事業仕分けを免れた? 「正しい和食」
事業仕分け第二弾が終了したようだが、私が前にさんざんクサした「正しい和食認証制度」を目指すという 「日本食レストラン海外普及推進機構 (JRO)」という公益法人は、どうやらぎりぎりセーフで設立に成功し、仕分けの網をかいくぐったようである。
この「正しい和食認証制度」というのは、話題になった当時、ブログの世界の一部では、誰とは言わないが、大いに賛意を示す方が多かったと記憶している。当然ながら、私みたいにさんざんクサすブロガーだって多かったわけだが。
まあ、私だって ”Japanese Restaurant" という看板でわけのわからないギトギトした料理を食わせる海外のレストランが多いのは、困ったものだと思っている。しかしその問題が国の施策一つで解決できるなんて、夢にも思わない。大いに賛同した方は、この点にどんな期待というか、幻想を抱かれたのだろうか。
私はこの問題に関しては結構しつこくウォッチし続けていて、平成 19年 12月 30日には "「正しい和食」 その後" という記事を書いている。この記事で、「正しい和食認証制度」という大上段に振りかぶった意気込みがどこかに消え去って、ただ、農水省官僚の天下り先を確保するという目的だけが、しっかり達成されているのを確認している。
そもそも「正しい和食認証制度(あるいは推奨制度)」というものが実効しないであろうことは、この記事の中で述べているが、改めて、以下に再録する。
本当にどこに出しても恥ずかしくない日本食レストランなら、わざわざこんな 「推奨マーク」 なんてもらわなくても、既に十分な 「のれんの力」 を持っている(船場吉兆のことは、ちょっと忘れていただきたい)。他の二流店と同じマークなんて付けたら、その他大勢と同列視されかねないから、「そんなものいらない」ということになる。
オートクチュールのブランドが、「ウールマーク」なんて付けないのと同じことだ。
実際には、このマークを欲しがるのは基準すれすれの二流店だろう。そうなると、マーク自体の「ブランド力」 が、それほど大したものじゃないということになるのは目に見えている。要するに、「あんまり意味ないよね」 ということだ。
ということで、その後の経緯をみるとまさにそんな感じのようで、「日本食レストラン海外普及推進機構(JRO)」のサイトの事業報告をみても、「渡航先で安心してまともな日本食を食べたい」と期待した人たちが満足するような活動なんて、ほとんどなされていない。設立されて、もう 2年過ぎたのに。
そもそも当初謳われていた「認証制度」というのが「推奨制度」にトーンダウンしていて、しかもあれから 2年経ったのに、どの国でどんなレストランを「推奨」することになったのか、まったく報告されていない。個人的には、まともな申請がなくて推奨するにもしようがないんじゃないかと想像する。
結果として私が元々主張していたように、「まともな日本食を食べたかったら、まともなガイドブックを参考にすればいいだけ」ということになっているのである。で、こんな法人に、まあ、全体からみたらたいした額じゃないのだが、ちゃんと国の予算がつけられているのだよね。
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コメント
実際に現行の制度が上手く行っているという話は聞きませんが、私はうまくやれば役に立つ制度だと思います。
あまり和食になじみのない外国の方は、「これはオーセンティックな和食なのか」「美味しくないような気がするのは、ニセモノだからなんだろうか」「美味しいけど、なんか純粋な日本料理ではないような気がする」などなど、結構不安に感じるもののようです。
私も、外国に住んでいた頃、しばしば一緒に食事に行った人に「Is this good Japanese food to you?」といった感じで評価を聞かれました。今食べたばかりなんだから、美味しいかどうかぐらい自分で判断すれば良さそうなものですが。まあ、「日本料理の美味しさがわからないのはアンタの味覚の方の問題だ」とでも言わんばかりの空気は、日本でも外国でもしばしば感じるところだし、同時に妙な日本料理もどきの店も増えてますからねえ。
投稿: きっしー | 2010年5月25日 23:20
私は,この「正しい和食認証制度」 をサポートしたいですね
正しい和食という定義は、なるほど、フランス料理屋イタリア料理に比較して難しいかも知れない
カレーライスは和食か?
とんかつは和食か?
