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2010年5月21日

「赤松口蹄疫」 で考えてみる

今や 「赤松口蹄疫」 という名称すら付いてしまった宮崎県の口蹄疫騒ぎ。赤松農水相の初動の遅れや 「呑気な」外遊が、これだけのパンデミックをもたらしたということに、世間ではなってしまっているようだ。

しかし恐縮だが、農水相が赤松氏でなかったとしたら、あるいは、赤松氏が外遊しなかったら、果たして被害拡大は防がれたんだろうかという、素朴な疑問を私は抱いている。

いや、誤解しないで頂きたい。私は赤松農水相が精一杯やっていると弁護しているわけではない。むしろ「凡庸にすぎるんじゃないか」という疑いをもっている。しかし、彼以外の人材が農水相を務めていたら、今回のパンデミックは防がれたかどうかというのは、誰にもわからない。

つまり、今回の問題は赤松農水相の個人的な資質云々とは分けて考える必要があるのではないかということだ。

今回、宮崎県で口蹄疫に感染した牛が発見されたのは、今からほぼ 1か月前の 4月 21日。当初のニュースは、「今回も前回の流行時のように、きちんと感染地を隔離して、感染牛の処分をすれば、拡大は防がれるだろう」と、案外楽観的な見方に立脚した報道だったことを覚えている。

ところが、あれよあれよという間に感染は拡大し、こんな事態になった。初動が遅れたのが問題と言うが、感染牛発見当初は、大方はそれほど緊迫してはいなかったと思う。赤松さんが家畜の伝染病の専門家というわけじゃあるまいし、周りが緊迫しなかったら、大臣だって緊迫しない。

赤松さんじゃなくて、あのバンソーコーの赤城さんだったら、拡大が防がれたかなんてことは、誰もわからない。もしかしたら、もっとヒドイことになっていたかもしれない。

それに、赤松さんが外遊しないで国内に止まっていれば、もっとちゃんとした対応ができたはずという理屈も、私にはやっぱりわからない。この国の大臣は、そんなに先頭切ってあれこれ指示しまくるほどに、アグレッシブな有能さを発揮してきたわけじゃない。これまでだって、大体役人任せでやってきたのだ。

問題は、今の政権が「政治家主導」と言って役人を遠ざけている感があることだ。政治家は役人を頼りにせず、役人は政治家にまともな報告を上げないなんてことになっているとしたら、それはちょっと問題だ。

総論的に進めば大丈夫という事態なら、政治家主導もいいだろうが、今回のように具体的情報に立脚した各論ベースで進まなければならないという緊急事態においては、政治家なんて大抵は個々の問題には素人なんだから、現場からのきちんとした情報がなければ対処できるわけがない。

今回の本当の問題は、政府がその情報をまともに得ようとしていたのかどうかということだ。その努力さえしていれば、農水相がメキシコにいようがボリビアにいようが、現場に的確な指示を出すことができただろう。実際に動くのは農水相じゃなくて現場に近い担当者なのだから。

私は今回の問題を見ていて、役人と政治家の間のすきま風がやばいんじゃないかという気がしてきている。役人というのは、あまりのさばらせるのも問題だが、やはり少しは気持ちよく働いてもらわないといけないんじゃないかと思うのだ。

 

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コメント

確かに。

政治主導というのは、内閣なり議会なりが主体的に官僚を「使う」ことであって、政治と官僚の距離を遠ざけるということではないですよね……。

四段目でおっしゃっているように、昨今の報道などはあまりにも首相・閣僚の個人的資質を問題にする傾向に偏しているようでもありますが。

投稿: 山辺響 | 2010年5月21日 18:07

日本の大臣は、そのほとんどが専門家では無いので,赤松さんの場合、口蹄疫についてよく知らなかったのでしょう
本来なら,専門家である官僚が赤松さんにその重大性をアドバイスすべきだった

