823年に 1度?
発生源は中国のインターネットという説が有力なのだが、先月末に 「今年の10月は金曜日、土曜日、日曜日が全部 5回あるが、これは計算上 823年に 1度しかない。今年の 10月は、823年の中で一番週末が多い 10月」というようなデマが、広まった。代表的なのは こちら である。
チェーンメールでもかなり広がったらしく、それを多くの人にメールで知らせると幸せになるとかいうような話まで出てきて、単純に信じた人があちこちにメールし、そのメールを受けた人の中でまた単純に信じた人がさらにメールを広げたりしたようだ。
「823年」 というキーワードでググると、この関連のページがどっさり検索される。これがデマだと指摘しているページもあれば、「823年に 1度だなんて、スゴイ!」と単純に盛り上がっている人もいる。世の中は広いものだと思う。
ちょっと考えればすぐにわかることだが、第 5 金・土・日曜日の発生する月が、823年に 1度しかないなんてはずがない。月と曜日の関係がそんな複雑だったら、暦がややこしくてしょうがない。実際には大の月(31日まである月)が金曜日で始まれば、自動的に 第5 金・土・日曜日が発生する。
計算上の確率では 1年に 1度になるが、今年は 1月 と 10月の 2度発生していて、そのかわり、2007年には 1度もなかった。いずれにしても、823年に 1度なんてのは途方もないデマというわけだ。
で、普通はこれでこの話はおしまいということになるのだが、私はこういうことになるとしつこい。どうしてまた、こんなばかげたデマを信じて、Twitter で tweet したり、メールに書いて送ったりする人が相次いだのかなんていうことに、興味津々になってしまうビョーキ持ちなのだ。
まず前提となるのは、第5 金・土・日曜日まである月というのは、それほど多くないということだ。確率的には 1年に 1度ぐらいあるとしても、カレンダーを見て「今月は縦の幅がやけに長いなあ」と、漠然と印象付けられているということはある。それはまあ、超レアではないにしても、ちょっと珍しいことではあるわけだ。
ただ、1年に 1度ぐらいはある現象が、先月に限って超レアなものと誤解されてしまいがちな心理状態というのがあると思う。3つほど挙げてみよう。
- 人に言われたことについて、「ちょっと待てよ」と考え直すより先に、まず単純に信じて舞い上がってしまうタイプの人がかなり存在する。
- 前述の通り、多くの人が 「今月のカレンダーは縦の幅がやけに長いなあ」と、無意識的にも感じていたが、暦というものにきちんと意識的に接している人というのは、案外少ない。
- 今年の 10月は猛暑から真冬の寒さまで、天候の変化が極端に激しかったので、ある意味、非日常的な時間感覚があった。そのため 「823年に 1度」 が、つい受け入れられてしまった。
1番目で挙げたタイプの人が少なからず存在するということに関しては、これだけ「振り込め詐欺に注意」と呼びかけられているにも関わらず、だまされる人が後を絶たないということの説明にもなるだろう。人間というのは、ちょっとツボにはまったことを言われると、かなり怪しいことでもつい信じてしまいたくなるという習性があるようなのだ。
で、どうして今回の「823年に 1度」というのがツボにはまってしまったかというと、それは、2番目と 3番目の合わせ技じゃないかと思うのだ。とくに、3番目の異常気象要因というのが、無意識的ながら大きな要素になっているような気がする。
月初めまでは 「ちょっと晴れればすぐ夏日」 なんていう状態だったのが、月末を待たないうちに「真冬の寒さ」にまで変化した。この非日常的な時間感覚が、「今年の 10月って、なんだか変ね」という思いに変化し、それが「823年に 1度」なんていわれたとたんに、ぽんとツボにはまってしまったということはあるだろう。
いずれにしても、人間の心理というのはなかなかおもしろいものである。
【追記】
Twitter 情報によると、月末の支払いを延ばす口実に使われたりもしているらしい。しかし、実は 823年に一度というわけじゃないので、あまり有効な口実にはならないだろう。
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