「短期的な見返り」と「長期的な悪影響」
CNN ニュースは、米国エール大学の精神医学者らの研究によって「禁煙のコツ」が判明したと伝えている。それは「短期的思考から長期的思考に切り替えること」なんだそうだ。この方法は、禁煙だけでなくダイエットにも応用できるとしている(参照)。
研究チームは喫煙者 21人を対象に、たばこを吸うシナリオを 2通り提示し、それぞれ脳スキャンで反応を調べたのだそうだ。2通りのシナリオとは、次のようなものである。
- 短期的な見返りとして、「最初の一服」を吸い込み、煙を吐き出す感覚を思い浮かべさせる。
(喫煙者には、えもいわれぬ快感だろう) - 長期的な結果として、肺気腫や心臓病など、喫煙が引き起こす健康上の問題を想像させる。
(これはちょっと、ぞっとするお話だ)
この 2つのシナリオを、たばこの代わりに脂っこい食べ物という想定でも実験してみたのだそうだ。つまり、短期的な見返りとしての「こってりしたおいしさを味わうこと」と、長期的な結果としての「肥満や糖尿病など」を想像することである。
いずれの実験でも、長期的思考を試みることで、脳の前頭前野の活動がより盛んになり、たばこを吸うことや脂っこい食べ物を食べることの欲求を、理性で抑えられることがわかったというのである。
で、研究チームのメンバーらは、「喫煙者は自制心に欠けるのではなく、禁煙のための単純なコツを知らないだけ」と言っているんだそうで、さらにこの研究を主導したコーバー博士は、「長期的な悪影響に集中することで欲求を抑え、自分の脳の活動を変えることができるのだ」と強調しているというのである。しかし、う~ん、何だかなあ。
これって、あまりにも当たり前すぎる結論じゃないか。「短期的見返り」だの「長期的思考」だのと、まどろっこしいことを言うよりも、「ちょっと待て、その一口でブタになる」みたいな、単純なお話なんじゃないか。要するに「それって、体に悪いってことを思い出せ」ということを、むずかしく言っただけじゃないかという気がするのである。
この程度のことを「コツ」なんていうのは、ちょっと買いかぶりがすぎるんじゃないか。あるいは、米国人ってこの程度のことで目から鱗が落ちる思いがするほど、普段は短期的な見返りしか求めない文化の中で暮らしているのか。
と、ここまで考えて、確かに彼らは 「短期的な見返り」 が大好きみたいだなあと、思い至ったのであった。なるほどなるほど。
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コメント
私は12年前に煙草をやめました。
こんなもの吸ってたらからだが持たん、後悔先に立たずだ、今日でお終いだ、と決意した翌日から煙草の臭いを臭いと感じるようになり、一度たりとも吸いたいと思ったことはありません。
takさんが書かれている通り、難しい理論の話ではありませんね。
禁煙で苦労している話しに触れるとなぜ?と思ってしまいます。
投稿: ハマッコー | 2010年10月 2日 00:14
ハマッコー さん:
>今日でお終いだ、と決意した翌日から煙草の臭いを臭いと感じるようになり、一度たりとも吸いたいと思ったことはありません。
すごい。感覚というのは決意というか、心のありようで変わるんですね。
>禁煙で苦労している話しに触れるとなぜ?と思ってしまいます。
私は25歳で禁煙しましたが、1週間は禁断症状でのたうち回りました。
しかし、やはり決意の方が上回りました。
投稿: tak | 2010年10月 2日 20:24