言い出すときりがありません
しかし、大部分の日本人の頭と舌(笑)には、オーセンティックな和食というものが、ある程度ハッキリあると思います
和食という枠も,将来的に柔軟に考えればいい
フランスやイタリアもやっているのならやればいいと思いますよ
というのも、欧州では、「JAPENESE レストラン」「SUSHI 寿司」と看板を上げながら,和食とは似ても似つかないものを平気で出してくる外国人経営の「日本レストラン」??が多いのです
特にフランスでは、パリ中心部のの一流店は別にして、ほとんどの「日本レストラン?」は、フランスの新食品衛生法に落第した中華料理屋が転身(変身?)して、評判の高い「和食」に衣替えしたのです
以前、その驚くべき実態をレポートしたテレビ番組もありました
ところが、フランス人達は、その国籍不明なたべものを。和食・寿司と信じて疑わないのです
さらに、私のブログのコメンター、パリ在住のbonbonusさんも、この問題を嘆いておられます
(今日もコメントしていたな~)(笑)
こ~ゆ~インチキ・危険性を排除しなければなりません
私も,知らずに、そ~ゆ~インチキ寿司屋に入って,幻滅するかも知れない
繰り返しになりますが,正確に和食の外縁を認定することは無理かも知れませんが,日本人が「これは間違いなく和食だ」と認める料理,コアな典型的な和食の認定ぐらいは可能だと思います
つまり、マキシマムを求めることはあきらめ、ミニマムを認定することからはじめる
これで、とりあえずはいいかと思います
さもないと、国辱的誤解を外国人達に定着させることになります
投稿: alex99 | 2010年5月26日 00:52
まだこんなことをほざいている人がいるんですか?結局、日本からの保存剤・ケミカル付けの食料品を海外で売り込む、キッコーマンなどを代表とするロビイストの魂胆でしょう。それでもEU向けに、遺伝子操作をしていない大豆からの醤油を特別に生産しているのはキッコーマンですけどね。海外の方が本当の和食食材があると言うことですかね。
投稿: pfaelzerwein | 2010年5月26日 03:39
>pfaelzerwein さん
すいまんせん。
キッコーマンのくだり、
おっしゃっている意味がわかりません。
私の悪い頭で文章を要約すると・・
キッコーマンが海外で売っているしている醤油は
保存剤・ケミカル付け(ママ)で、
遺伝子操作をしていない大豆からの醤油であり、
それが「本当の和食食材」
という事ですか?
投稿: リュウT | 2010年5月26日 10:03
売っているしている
→売っている
です。
投稿: リュウT | 2010年5月26日 10:04
「まだこんなことをほざいている」と強い調子の言葉をいただいたのでもう一度コメントさせていただきます。
この制度と「キッコーマンを代表とするロビイスト」との関係がわかりませんが、ずいぶん飛躍した話ではありませんか?だいたい、「なんちゃって日本料理」の店のほうが安価な「ロビイスト銘柄」やそれ以下のものを使用していそうな気がします。
本質的な問題は、一方で「なんちゃって日本料理」が増殖していて、日本人としては不本意だということと、他方で「本当の日本料理」なんて判定が(特に役所によって)できるのかということでしょう。もし遺伝子大豆を使っているか否かが重要なポイントなら、単にそれを制度の判定項目にするべきなのではないでしょうか。
「海外の方が本当の和食食材があると言うことですかね」も、言うまでも無く暴論です。良い食材もあるでしょうし、ご当地の食材を上手に使った和食店もあるでしょうけど、単にそれだけのことです。
投稿: きっしー | 2010年5月26日 10:14
きっしー さん:
>実際に現行の制度が上手く行っているという話は聞きませんが、私はうまくやれば役に立つ制度だと思います。
確かに「うまくやれば」役に立つとは思いますが、官僚の天下り先の特定非営利活動法人とやらが、それを 「うまくやれる」 とは、私はこれっぱかりも期待していないのです。
主旨とか目的とかは立派でも実効性がなければ意味がないという、「仕分けの論理」 が適用されるところだと思っているのです。
要するに、「民間にやらせちゃダメなの?」 って感じで。
投稿: tak | 2010年5月26日 13:34
alex さん:
>私は,この「正しい和食認証制度」 をサポートしたいですね
既に 「認証制度」ではなく 「推奨制度」 になってますが、まともにやろうとしたら、かなりの金額が必要になると思います。
それを国庫からの出資でやる意味があるのかどうか。
