『唯一郎句集』 レビュー #122
おまけの第二弾である。伊藤後槻氏が「唯一郎が肉親に注いだ真実の情を表わす句」として紹介している 11句のうちの 3句なのだが、これがどうして「肉j親に注いだ真実の情」を表すのか、甚だわかりにくい。判じ物みたいである。
藤棚葵となつておろかしく或る夜の俺をつゝいたりして
これはなんとなく想像がつく。藤棚というのは妻を表していて、「葵となつて」 は、源氏物語の葵の上に喩えて、夫の情愛を求めたのだということだろう。
光源氏は葵の上にはなかなかつれない態度をとっていたのだが、唯一郎もそんな感じだったのだろうか。
神馬を叱つた若者の驕りが何やら淋しいものを見つけたのか
「神馬を叱った」というのが、何のメタファーだからわからない。飛騨の伝説に、左甚五郎の彫った神馬が、畑の作物を食い荒らすので、甚五郎がその馬の目をくりぬいたというのがあるが、それと関係があるのだろうか。
「若者の驕り」の「若者」が誰を指すのかもわからない。これは、降参だ。
一ツ一ツ虚偽が割れるので皿の雷魚に拍手する
昔、私も雷魚を食った覚えがある。案外おいしい。しかし、皿に載った雷魚に拍手するのと、虚偽が割れるということの関係がわからない。
これも降参。
こんな難解なのが、本文になくてよかった。
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コメント
神馬を叱つた若者の驕りが何やら淋しいものを見つけたのか
例えば多度大社の「上げ馬神事」のことかなぁと、拝察いたしました。
乗り手は、基本“若者”ですし。
ただその頃に、唯一郎さんの行動範囲に「上げ馬」があったかどうか、知る由もなし。
思わしくない結果に、神馬をしかった若者。「人馬一体」の心をふと思い出し、自責の念にかられた若者の表情を目の当たりにした唯一郎は…。
…という創作物語。
投稿: 乙痴庵 | 2010年4月20日 12:46
乙痴庵 さん:
>思わしくない結果に、神馬をしかった若者。「人馬一体」の心をふと思い出し、自責の念にかられた若者の表情を目の当たりにした唯一郎は…。
うぅむ、なるほど。
魅力的な解釈。
それが、親へのささやかな反抗ということのメタファーなのかもしれませんね。
投稿: tak | 2010年4月20日 15:20