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2010年9月14日

かなり色褪せてしまった 「小沢幻想」

昨年暮れから 「小沢一郎を首相に」「今度こそ、小沢一郎を首相に」「やっぱり、小沢一郎を首相に」と、3度も小沢首相待望論(?)を書いたのだが、それはついに叶わなかった。しかも菅さんに「大差」をつけられての敗北だという。

まあ、僅差で敗れて「俺を幹事長にしろ」と言われるよりはずっとよかったのだが、なんだか肩すかしを食らったような気がしてしまう。小沢さんの党内での影響力は、ずいぶん小さくなってしまうだろう。

今回の代表戦で、これまでの「小沢幻想」がずいぶん色褪せてしまった。最大の幻想は「小沢一郎は選挙に強い」というものである。身近にいる国会議員だけは、いろいろ脅したりすかしたりして半分近くは小沢票にすることができたが、党員・サポーター票の部分ではガタガタだった。彼の選挙戦術が通用しにくくなっていることの証明だ。

第二の幻想は「小沢一郎は豪腕」というものだ。ふたを開けてみたら、そんなに「豪腕」ってわけじゃなかったことがバレバレになった。彼の「豪腕イメージ」は、要するに幹事長という地位にあって、金の配分ができるという裏付けがないと、発揮できないもののようなのだ。つまり、「豪腕」というよりは、単に「金の力」だったのである。

今回の選挙では、彼は幹事長という地位が保証されていなかった。そうなると、言うことを聞くのはよくよくのシンパと子分しかいなくなったのである。昨年の総選挙で、小沢幹事長の力で(?)初当選した一年生議員の中にすら、小沢流締め付けよりは地元に帰ったときの反発の方が恐くて、菅さんに投票したのが多かったみたいだし。

彼の自民党時代には、金丸信という超ややこしいじいさんがバックにいたので、誰も逆らわなかったのだが、今回は渡部恒三というじいさんまで、公然と小沢一郎を批判したからね。逆らいやすくなったわけだ。

それに、民主党員の中には「小沢一郎自身に『ややこしいじいさん』になられたりしたら、それこそうっとうしい」という空気もあったんじゃないかと思う。「あのオッサンにあまり裏で威張りちらされると、やりにくくてたまらん」と思ってる人は多いだろう。今回の菅さんの最大の勝因は、民主党内のこうした空気だったかもしれない。

つまり民主党員は、首相に祭り上げるよりもずっとストレートな意思表示で、小沢一郎を骨抜きにしたかったんじゃあるまいか。要するに政策云々よりも、党内での人望がなかったのよね。人望がないのは菅さんだって似たり寄ったりかも知れないが、反感がないだけ勝つことができた。

今後の民主党人事においても、「小沢幹事長」の可能性はものすごく小さいだろう。「ノーサイドで挙党一致体制」なんて言っても、小沢さんを支持したグループの中から、あんまりややこしいことを言わない人を選んで、党三役のいずれかに付けるみたいなことになるんだろうし。

こうなると、小沢さん、今までもそうだったように「追い込まれると何をしでかすかわからん」みたいな、ものすごいリスク要因になりかねないが、今回に限っては、例の「政治と金」問題で起訴するだのしないだのという件があるので、あまり気軽にケツをまくって与党から飛び出すわけにいかないというシバリがある。

つまり、今回の小沢さんの代表戦出馬は、これまでも数々あった「自爆」のうちの一つということになっちゃったと、結論付けるのが正解なのかもしれない。鳩山さんの根回しで「トロイカ体制」を受け入れて、幹事長になる方がずっと得だったろうに。(もっとも、それが困るので、私は小沢首相待望論を唱えたのだが)

というわけで、小沢一郎という人の「政治家としての状況判断」というものも、そんなに鋭いものじゃなんじゃないかと、私は思ってしまうのだよね。本来なら、これまでの「自爆癖」を見るだけでも、それは分かり切っているとも思うのだが。