やるとしたら、「推奨マーク」 を有料でライセンスするしかないと思います。もちろん、ちゃんと審査して。
ライセンスを申請するのは、二流店だけだと思いますが、それでも、一応は本物(っぽいの) と明らかな偽物が区別されるだけでもいいでしょう。
ただ、区別できる土壌をつくるぐらいなら、また繰り返しになりますが、民間の方がいいと思いますがねえ。
ただ、日本の企業は、他者をランク付けするの嫌いますからね。地元企業の方がやりやすいかも。
投稿: tak | 2010年5月26日 13:41
リュウT さん:
まあ、キッコーマンのベーシックな商材はそんなようなものですが、差別化商材もヨーロッパで売ってるということだと、私は読み取りましたが。
その辺、私はよく知りませんが。
投稿: tak | 2010年5月26日 13:44
pfaelzerwein さん:
すみません、一つレスを飛ばしてしまいました。
「キッコーマンなどを代表とするロビイストの魂胆」 なのかどうかは、私にはわかりません。
そうなのかもしれないし、そうでないかもしれない。
そんなことをして、投資に見合うだけの見返りがあるのかどうかも、わかりません。
そして、「正しい和食」 の普及とキッコーマンの利益増大がリンクするのかどうかも、私には判断つきません。
正しい和食だろうがインチキ和食だろうが、醤油を使ってもらいさえすればいいというのなら、「正しい和食」 普及に投資する意味はないですね。
もし 「正しい和食」 が普及する方が利益が上がるのだとしたら、私なら、効果の怪しい法人事業のためにロビー活動するより、自前でプロモーションします。
投稿: tak | 2010年5月26日 13:55
(もう一度)きっしー さん:
>だいたい、「なんちゃって日本料理」の店のほうが安価な「ロビイスト銘柄」やそれ以下のものを使用していそうな気がします。
「それ以下のもの」 から、「ロビイスト銘柄」 へのトレードアップを狙ってたりして。
(という文脈の可能性もありそうなので、一応書かせて頂きました)
もっとも、それが狙いなら、一つ前のレスで書いたように、私だったらロビー活動なんかより、圧倒的なマーケティング力を使って、自前のプロモーションしますけど。
(マジで、やりゃいいのに)
投稿: tak | 2010年5月26日 14:10
(念のため、もう一度)alex さん:
>繰り返しになりますが,正確に和食の外縁を認定することは無理かも知れませんが,日本人が「これは間違いなく和食だ」と認める料理,コアな典型的な和食の認定ぐらいは可能だと思います
つまり、マキシマムを求めることはあきらめ、ミニマムを認定することからはじめる
これで、とりあえずはいいかと思います
その程度のことでも、あるとないとでは大違いというのは、よくわかります。
わからないのは、どうしてそれを (こんなにも当てにならない)国とか官僚の天下り先の法人に期待するのかということです。
その程度なら、ガイドブックで済むんじゃないかと。
日の丸を背負って、あちこちに馬鹿馬鹿しいほどの気を使いながら、当たり障りのない推奨をチマチマとやるより、民間の方がずっと小回りがきいて、独自の方針を明確化したガイドを出せます。
もちろん、ガイドブックの編集者が、金で転んでガセ情報を書くこともあるでしょうが、それはそれで、以後はそのガイドブックが信頼性を失って、売れなくなるだけです。
これまでも、意義と目的という観点では文句の付け所のない特殊法人がたくさん作られましたが、その期待通りにまともに機能しているのは少数です。
ですから、必要性と、特殊法人の存続というのは、分けて考える方がいいと思います。
私がさんざんクサしているのは、正しい日本食を普及させようという目的ではなく、それが単に天降り先になって税金の無駄遣いにおわるということです。
投稿: tak | 2010年5月26日 14:55
一度叩いた動きが未だに活きているので、驚きのあまり端折り、「風が吹けば桶屋が儲かる式」になりました。既に公に批判しているので繰り返しませんが、少しだけ考察の要点を付け加えておきます。
http://blog.goo.ne.jp/pfaelzerwein/e/08ebe5d87caff9361e4998649af299f5
日本は、海外に出る旅行者に安全な日本食生活をおくらせるために一銭も使えるほど豊かなのか?
日本食推進というのは最終的に世界的競争力の全く無い日本の水稲のジャポニカ米の生き残りを掛けた販促に他ならない。
中国人もフランス人も日本の偽物の中華やフランス料理に文句を言わないどころか評価本で商売をしている。なぜ「ブリジストン評価本」ではいけないのか?
