「公示」と「告示」を巡る冒険
参院選が今日告示されたが、こういうタイミングになると、私の本宅サイトの "「公示」と「告示」と「総選挙」" というページへのアクセスが急増する。試しに 「公示 告示」 の 2語でググって見たら、297,000件のうちの上から 3番目にランクされていた。なるほど、これなら増えるのも道理だわ。
このページでは、選挙関連用語としての「公示」と「告示」の違いについて述べている。簡単に言うと、総選挙の場合は、天皇の国事行為として憲法第 7条第 4号で規定されているので、「公示」と言い、それ以外は「告示」なんだそうだ。文言は以下の通り。
第7条国事行為
天皇は、内閣の助言と承認により、国民のために、左の国事に関する行為を行ふ。
(1,2略)
3衆議院を解散すること。
4国会議員の総選挙の施行を公示すること。
この条文を読むと、フツーなら 「あれ、おかしいんじゃないの?」 と思うはずだ。参院選は「総選挙」じゃないのに、どうして「告示」じゃなくて、「公示」 なのかと。
公選法で明確に 「総選挙」 と規定されているのは、衆議院議員の選挙(補欠選挙を除く)のことで、一方、参議院選挙の場合は、「通常選挙」 と呼ばれる。公選法の第 31条と 32条の規定で明確に区別されていて(参照)、いずれにしても、参院選のことを「総選挙」と呼ばないというのは、日本の常識となっている。
ところが、総選挙じゃないはずの参院選が、天皇の国事行為として長年にわたって「公示」されている。この辺のご都合主義的解釈に関しては、Wikipedia に次のように記されている。(参照)
ただし国会議員の選挙の公示について定めた日本国憲法第7条4号の「総選挙」については同条が「国会議員の総選挙の施行を公示すること」と規定しており、衆参問わず各議院の国会議員を選出する基本的な選挙の公示を天皇の国事行為として定めた趣旨であると解されることから憲法7条4号の「総選挙」には参議院議員通常選挙が含まれると解するのが通説である。
つまり、辻褄合わせの解釈運用である。文字通りに解釈すれば公選法が憲法違反をしているのに、なあなあの解釈で 「天皇の国事行為として定めた趣旨であると解される」 などと、苦しくもテキトーなことを言って済ませている。単に文言上のことなので、きちんと整備しさえすればなんの問題もなくなるのに。
かくのごとく公選法というのは制度疲労の極みにあるのに、今回のネット選挙解禁見送りにも見られるように、ものすごく頑固なものであるようなのだ。その背景には、この制度疲労の隙間をうまく突いた選挙運動の指南をする選挙プロみたいな連中がいて、そいつらが権力の中枢と癒着しているからだと、私は思っている。
こんなだから、この国の選挙はかくもばかばかしくてつまらなく、若い連中の選挙に行く意欲を削ぐようなものなのだ。そして、選ばれる方もジイサンばっかりなので、若い連中が投票しないのはむしろ好都合ぐらいに思っているのだ。
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コメント
いつぞやtak さんが指摘していた選挙カーに関する条文でだいぶ慣れましたので、これくらいなら驚かないようになりました。
公職選挙法が抜本的に改訂されてしまうと、選挙カーに関するあの世界に冠たるミラクルな名文がなくなってしまうのではないかと心配しています。
わはは。
投稿: きっしー | 2010年6月24日 15:56
きっしー さん:
>いつぞやtak さんが指摘していた選挙カーに関する条文でだいぶ慣れましたので、これくらいなら驚かないようになりました。
この程度は、無理矢理な解釈運用しなくても憲法と矛盾しないように、ちょっと法改正すればいいのにと思います。
>公職選挙法が抜本的に改訂されてしまうと、選挙カーに関するあの世界に冠たるミラクルな名文がなくなってしまうのではないかと心配しています。
いっそ、世界遺産として残す方向に動きましょうかね。
投稿: tak | 2010年6月24日 20:25