とりあえず、「最後のご奉公」をしそこねた今、彼がどのような「次の手」を打つのか、しらけながら見守りたいと思う。

 

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コメント

党員サポーター票ですが、米大統領選と同じく小選挙区ごとに過半数側が総取りする方式の為、全体の得票数は6対4と大差ではないそうですね。
逆にそれでも大差が付いたという事は、選挙に強いと言われつつも、小沢さんそのものの支持率は地域的な格差が無かったという事でしょうか。

投稿: clark | 2010年9月14日 22:47

clark さん:

>党員サポーター票ですが、米大統領選と同じく小選挙区ごとに過半数側が総取りする方式の為、全体の得票数は6対4と大差ではないそうですね。

得票数では 6対4 だったのに大差が付いたというのは、選挙下手だったというか、少なくとも選挙上手じゃなかったんでしょうね。

平均的に過半数以下の票を取るよりも、過半数の地域で過半数の票を取る (それ以外の地域ではたとえゼロ票でも) 戦略でいけなかったのか。

投稿: tak | 2010年9月14日 23:28

以前にも鳩山の浮かれぶりが不愉快だとコメントさせていただきましたが、ホントに笑うしかありませんでした。

現職時にはロクにリーダーシップを発揮できず、知性の低さをさらけだし、世の中にさんざん迷惑をかけ、ボロボロの評価で追い出されたはずなのに、辞めてから党内での自派閥の数の威を借りていっぱしの「実力者」ぶる、という点で森善朗とそっくりです。

民主党も自民党に劣らず老害に蝕まれているように見えます。早く次世代の見識ある人たちに実力をつけてもらいたいところです。まあ、政策・哲学という面でもっと分かり易く政界が再編される方が良いと思いますけど。

投稿: きっしー | 2010年9月15日 11:26

愛知県春日井市の「菅大臣町」も、応援してますって!

 今朝の中日新聞トップは、当然代表選結果でしたが、菅さんのお顔が『運営への秘めたる決意に表情を固く』という訳じゃなく、どちらかというと『苦悶に満ちた表情』だったりしたのは、恣意的なものでしょうか…。

 …まるで『胃液が逆流してきちゃったよ』的な。

投稿: 乙痴庵 | 2010年9月15日 12:42

私的には投票率が低かったのが意外でした。
わざわざサポーターになるのですから関心が高いと思えば、6割後半だとは。

案外、しがらみや付き合いで、という人が多かったということでしょうか。
ま、民主党からしたら、お金支援してもらえて口出ししない、ありがたいパトロンですね。

投稿: vagari | 2010年9月15日 22:45

きっしー さん:

まさに、鳩山由紀夫と森善朗には、同じ不愉快さがありますね。

>まあ、政策・哲学という面でもっと分かり易く政界が再編される方が良いと思いますけど。

それが一番いいと、私も思うのですが、日本の政治の世界では、多くの人が一番いいと考えていることは、決して実現されないんですね。

投稿: tak | 2010年9月15日 23:56

乙痴庵 さん:

>菅さんのお顔が『運営への秘めたる決意に表情を固く』という訳じゃなく、どちらかというと『苦悶に満ちた表情』だったりしたのは、

菅さん、きっと 「柄じゃない」んですよ。

投稿: tak | 2010年9月15日 23:58

vagari さん:

>わざわざサポーターになるのですから関心が高いと思えば、6割後半だとは。

「わざわざなった」というよりは、頼まれて名前だけ貸してあげてるという人が、ものすごく多いんだろうと思いますよ。

でも、せっかくだから投票すればよかったのにと思いますけどね。

そこまですら思わない程度の人が、名前を貸してるんでしょうね。

>ま、民主党からしたら、お金支援してもらえて口出ししない、ありがたいパトロンですね。

というか、お金は陣笠議員やその関係者が負担してるってことが多いんだと思いますよ。

自分や自分の身内で出した金の一部を、党本部経由でまた下ろしてもらってる。馬鹿なシステムですね。

だから、政治はお金がかかるんです。

投稿: tak | 2010年9月16日 00:03

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