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2010年9月 6日

「くらコーポレーション」 の試験官が辞表を書いた方がいい理由

9月 1日に MBS で放映された特集番組が話題になっている。くらコーポレーションという外食チェーン企業の、「20人内定辞退」問題だ。表面上は内定者が自発的に「内定辞退届」を書いたような形になっているが、内実はどうみても理不尽な内定取り消しに等しい。詳細は こちら をご覧いただきたい。

くらコーポレーションという会社を私は知らなかったが、くら寿司という回転寿司チェーンを運営する会社らしい。この会社の就職内定者が、入社間近の 3月下旬に「二泊三日の研修」で集められ、意味不明の課題をつきつけられた。それができなかった者はさんざん罵倒された挙げ句に、「内定辞退届」を書かされたというものだ。

意味不明の課題ということで挙げられているのが、「くら社員三誓」の暗唱というものだ。暗唱した内容を、試験官の前で極限のプレッシャーの下に 35秒以内で言わせる。調べてみたところ、暗唱するのはこんなものである。

◇くら社員三誓◇

ひとつ、私は人と会話することが大好きな社員となります。
その為に人に好意を持ちます。
人を喜ばせることが自分の喜びと思います。
いつも明るい笑顔で自分から積極的に話しかけます。
また、常にプラス思考で自分と会話すれば相手が明るく元気になれるように働きかけます。

ひとつ、私は自ら進んで仕事を覚える社員となります。
その為にマニュアルをしっかりと覚えます。
常に向上心を持ち新しい仕事に取り組みます。
またどんな仕事を頼まれても自分を成長させるチャンスと考えて喜んで引き受けます。

ひとつ、私は社会人としての基本を身につける社員となります。
その為に早寝早起きをします。
手洗いうがいを徹底し、バランス良く食事し、体調管理に気を配ります。
毎日新聞・本を読み知識を深めます。また、交通ルールやエチケットを守り健全な社会生活を送ります。

この会社の就職試験官は、どうみても自らの会社の「三誓」の最初の項目を破っているとしか思われない。研修会参加者に内定辞退届を書けと迫る前に、自分の方がさっさと辞表を書くべきだろう。「自分と会話すれば相手が明るく元気になれるように働きかけます」なんて、どのツラ下げて言えるんだ?

話を元に戻すが、この「三誓」というものを暗唱して言うのに、40秒以上かかった者は、「家に帰れ」と言い渡されるのだそうだ。記事ではこれを MBS のアナウンサーが普通に読んだら 1分ぐらいかかるとし、早口で読んでも 35秒近くかかるとして、かなり理不尽な課題だとしている。

自分でトライしてみたら、確かに早口言葉が得意な私が必死にぶっ飛ばして読んでも 32秒かかった。読めることは読めたが、内容なんてちっとも吟味できなかった。つまり、こんなものを早口で言うことに、意味は見いだせなかった。

くらコーポレーションの内定者研修が、「研修」に名を借りた 「内定者いじめ」で、「内定辞退届」を書かせるためのものとしか思われないというのは、この特集番組をみたものの共通した印象になるだろう。

私は業界団体関連の仕事を長くしていて、4月頃に中小企業が合同で行う「新入社員研修会」を運営していたことがある。その中で、就職活動に関するアンケートをとったが、面接時のセクハラなど、企業側の理不尽な応対に不満をもらす回答が毎年いくつかみられた。

こうした話を聞くにつけ、企業は求職者を採用して自社の社員とするまでは、「お客様」なのだということをわかっていないと、つくづく感じた。

求職者は、採用してしまえば「社員」になるから、業務命令に従わせることができる。しかし、面接時のセクハラ質問や、理不尽な課題を出しての求職者いじめをしてしまったら、落とされた者たちは「逆広告塔」と化す。企業はそれを意識していない。

自分の実力不足で落とされた者は仕方がないと思うだろうが、明らかに理不尽な仕打ちを受けた者は、周囲の者にその会社の悪口を言いふらすだろう。数年前ならば、それはごく限られた範囲の口コミにすぎなかっただろうが、今はインターネットというメディアがある。

誰でもが全世界に向かって、企業の隠された実情というものを発信できるのだ。それを企業側は知る必要がある。くらコーポレーションという会社のリクルート関連のひどさは、かなりのレベルのもので、これは既存社員の不満のガス抜きのためにやらせてると思われても仕方がない。

