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2010年4月15日

「肉」と「天気」と「結果」

大阪人にとって、「肉」 と言ったらそれはとりもなおさず「牛肉」のことを言うのだと聞いた。ふぅん、私の生まれた庄内では、どっちかというと、「肉」と言ったら「豚肉」のイメージなんだけどなあ。

大阪は神戸とか松坂とか、ブランド牛肉の産地に近いから、そうなってしまったんだろうか。一方、庄内にはかの有名なブランド豚肉の平田牧場があるから、豚肉がうまい。芋煮会でも、山形県の内陸では牛肉を使うらしい(米沢牛とかがあるからなあ)が、庄内では豚肉である。

関東では、豚肉の入ったまんじゅうのことを「肉まん」というが、関西ではこれを「ぶたまん」というらしい。関東と同じように「肉まん」と言ってしまったら、中に牛肉が入っていると誤解してしまうので、区別のためにあえてそう言うと聞いた。私は関西人のいう「ぶたまん」を何のことだろうと思っていたが、なんだ、単なる肉まんだったのか。

まあ、本来多様な意味のある単語をフツーに使った時には、ニュアンス的にある一定の意味を表すというのは、よくあることである。

日本語では、「天気」と言ったら、フツーは「いい天気」のことを指す。「天気雨」というのは、晴れているのに雨が降っている状態だ。「今日はお天気だねえ」と言えば、「いいお天気だね」ということである。日本人は、天気に関してはかなりオプティミスティックだ。

ところが、英国では "weather" と言えば、「悪天候」のことを言うらしい。"Because of the weather"(天気のせいで)と言うだけで、待ち合わせに遅れたことの言い訳になるという。英国人は天気ではペシミスティックのようである。

「結果を出す」という言い方がある。中高年の中には、「結果には、いい結果も悪い結果もあるのだから、その言い方はおかしい」と難癖をつける人もいるが、この場合の「結果」は、「いい結果」を指す。

「お天気だねえ」と言うくせに、「結果を出す」に難癖を付けるのは、勝手な気むずかしさということかもしれない。

どこで読んだのか、出典を忘れてしまったのが痛恨なのだが、日本で最初に 「結果を出す」という言い方をしたのは、サッカーの三浦知良選手だと指摘している記事を、最近読んだ。(出典を知っている方は教えてください)

ポルトガル語で「結果」という単語は、「良い結果」というニュアンスを含んでいるのだそうだ。ブラジルで選手生活を経験したカズは、それを日本語にもそのまま応用して「結果を出す」という言い方をし、それが瞬く間にスポーツ選手の間に広まったのだそうである。

ふぅむ、なるほどね。「結果」がフツーは「いい結果」というのは、ラテン系のオプティミズムなんだろうなあ。

 

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言葉」カテゴリの記事

コメント

天気の話、笑ってしまいました。
わはは。

結果は、果実を結ぶと書く(ように見える)から、ポジティブなニュアンスがあっても良さそうな気がしますけど、実際にはどちらかというと逆の印象ですかね。「結果として…」なんて言うと、「○○○○になってしまった」とつながる、いやらしい言い訳の定番になりつつありますもんね。

投稿: きっしー | 2010年4月15日 22:15

きっしー さん:

>結果は、果実を結ぶと書く(ように見える)から、ポジティブなニュアンスがあっても良さそうな気がしますけど、実際にはどちらかというと逆の印象ですかね。「結果として…」なんて言うと、「○○○○になってしまった」とつながる、いやらしい言い訳の定番になりつつありますもんね。

"Result" は、ポルトガル語でも "resultado" で、見るからに語源は同じですね。

それから、"fruit" という単語には、明らかに 「よい結果」 という意味もありますね。

今、Wisdom 英和辞書を引いたら、"result" には、「(とくにサッカーの試合での)勝利」 という意味があって、"get a result" で 「勝利する」 ということになるそうです。

