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2010年10月15日

「楊貴妃のように中国を腑抜けにする柳腰外交」 ではダメ?

仙石官房長官の「柳腰外交」発言が、ものすごくくだらない展開を見せていて、なんだかブラックなお笑いじみてきている。

一応おさらいすると、発端は今月 12日の衆院予算委員会で、尖閣諸島問題に関する一連の政府対応を、自民党の石原幹事長が「弱腰外交」と批判したのに答え、仙谷さんが「弱腰とは思っていない。『柳腰』というしたたかで強い腰の入れ方もある」と反論したことと報道されている。

これに対して 14日の予算委員会で、自民党の山本一太議員が、「(「柳腰」という言葉は)中国語では女性を表現するときにしか使わない。外交には不適切だ」と、発言撤回を申し入れた。しかし、仙谷長官は「日本のしなやかな『柳腰外交』が(国際社会から)評価されている」と譲らない展開が続いている。この辺で、もう十分にあほらしい。

そもそもの話からすれば、「柳腰というしたたかで強い腰の入れ方」という仙石発言は、どうみても「なんじゃ、そりゃ?」というレベルのもので、お笑いぐさなのだが、まあ、「したたかで強い」かどうかは別として「柳に風と受け流す柔軟な姿勢」という、彼一流の新解釈と受け取れば、それほど執拗に噛みつくようなお話じゃない。

あんまり上等の部類じゃないが、洒落ですましてあげてもいいような気がする。それどころか言葉の表面だけ捉えれば「女性を表現する言葉だから、外交には不適切」というツッコミの方が「女性蔑視じゃねえの?」と言われかねない。

まあ、山本議員の真意は「柳腰」とは元々、あの楊貴妃の腰つきを表した言葉なので、中国人からは「日本政府は楊貴妃がなよなよと玄宗皇帝に寄り添った如く、中国と付き合う」と誤解されかねないから、撤回しろということにあるらしい。一見もっともに聞こえる。

しかしよく考えれば、楊貴妃というのは、そのあまりの魅力故に玄宗皇帝を腑抜けにして唐の国を危機に陥れたぐらいのもので、「城を傾け、国を滅ぼす」ってな意味で「傾城」という言葉の元祖にもなった。ということは、中国人にとってはむしろヤバイ存在である。

仙石さん、いっそのこと「柳腰外交とは、楊貴妃が玄宗皇帝を腑抜けにしたように、中国をガタガタにしてしまう高等戦術」とでも言っておけばよかったのに。(そんなわけないか)

そうかと思うと、自民党の伊吹文明元幹事長が 14日の伊吹派会合で「柳腰は女性に対する表現だ。井原西鶴を読んだり、酒井抱一の絵を見ていれば、あの表現は出ない。政治家は経済や法律の知識以上に、教養がにじみ出るような度量を持っていないといけない」と言ったというので、ますますドタバタである。

「柳腰」 が女性に対する表現であることを言うのに、よりによってわざわざ井原西鶴や酒井抱一(同じ絵師でも春信とか歌麿とかじゃないところが、気障でしょ)なんかを持ち出すあたり、さすが伊吹さんである。「あなたと違うんです」発言の福田元首相や、町村信孝氏とともに自民党の「イヤミ三兄弟」と言われるだけのことはある。

さらに「政治家は経済や法律の知識以上に、教養がにじみ出るような度量を持っていないといけない」というにあたっては、とんでもなくリスクの高い諸刃の剣的発言である。身内の自民党内から「ああ、教養がなくて悪かったな!」と反発されるんじゃないかと、私なんかハラハラしてしまうがなあ。

 

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コメント

確かにくだらないんですが
そもそもは、仙石が誤った表現をしたからです
しかし、得意げに、そう答弁していましたから、実は、誤用と知らず、そういう表現がありうると思っていた可能性もあります
とにかく、陰の総理であろうとも(笑)、空き缶の腹話術師であろうとも(笑)、一応、弁護士出身なんですから、言葉は、勝手に造語せずに、正確に使って欲しいものです
しかも国会の場ですからね


投稿: alex99 | 2010年10月15日 15:15

alex さん:

>得意げに、そう答弁していましたから、実は、誤用と知らず、そういう表現がありうると思っていた可能性もあります

多分、というか、ほぼ確実に、「柳に風」とごっちゃになったんでしょうね。

今でもごっちゃになってるみたいだし。

しかも、あんなに堂々と開き直っているので、議事録から削除もできず、恥は末代まで残ります。

投稿: tak | 2010年10月15日 16:09

私が手許に持っている絵は、柳は軟構造を示すものとして描かれていて、強い圧力を偲ぶ仏教的な考え方となっています。その点では強者をがたがたに腰砕けにする意味もやはりあるのかもしれません。

さて、実際に現在の首相官邸の対中国外交方針がそれに見合っているかどうかは、定かではないですね。外交ブレーンの試みが鳩山政権の沖縄問題から続けてちらちらしているような気はしますが、官邸の腰が据わっていないというか、その点ではまさに柳腰ですね。

投稿: pfaelzerwein | 2010年10月15日 16:40

pfaelzerwein さん:

恐縮です。

>強い圧力を偲ぶ仏教的な考え方

というのが、わかりません。

>官邸の腰が据わっていないというか、その点ではまさに柳腰ですね。

柳腰ダブルミーニング説でいきましょうか (^o^)

投稿: tak | 2010年10月16日 22:22

失礼いたしました。

「偲ぶ」は「忍ぶ」の変換間違いで、「堪忍」のことでした。

投稿: pfaelzerwein | 2010年10月19日 05:29

pfaelzerwein さん:

了解しました。

耐え忍ぶではなく、堪忍するということですね。

投稿: tak | 2010年10月19日 10:03

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