« 近頃靴の防水性がよくなった | トップページ | 「センス」ということ »

2010年3月25日

日経電子版の中途半端

iPhone のアプリに N-News というのがあって、日本経済新聞の記事を無料で配信してくれていた。私はこの N-News で、朝の通勤電車の中でニュースをチェックするのが日課になっていたのだが、一昨日からできなくなった。N-News を起動させても、空白ページしか表示されないのだ。

「ああ、そうか、3月 23日から日経のニュースが有料化されるなんて言ってたなあ」と、その時初めて実感をともなって認識してしまったのである。それで、秋葉原の駅を降りたら、目立つ黄色地に「本日解禁、新聞の夜明けぜよっ」というダサダサのタイトルのパンフレットを配っている子がいたが、受け取る人は少なかった。私も受け取らなかった。

そして、昨日(24日)も同じパンフレットが配られていた。きっと思ったほど捌けなかったので、2日連続ということになったのだろう。可愛そうだから受け取ってみたら、「本日解禁」というタイトルがそのままなのに笑ってしまった。「昨日解禁」に差し替えするのもなんだしね。

パンフレットに表記されている基本料金プランというのをみると、電子版は 4,000円/月なのだそうだ。えらく高いなあ。いや、その上に書いてある「日経Wプラン」というのは何だと思ってよくみると、宅配版とのセットで契約すると、プラス 1,000円で済むのだそうだ。

朝・夕刊セット版地域だと、4,383円プラス 1,000円の 5,383円、全日版地域だと、3,568円プラス 1,000円の 4,568円ということになっている。つまり、この電子版というのは、従来の紙で読んでいる契約者を優遇して、デジタルだけで読みたいというニーズに対しては、かなりすげない設定になっているのである。

とくに、全日版地域の人が宅配から電子版に乗り換えたら、あろうことか、432円のコスト増になってしまう。紙も消費しないし、運送費も宅配の人件費もかからなくなるのに値段が高くなるというのは、どう考えても理不尽な設定である。

こうした設定になっていることの、そのココロは「できれば、紙で読み続けて欲しいのよね」「もし電子版が失敗しても、紙媒体の方が全滅になったりすることは避けたいのよね」という 2つの安易な都合の合わせ技の結果なんだろうと想像してしまった。

いずれにしても、かくまで安易なコンセプトの日経電子版が大成功を収めるとは考えにくい。これまでの非購読者が、急に月々 4,000円払って電子版購読者になろうという気になるとは、到底思えないからだ。このご時世で 4,000円は高すぎる。1,000円を切るなら、私もその日のうちに申し込むのだが。

日経に 4,000円払う気のある者なら、既にずっと前から宅配版の日経を購読しているだろう。紙の読者が、「混雑した通勤電車で広げて読むのもなんだから、iPhone でも読みたいなあ」と思ったりしたら、プラス 1,000円払うかもしれないが、それは多数派にはならないだろう。

いずれにしても今回の日経電子版のスタートは、コンセプトが中途半端すぎるなあと思ってしまうのである。マスコミというのは、他人の所行に関してはずいぶん客観的に批評できたりするのだが、いざ自分のやることとなると、急に見えなくなってしまうところがあるのだよね。

ちなみに、パンフレットには 3月 23日から 4月 30日まではキャンペーンのための無料期間となっているので、プロモーションサイト (http://pr.nikkei.com/) にアクセスするように書いてあるが、そこに行ってみると、いきなり「申込み」ボタンのあるページである。

よ~く探して 「日経電子版へ」 というボタンを押すと、結局は http://www.nikkei.com/ に飛ぶ。このあたりも、なんだかなあ。

 

|

« 近頃靴の防水性がよくなった | トップページ | 「センス」ということ »

パソコン・インターネット」カテゴリの記事

コメント

この購読料は、まだ会社全体のビジネス・モデルの展望が定まっていないことを如実に表していますね。
最初に安く設定して後から引き上げることは困難が予想されるので、見切り発車で様子見しようという発想かと推察します。が、その発想自体が古くて、大きなビジネス・チャンスを逃すことになるかもしれないと思うんですけどね。
私はもう紙の新聞は購読する気はありませんが、電子版は検討中です(iPadの発売楽しみです!)。ただ、無料で見られるメインの記事以外の部分に対して払う対価として4千円は高いなあと躊躇しているところです。
今後、日経のブランド力がどうなるのか分かりませんが、今ならメインの記事も有料サービス側に入れてしまった方が一気に購読者を取り込め、前向きな事業展開の足がかりとなるような気がします(契約者の記事閲覧履歴などのデータ管理等、規模のメリットがあるので)。まあ、販売店との関係やら何やらでそれが出来ないのが大会社の弱みなんでしょうね。

投稿: きっしー | 2010年3月25日 13:17


 同意します。

 私も2/25日に日経の「電子版の価値基準」というエントリーをアップしました。
http://ameblo.jp/kinnme/entry-10467645990.html

