたりしなくてもいいかを考えて休みを設定してますね。
>「今度休暇だから、帰っていい?」という問い合わせに、「タワケ!わしんたぁ仕事だわ!」なんて会話が…、ないともいえない。
別の 「国」 になっちゃえばいいわけですけどね。
江戸時代の幕藩体制みたいに (^o^)
投稿: tak | 2010年3月 5日 23:48
この政策には呆れてモノが言えません。
休暇を分散して取らせたいなら、「各企業はその従業員に対し年に1回(ないし2回)は1週間以上の連続した休暇を取らせなければならない」という法律を作ればきわめて簡単にできます。
中小企業にとってはやや厳しいかもしれませんが、制度設計で工夫すれば(例えば、例外規定や、当該休暇を日給の1.5倍で買取可能にするとか、穴埋めの臨時雇用に補助金を出すとか)何とかなると思います。
外国の金融機関では不正防止のために採用されているルールですが、日本の一般企業でも色々なメリットがあるのではないでしょうか。
投稿: きっしー | 2010年3月 8日 11:38
きっしー さん:
>休暇を分散して取らせたいなら、「各企業はその従業員に対し年に1回(ないし2回)は1週間以上の連続した休暇を取らせなければならない」という法律を作ればきわめて簡単にできます。
これは、年末年始とお盆のお休みをきちんと確保した上での話なら、賛成できます。
年末年始は多分大丈夫でしょうが、お盆休みを廃止して 「一週間の休みを取れ」 と言ったら、日本の企業風土では、多分お盆辺りに集中してしまうでしょう。
これでは本末転倒ですので、年末年始とお盆休みは、デフォルトにしておく必要がありますね。
それでも、お盆と年末年始前後への集中は避けられないかもしれませんが。
(それにしても、どうして日本人は人混みの中にでかけるのが、あんなにも好きなんだろう?)
投稿: tak | 2010年3月 8日 16:40
takさん
お正月は、仰るとおりだと思います。
お盆の方は、避ける人も多いと思いますよ。現に、比較的自由に休みを取れる会社で働いている人は、混雑の少ない時期や飛行機のチケットの安い時期などを選んでいるように思います。
少なくとも、国民皆長期休暇の習慣が定着したら、それなりのところに落ち着くんじゃないですかね。
投稿: きっしー | 2010年3月 8日 18:16
きっしー さん:
>お盆の方は、避ける人も多いと思いますよ。現に、比較的自由に休みを取れる会社で働いている人は、混雑の少ない時期や飛行機のチケットの安い時期などを選んでいるように思います。
製造業系は、みんな一緒の休暇を暗に求めるでしょうが、事務系、その他はそうでもないでしょうね。
今や、直接製造現場に係わっている人の比率はそれほど高くないでしょうから、全体としては混雑は緩和されるでしょうね。
問題は、自主的に休暇を取ることを促進するか、政府が手取り足取り休暇を分散してあげるかということで、そう思うと、「民度」 という言葉が脳裏に浮かんで嫌な気持ちになってしまいます。
投稿: tak | 2010年3月 9日 11:58