3D 映像を巡る冒険
今朝、アキバのヨドバシカメラの前を通りかかったら、3D テレビの大プロモーションが行われていた。パナソニックが 4月下旬に発売してから、やたらと注目が高まっているらしい。ただ、注目は高まっているらしいが、「買った」 という人は身近に一人もいない。
映画では『アバター』だの『アリス・イン・ワンダーランド』だの、3D 映画が大ヒットして、09年の世界の映画興行収入のアップに貢献したらしい。今や、映画でヒット作を作りたかったら 3D にすればいいみたいな勢いである。
ただ、私としては、3D ならなんでも OK と言わんばかりの風潮には疑問を呈したい。昨年、たまたま 3D 映画が連続してヒットしたからといって、猫も杓子も 3D というのはアブナい。当たり前の話だけど。
というのは、『アバター』にしろ『アリス・イン・ワンダーランド』にしろ、「3D 映画ってどんなものなのか、話のタネに一度見てみよう」という観客が多かったという、プラス α の要素が大きかったと思うのだ。つまり物珍しさというファクターである。
物珍しさで一度見てみて、「やっぱり、3D 映画ってすげぇわ、また見よう」と思う人もいれば、「ふーん、3D 映画って、確かにすごいけど、まあ、どんなもんだかわかったから、もういいわ」と思う人もいるだろう。その比率がどうなるかわからないが、「3D 映画ならなんでもいいから、片っ端から見よう」なんて思う人は少数派だろうと思うのだ。
映画の出来がよくて、しかも 3D との相乗効果が素晴らしいという作品なら、今後も当然ながらヒットするだろうが、「話のタネに見てみよう」 というファクターは徐々に比重が軽くなる。そのうち多くの映画ファンが「3D 慣れ」してしまったら、もう、普通の映画と同じ土俵で勝負するしかなくなる。
かなり先の話になるだろうが、「3D なんて、コストばかりかかって儲けが少ないよね」ということになるかもしれないし、あるいは、3D があまりにも当たり前になった結果 「二次元だと全然インパクトがなくて、誰も振り向かなくなっちゃったよね」ということになるかもしれない。
ただ、3D が当たり前になるためには、面倒な眼鏡なんかかけなくてもよくて、どんな角度から見ても自然な立体画像として見えるレベルまで進化しなければならない。3D 映像は、技術的には発展途上段階にあるというほかない。
家庭用テレビに関しては、わざわざ正面に座ってかしこまって見るようなヘビーなプログラムでないと、3D の意味はなかろう。どうでもいいお笑いやバラエティを、眼鏡かけてかしこまって見てもしょうがない。近頃ただでさえ、番組制作費が低く抑えられているし。
3D テレビが一般化するまでには、ハード的にもソフト的にも、まだまだかなりの時間がかかるだろう。
| 固定リンク
「世間話」カテゴリの記事
- あおり運転されたら、すぐに停まって先に行かせてしまう(2025.02.14)
- マンガに出てきた「空き地+土管」の景色を巡る冒険(2025.02.04)
- 「通常を逸脱する量を食うな」という注意書きの裏事情(2025.01.28)
- 「ふてほど」には、「ふてくされるにもほどがある」かも(2024.12.02)
- 「透析しないと死ぬ」は「透析しないと死ぬ」という意味(2024.11.26)
コメント
3D映画「タイタンの戦い」はハリーハウゼンの作品に割と忠実なリメイクだそうですが、3Dや最新CGといった売りがある事で、現代的な解釈とか余計なひねりを加えずとも古い名作がリメイクされるという流れは続きそうですね。
個人的にはモバイルやPCで動画見る機会が増えてて、テレビを付けるのはそもそもかしこまった時という事が増えたように思います。
ぎりぎりまで地デジに買い換えないという人も多いし、ワールドカップやロンドン五輪も普及のきっかけとなるんじゃないでしょうか?
投稿: clark0226 | 2010年5月 8日 02:17
clark0226 さん:
>3D映画「タイタンの戦い」はハリーハウゼンの作品に割と忠実なリメイクだそうですが、3Dや最新CGといった売りがある事で、現代的な解釈とか余計なひねりを加えずとも古い名作がリメイクされるという流れは続きそうですね。
なるほど、3D という手法そのものがリメイクの意義になると。
>個人的にはモバイルやPCで動画見る機会が増えてて、テレビを付けるのはそもそもかしこまった時という事が増えたように思います。
単に付けっぱなしというのでは、3D テレビの意味はないですね。
ただ、かしこまって見るというニーズのためだと、時間当たりのコストが高い ^^;)
>ぎりぎりまで地デジに買い換えないという人も多いし、ワールドカップやロンドン五輪も普及のきっかけとなるんじゃないでしょうか?
効果を最大限に発揮するための撮影技術が追いつくでしょうか?
まあ、必死で慣れるんでしょうけどね。
投稿: tak | 2010年5月 8日 09:36
サッカー好きの知人に聞いた話ではかなり臨場感があったようで、サッカーの様な奥行きのあるスポーツには向いてるようです。
自分としては、まだ買い換えてないテレビがあるので、ギリギリまで待って通常テレビとの価格差が3,4万円に縮まってたら検討範囲かと思います。
ゲームやアダルトでも3Dは増えてくようですね。
投稿: clark0226 | 2010年5月 8日 10:35
clark0226 さん:
>サッカー好きの知人に聞いた話ではかなり臨場感があったようで、サッカーの様な奥行きのあるスポーツには向いてるようです。
ほほう、そうですか。
>ゲームやアダルトでも3Dは増えてくようですね。
なるほど、なんにしろ、そっち方面の需要から入るのが強いんですね。
投稿: tak | 2010年5月 8日 20:11
3Dのコンテンツは撮影の仕方からして2Dとは違うようなので、同じ番組を両方で作るのはどちらかがクオリティ的に妥協の産物になるケースが多くなるんでしょうね。
例えば、サッカーの試合であれば、通常はやや俯瞰的な角度から撮影しますが、3Dだと低い視線から撮って奥行きを見せるようにするそうです。従来型の受像機でそういう絵を見ても…ってことです。
まあ、どのみち大半の番組はもう少しハイレベル(現場とか技術とかいうレベルに対して)の妥協の産物なのでしょうけど。わはは。
投稿: きっしー | 2010年5月10日 18:51
きっしー さん:
>3Dのコンテンツは撮影の仕方からして2Dとは違うようなので、同じ番組を両方で作るのはどちらかがクオリティ的に妥協の産物になるケースが多くなるんでしょうね。
そうでしょうね。
3D を意識して撮ったサッカーの中継は、フツーのテレビでみたら、つまらないでしょう。
「くそ、もっと全体を映せよ、全体を!」 と言いたくなるだろうと思います。
3D というインパクトたっぷりの刹那的効果を得るために、犠牲にするロジカルな視点が多すぎるかもしれません。
>まあ、どのみち大半の番組はもう少しハイレベル(現場とか技術とかいうレベルに対して)の妥協の産物なのでしょうけど。わはは。
制作費は削られる一方だし。
まあ、それまでが金を湯水の如く使いすぎてただけですが。
投稿: tak | 2010年5月10日 20:29