 私も千円なら電子版の日経を定期購読してもいいと考えていますから、日経のこのモデルでの電子新聞の価格設定はまったく戦略的ではないと思います。完全に守りの姿勢でしょうね。
 日経は安い価格設定にしたとき、今の紙メディアのユーザーが一気に電子版に流れた場合の既存の印刷流通というシステムの混乱を恐れたのだと思います。
 むしろ、既存のユーザーが電子版に移行すると同時に、新規獲得出来る潜在的なニーズ(千円なら日経を読んでもいいかなぁというニッチの層)を獲得する機会を重要視していないという事でしょうね。

 共同通信から配信を受けてそれを基本に編集し、最初から電子新聞しか発行しないという会社が出てくれば面白いと私は思っています。

投稿: きんめ | 2010年3月25日 14:04

きっしー さん:

>最初に安く設定して後から引き上げることは困難が予想されるので、見切り発車で様子見しようという発想かと推察します。が、その発想自体が古くて、大きなビジネス・チャンスを逃すことになるかもしれないと思うんですけどね。

まさに。モノを売る商売の発想です。

>無料で見られるメインの記事以外の部分に対して払う対価として4千円は高いなあと躊躇しているところです。

4,000円では、会社で読めばいいじゃんと思ってしまいますね。

>今ならメインの記事も有料サービス側に入れてしまった方が一気に購読者を取り込め、前向きな事業展開の足がかりとなるような気がします

1,000円未満/月なら、私だってすぐに申し込むんですけどね。

>まあ、販売店との関係やら何やらでそれが出来ないのが大会社の弱みなんでしょうね。

日経の自社系列販売店なんて、たかが知れてると思ってたんですけど、そうでもないんでしょうかね。

投稿: tak | 2010年3月25日 19:47

きんめ さん:

>私も2/25日に日経の「電子版の価値基準」というエントリーをアップしました。

拝見しました。
大体同じ意見ですね。
というか、フツーそうなるよねぇ! って感じですかね。

>共同通信から配信を受けてそれを基本に編集し、最初から電子新聞しか発行しないという会社が出てくれば面白いと私は思っています。

配信記事プラス独自視点のオピニオン記事とユニークな寄稿というのなら、おもしろいかもしれませんね。

投稿: tak | 2010年3月25日 19:52

タダ読みしてた人が、料金がどうだとか語る資格あるのかな(笑)

投稿: たか | 2010年3月25日 23:37

たか さん:

顔を洗って出直されては?

投稿: tak | 2010年3月26日 10:32

たかさん

不正な手段でタダ読みしていたならばそういう見方もできるでしょう。しかし、この場合、これまで新聞社がタダで提供されていたものを、新聞社が意図していた通りに見ていたに過ぎないわけです。

タダでしか見られなかった以上、たかさんのロジックだと、新聞のウェブ版の価格設定に関して誰も語れないことになりますね。
わはは。

投稿: きっしー | 2010年3月26日 14:01

きっしー さん:

丁寧な補足、感謝 (^o^)

投稿: tak | 2010年3月26日 21:07

電子版は2000円くらいだろう、そうならば購入しようと考えていましたが、実際は4000円なので落胆しました。
とりあえず四月いっぱいは、お試し版が見られるということなので申しこもうとしたら、それは内容をわざと希薄化したもののようで、それさえもあきらめてしまいました。

日経はなんとしてでも紙媒体版は減らしたくないようですね。
そういえば電子版の週間ポストとかFLASHなんかも紙媒体と殆んど変わらない価格設定だったと思います。

出版界は電子媒体とどう付き合っていいかわからない状態じゃないでしょうか。

投稿: ハマッコー | 2010年3月26日 22:46

ハマッコー さん:

>日経はなんとしてでも紙媒体版は減らしたくないようですね。

そんな感じですね。「宅配版とウェブ版のどっちが本当の日経?」 と聞かれたら、「もちろん、宅配版」 と答えちゃうんでしょうね。

>出版界は電子媒体とどう付き合っていいかわからない状態じゃないでしょうか。

「わからなすぎ」 あるいは、「あえてわかろうとしていない」 または 「わかりたくない」 というところなのかもしれませんね。

投稿: tak | 2010年3月27日 22:41

電子版、数日前の夕方のニュースで特集が組まれてましたね。
あまりしっかりは見ていないですけれど(^^;
なにやら、朝夕刊の時間の締切りにとらわれない更新ができるのが売りとのこと。
1日に1面が4回更新されたりとかしてるみたいです。
情報量は紙媒体よりも多いのだとか、編集部も紙とWEBで違うんだとか、そういう話だったような。

電子書籍が主流になる頃には情報も電子媒体でないと話にならないでしょうけれども……どうなんでしょうね。。

投稿: ぺれ | 2010年3月29日 14:27

ぺれ さん:

>なにやら、朝夕刊の時間の締切りにとらわれない更新ができるのが売りとのこと。

そりゃ、そうでしょうね。
というか、当たり前すぎて、特段強調するほどのことでもないようにも思いますが ^^;)

>編集部も紙とWEBで違うんだとか、そういう話だったような。

へぇ、そうなんですか。
でも、書く記者は同じでしょうけどね。

投稿: tak | 2010年3月29日 22:42

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 日経電子版の中途半端:

« 近頃靴の防水性がよくなった | トップページ | 「センス」ということ »