上で挙げた醤油会社は只の一例で、最終的には日本の農水産行政だけでなく社会をも駄目にしている水稲米経済秩序が深く係わっていることは知っておくべきでしょう。要するにグローバリズムとローカリズムの問題として捉えるべきなのです。
また、この件を高等な日本食文化問題と扱うと、「わからないのはアンタの味覚の方の問題だ」が捨て台詞として用意されていて、そもそも客観評価などはそうした分からない人のためにあるものなのです。海外での日本食を語るよりご自分の食卓の素材を点検される方がよいのではないでしょうか?
投稿: pfaelzerwein | 2010年5月26日 15:44
う~~ん
私も「まだ、こんなことをほざいて」いますが(笑)
私は現地日本料理屋の仕入れの実態までは知りません
しかし私は商社でしたが、商社の欧州各店の食料部は、多くの水産物などの和食の食材を欧州で買い付けて日本へ輸出しているし、きっしーさんがおっしゃるように,日本料理店でも豊富な現地調達部分が多いはずです
それに和食は,すべての食材を日本から航空便で輸入しているわけでもないし、キッコーマン製品だけで出来ている訳でもない
キッコーマンやロビイストうんぬんは、私には、いわゆる陰謀論としか思えない(笑)
推奨制度は,国庫からの出資だから,金がかかる・・・とtak-shonai さんはケチっていますが(笑)、そこは、あの蓮舫さんあたりに「仕分けて」いただければ,これからは格安でも可能かと(笑)
ただ、民間の方が安ければ,それでも結構ですよ
投稿: alex99 | 2010年5月26日 21:37
「すべての食材を日本から航空便で輸入しているわけでもない」
もちろんそうなんですが、和食がそこまでの食文化にはなっていないです。例えば日本のスパゲッティーナポリタンのように。その次元に至るまでには数々の試行錯誤の偽物が必要なんでしょう。
しかし、実際には日本からの旅行者が「本物の和食」と思い尚且つ手軽に口に入るものは、保存料付けの生姜であったり、缶詰薄揚げであったり、期限切れ中国産冷凍餃子であったりするのです。冷凍・半加工・即席食品類は、日本へ飛ぶ人件費圧縮の航空会社のケータリングの素材にも欠かせません。
日本の食卓を良く観れば分かると思いますが、ご指摘のように日本産原料など極限られますね。しかし流通上は、半加工した商品が多く、そうした日本企業の市場です。それに対して、同じ行程で作ったものを中国などから直接安く世界に出すのに日本の企業など不必要な訳です。今や日本製海苔などどこで買えるのでしょうか?日本食関連は、嘗てのロシンアンマフィアから蛇頭の資金源となって来ているだけでなく、日本抜き産業となって来ているに間違いありません。
そうした流通を制御することに上の事業の魂胆があります。そして、それは水稲米輸出の前菜となる雑魚でしかないのです。
投稿: pfaelzerwein | 2010年5月27日 15:11
pfaelzerwein さん:
ご指摘の経済的背景は、もしかしたらあるのかもしれませんが、それほど切実なものではなく、私としては、単に農水省官僚が天下り先を確保しただけと思っています。
天下り先さえ確保してしまえば、あとは取り立ててなにもしないでテキトーに事業報告書を書いているだけです。
投稿: tak | 2010年5月27日 19:40
alex さん:
>ただ、民間の方が安ければ,それでも結構ですよ
民間の方が高くて非効率ということは滅多にありませんので、大丈夫です (^o^)
投稿: tak | 2010年5月27日 19:42
pfaelzerwein さんの、ご指摘
これは、もっと掘り下げて考えた方がいいのでは?
日本の食糧自給率とか言う問題も,切り口によっていろいろで
tak-shonai さん
そのうち、あらためて、エントリーしてみてください
それに値すると思います
人間は生物として
○ 食べる
○ 生き延びる
○ 種族保存
ができて、なんぼですから
投稿: alex99 | 2010年5月28日 02:46
alex さん:
>pfaelzerwein さんの、ご指摘
>これは、もっと掘り下げて考えた方がいいのでは?
日本人の食卓と外食が、怪しげな加工食品ばかりになっているのは、今に始まったことではなく、既に相当ヒドイ状態になっています。
一方、スローフードの思想のように、それを避けて、まともなモノを食べようという動きも出ています。
これは、「正しい和食」とは別の、もっと根本的な問題だと思います。和食だろうが洋食だろうが、中華料理だろうが、係わってきますね。
個人的には、街の中華料理店の食材は、かなり怪しいと思っているのですが。
化学調味料の固まりみたいな感じでもあるし。
投稿: tak | 2010年5月28日 10:51