とりあえず、私は「くら寿司」というチェーン店で回転寿司を食った記憶がないので、ことさらに必要以上の不愉快さを味わうことだけは免れたが。

 

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コメント

パワハラの一言で切り捨てられてしまうレベルの話ですね。
この試験を考えた者は
「そのくらいやれるかどうか情熱を確かめたかったんだ」
くらいのことは言いそうですが。

殿様目線ですね。完全に。

投稿: キセ | 2010年9月 7日 08:13

キセ さん:

>この試験を考えた者は
>「そのくらいやれるかどうか情熱を確かめたかったんだ」
>くらいのことは言いそうですが。

情熱を確かめるのは、やってもいいんですけど、
それは入社試験の段階でやるべきことで、
内定者を集めての研修でやるべきことじゃないですね。

これでは「内定者の研修」ではなく、「最終試験」です。社会的責任をもつべき企業として、非難されて当然です。

投稿: tak | 2010年9月 7日 11:47

このチェーンには行ったことがありませんが、こういう企業(といえるかどうか)は、消費者の協力で、かならずつぶさなければ・・・と、怒りを感じます
経営陣のやり方が、極悪非道(笑)
餃子の王将とかにも、これに似た評判がありましたね
こういう、従業員(候補)を人間として扱わないモラルの無い企業では、客に出す食品も、果たしてまともなものを出しているのかどうか


投稿: alex99 | 2010年9月 7日 14:47

alex さん:

社員にわけのわからん課題を押しつけて、洗脳まがいのことを行うことに関しては、個人的にはまったく評価しませんが、企業方針としてはまあ、全否定しなくてもいいかなと思います。

私が問題としたいのはただ一点、本来なら入社試験で行うべきことを、内定者の「研修」として課し、できなかった者に内定辞退を迫るというのは、実質的には内定切りだということです。

三月下旬に「内定切り」をされてしまったら、新卒者は途方に暮れますよ。若者の人生を狂わせてしまいます。

東証一部上場企業ということは、大きな社会的責任をもっているということですが、それを放棄していると言われても仕方ないんじゃないかと。

投稿: tak | 2010年9月 7日 17:05

この企業を擁護する気は全くありませんが、
「内定をもらったくらいで安心し、
 努力を怠るような者は必要ない」
くらいのことは言いそうだなあ・・・と。

やらせてる内容が理不尽そのものなので、
成立しない話ではありますけども。
本当に、若者の人生をおもちゃにしただけだと思います。

投稿: キセ | 2010年9月 8日 08:41

キセ さん:

>この企業を擁護する気は全くありませんが、
>「内定をもらったくらいで安心し、
> 努力を怠るような者は必要ない」
>くらいのことは言いそうだなあ・・・と。

そのあたりの人間性は、入社試験の段階で判断すべき事で、一度内定を出した以上は、責任持って雇用すべきでしょうね。

投稿: tak | 2010年9月 8日 10:32

私はくら社員の1人ですが、ここまで厳しい研修に耐え抜いた者でさえ、1年も経てば半分近く辞めているのが現状でしょう。私の勤務地でも、7人いた同期が今や2人。入社1年半も経たない内に自ずから出て行った者ばかりです。
恐らくは会社としても余計な人件費を、すぐ辞める人間に使いたくないから、最終段階で篩に掛けたって所でしょうね。因みに私自身は幸い怒鳴られる対象には殆どなりませんでしたが、それでもかなり肉体的にも精神的にも疲れました。しかし、「期間中はタダ飯食わしてくれるし、3日間の給料も出るぞ~」と、ささやかな欲望のために耐え抜きました。ま、そこまでして入る価値がここにあるかと言えば、全くないですけど(笑)何にせよ、辞職の強要一歩手前まで迫り来るのは私の時もありましたし、それを耐え抜いて長い事ここで働くメリットなんてありませんから。安月給、ボーナスなし、退職金なし、社員は冠婚葬祭事故病気など、万人に値する重大事項でしか有給が使えない(←個人的にこれが1番のデメリット!)。出来る贅沢は程度が知れており、子供でも作ればそれこそ養育費と老後の蓄えだけで精一杯、何も買えないどこにも行けない職場と自宅の往復暮らしを、夢も希望もないまま何十年と続ける事は覚悟しないと。

投稿: 内部告発。 | 2010年9月20日 18:44

内部告発。さん:

書込みありがとうございます。

この件に関しては、9月 20日付で触れましたので、ご覧ください。

投稿: tak | 2010年9月20日 22:10

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