私は,一連の民主政権の失敗の原因は、「政治主導に疎外感を持った官僚の無意識的なサボタージュと経験と能力に欠けたアマチュア閣僚達」という視点で見れば、大半の部分が解明できると思っています
「おまえ達官僚は必要無いんだ」と言われれば,わざわざ情報をあげたり、ノウハウを授けたり、下準備をしたり、などはしたくなくなるでしょう

普天間問題なども,その一端だと思います


投稿: alex99 | 2010年5月22日 02:12

山辺響 さん:

>政治主導というのは、内閣なり議会なりが主体的に官僚を「使う」ことであって、政治と官僚の距離を遠ざけるということではないですよね……。

今は、なんとなく、官僚がスネているという雰囲気が感じられるんですよね。

>四段目でおっしゃっているように、昨今の報道などはあまりにも首相・閣僚の個人的資質を問題にする傾向に偏しているようでもありますが。

個人的資質は、もちろん非常に重要なポイントだと思います。
ただ、それを問題にしすぎるのは、やはりとても恣意的なものを感じることがあります。

とはいえ、鳩山首相の「資質」に関しては、よほど高潔で寛容でないと、我慢しきれないところがあると、私は思ってしまいます ^^;)

投稿: tak | 2010年5月22日 20:12

alex さん:

>私は,一連の民主政権の失敗の原因は、「政治主導に疎外感を持った官僚の無意識的なサボタージュと経験と能力に欠けたアマチュア閣僚達」という視点で見れば、大半の部分が解明できると思っています

ものすごく、端的に言えてますね。
山辺響さんへのレスにも書きましたが、「官僚がスネている」 ということが感じられます。

このすきま風は、かなり問題です。

投稿: tak | 2010年5月22日 20:14

皆さんの投稿を読んで頭の中が整理されてきました。
現況の政官の関係は、対戦チームの情報をしこたま持った老練なキャッチャーと、ちやほやされて入団した新人ピッチャーといったところでしょうか。

ピッチャー:
わいは、キャッチャーのサインなんかいらんわい。球種はこっちが決めるんや。あんたはわいが投げた球を受け止めてたらええんや。

キャッチャー:
ほな、そうしましょか、あんたがそういうんならかめへんで。

で、プレイボール。一回の表から暴投と四球の連発、その後連続ヒットで大量失点。ピッチャーはいまさらキャッチャーにサインはそちらでお願いしますとも言えず右往左往。

観客(国民):
こんなん野球になってへん、金(票)返せー

っといったところでしょうか。

投稿: ハマッコー | 2010年5月22日 21:31

ハマッコー さん:

なるほど、わかりやすい喩えですね (^o^)

投稿: tak | 2010年5月22日 22:57

この問題で国を責めるのは間違いですね。対応の権限は全て県庁と県知事が持っています。

4/20に県知事に報告があり、国に報告した段階で対策本部ができてます。もっとも何もできないので電話番のみでしょうが。国有地の使用や自衛隊出動なら大臣の許可が要るかもしれませんが、封鎖や殺傷処理は県で決められたはずです。

どうも3月末から体調の悪い牛は確認されていたようで、4/9に口蹄疫の症状を現地で確認した、という話もあります。知事に報告されるまで間が空き過ぎたのと、未だもって広域用の対策になってない事が拡大の原因かと。

インフルエンザ・パンデミックの経験が活かされてませんね、人に空気感染するウィルスならどうなっていたことか。

東国原さんも国に泣きついてばかりでは、地方自治など夢のまた夢ですね。

赤松さんも、官僚の対応は問題が無い、と言えば省内の人気はうなぎ登りに?

投稿: vagari | 2010年5月25日 00:08

vagari さん:

県の役人の対応が悪かったというところもあったんですか。

東国原知事と役人の関係もビミョーというか、ビミョー以上のものがあるようですね。

やれやれ。

投稿: tak | 2010年5月25日 08:22

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