やっぱりブラジル・サッカーの影響でしょうかね。

しかし、確かに日本語では 「結果として」 で始めると、「○○ということになり」 と続く「掛かり受け」(?) が定着していて、両義的なニュアンスですね。

投稿: tak | 2010年4月15日 23:02

無常観が結果の悪い方のニュアンスを支えてる説を提唱します。
生きている間、物事が起こっている間は良い結果の連続で、それが終わる=悪い結果に落ち着く、みたいな感じです。
物事を長い目で捉えると、終局を意味するようになるんじゃないでしょうか。
そうした見方は、良い結果を素直に喜べなくなるかも知れませんが、こだわらなくもなるので、それはそれで気楽だな、と思います。
ビジネスマンと漁師の話を思い浮かべてもらえると助かります。

投稿: 夜の指揮者 | 2010年4月16日 00:00

にわかには信じられない話を、最近聞きました。
関東では肉じゃがに豚肉を使うというのです。
まさかそんな…

投稿: HIRO | 2010年4月16日 00:01

夜の指揮者 さん:

>無常観が結果の悪い方のニュアンスを支えてる説を提唱します。
>生きている間、物事が起こっている間は良い結果の連続で、それが終わる=悪い結果に落ち着く、みたいな感じです。
>物事を長い目で捉えると、終局を意味するようになるんじゃないでしょうか。

うぅむ、「無常観」 というのは、むしろ 「生きている間が思い通りにならないことの連続で、それだからこそ、死んだら西方浄土に往生したい」 ということがベースになっているコンセプトではないかと思いますが。

投稿: tak | 2010年4月16日 09:30

HIRO さん:

>にわかには信じられない話を、最近聞きました。
>関東では肉じゃがに豚肉を使うというのです。
>まさかそんな…

えっ?
フツー、豚肉じゃないかと思ってましたが。
それとも、両方ありなのかな。

じゃあ、関西では 「私の思ってるフツーの肉じゃが」 は、「ぶたじゃが」 になるのでしょうか?

あるいは、そんなもの存在しないとか。

投稿: tak | 2010年4月16日 09:34

大阪在住です。
たぶん、大阪での「肉は牛肉」のイメージは、焼肉店が多いからかもしれません。
大阪には韓国・朝鮮系の方が多く住まわれているので、昔からホルモン焼など盛んです。

特に大阪環状線の「鶴橋駅」は、駅に降り立った瞬間から焼肉の匂いがする駅で、こちらでは有名です。
これは私も体験したので本当です^^
すごい匂いですよ!

肉じゃがについては、豚と牛とどちらも使いますが、牛肉を使う家庭のほうがやや多いように思います。

投稿: シロ | 2010年4月16日 23:20

シロ さん:

鶴橋駅ですか。一度体験しに行ってみようかな。

>肉じゃがについては、豚と牛とどちらも使いますが、牛肉を使う家庭のほうがやや多いように思います。

やっぱりそうですか。どっちもありですよね。

投稿: tak | 2010年4月17日 00:16

私、大阪育ちですが
♪言っておきたいことがある(笑)

大阪で「肉」と言えば,牛肉だけです
豚肉は,「肉」の想像力の限界を超えます(笑)
ほとんど食べないと思いますよ

焼き肉が流行りだしたのは、やっと昭和50年近くからでしょう
40年代の初期、アルバイトで在日地区へ迷い込んで(笑)焼き肉屋に入ったら,食べさせてくれませんでした
まだそんなものでした

鶏肉は「かしわ」と言って、肉屋では売っていません
鶏肉屋が別にあります

投稿: alex99 | 2010年4月17日 01:43

上記の「40年代」とは、昭和40年代のことです

投稿: alex99 | 2010年4月17日 01:44

alex さん:

>大阪で「肉」と言えば,牛肉だけです
>豚肉は,「肉」の想像力の限界を超えます(笑)

そりゃまた、すごいご意見。
でも、そういう感じなんでしょうね。

>焼き肉が流行りだしたのは、やっと昭和50年近くからでしょう
>40年代の初期、アルバイトで在日地区へ迷い込んで(笑)焼き肉屋に入ったら,食べさせてくれませんでした
>まだそんなものでした

そうでしょうね。
私の記憶でもそんな感じです。
私が大学に入ってちょっと経った頃が、焼き肉屋の増え始めた頃ですね。
貧乏学生の私にとっては、別の世界でしたが。

私は焼き肉屋とお好み焼き屋は、あまり入る気がしません。
(馴染みがないので ^^;)

投稿: tak | 2010年4月17日 07:58

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