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2010年5月24日

「両立する」が "juggle" というのは、ちょっとアブナい

毎日ウィークリーの英語クイズとやらに、「両立させるを英語で言うと "juggle"」だなんてことが、一見もっともらしく書いてある(参照)。こんなこと書いて、日本人の多くが真っ正直に信じてしまったら、毎日さん、どう責任取ってくれるというんだろう。

クイズの問題は、"谷亮子氏が参院選に出馬表明し、政治活動と柔道を両立させると語った。「両立させる」を英語で?" というもので、その答えが "juggle" だというのである。全体はこんな風に訳されている。

Tani Ryoko, who has announced her intention to run in the Upper House election, plans to juggle her political and sports career.

うぅん、確かに、このケースでは「あぶなっかしい」という感じが伝わってくるという意味で、ニュアンスとしてはなかなか言えてる翻訳だと思う。しかし「両立する」を英語で  "juggle" というんだなんて言われると、「おいおい、ちょっと待ってくれよ」と言いたくもなるではないか。

言うまでもなく、  "juggle" は、あの曲芸の「ジャグリング」の「ジャグル」である。たった二つの手で、三つも四つものものをひょいひょいとやりくりするあれだ。谷亮子さんの 「国会議員をしながらロンドン・オリンピックで金メダルを目指す」なんていう発言の雰囲気を表現するには、いい翻訳だと思う。

念のため、"juggle" を Wisdom 英和辞書を引いてみると「曲芸をする」とか「ごまかす」とか「やりくりする」とかいう訳語が出てくる。まあ、そんなようなニュアンスだ。

しかし、「立派に余裕で両立しちゃった」というような場合に "juggle" なんて動詞を使ったら、そりゃ失礼というものだろう。だから、単純和英辞書的に「両立する = juggle」なんて覚えないでもらいたい。

じゃあ、フツーに両立するようなケースでは、英語でどう言えばいいのかというと、こればかりは、「その場その場で一番ふさわしい言い回しで言うしかない」としか言えないと思う。「両立」 という日本語には、「犬 = dog」みたいに、即物的にぴったりと当てはまる英語って、ないんじゃないかと思うのだ。

例しに Wisdom 和英辞書を引いてみたら、まず "be consistent with" という言い方が出てきた。これは「矛盾しないで併存する」というような意味だから、また別の意味合いである。似たような意味合いで "be compatible with" というのもある。

「A と B の仕事を両立させる」 という日本語に一番近いのは、"manage to do A and B at the same time." とか "manage to balance A and B." とかだろうと思う。面白みはないけどね。

 

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