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2010年11月22日

死と眠り

レイモンド・チャンドラーのお馴染みのフィリップ・マーロウ物に "The Big Sleep" というのがある。日本語では『大いなる眠り』と訳されているが、要するに大きな眠りとは「死」のことである。小説の中で直接そう語られているわけではないが、そうとしか思われない。決して「爆睡」のことじゃないと思う。

「死ぬほど眠い」ということがある。家で PC に向かい仕事をしていて、一時も目を開けていられないほど眠くなり、「ああ、こりゃやばいなあ」と思いながら、ふと気付くとベッドの上に横たわっていたりする。いつの間にデスクからベッドに移動したんだか、全然記憶がない。移動の最中にはもう眠っていて、単に惰性で動いていたのだろう。

眠りから覚めようとしても、どうしようもないほど眠いときというのもある。起きようという意識はあるのだが、体が動かない。目も開けられない。意識が人間の世界に戻っていない。これはきっと、「大いなる眠り」の一歩手前、「プチ死」の状態なんだろう。ほとんど死んだような状態から生き返るのだから、猛烈に眠くて起きあがれないわけだ。

「死」と「眠り」とは、本当によく似ている。眠りはあの世への回帰で、朝起きるのは、あの世から甦ることなのだ。

これからの季節、朝に起きるのが辛くなる。ベッドの中から抜け出すにはかなりの勇気が必要だ。できれば暖かい布団の中でいつまでもまどろんでいたい。これはある意味、「死の願望」に近いと思う。死というのはきっと、甘美なものなのだ。だから人間は甘美な死にあこがれる。

それでも、今死ぬわけにもいかないから、なんとかしてベッドから抜け出す。生きる意欲が辛うじて勝利を収める。どうせいつかは死ぬのだから、何も今死ななくていい。そう思いつつ、布団の中ではなく、世の中の方に潜り込む。

 

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コメント

生きものにとって理想的な状態は、矛盾しているようですが「死」だそうです。

エネルギーが足りないから活動し、獲得する。
繁栄しきっていないから活動し、繁殖する。
安全を確保しきっていないから活動し、危険回避する。

だから、プチ死であるところの「眠り」の状態でい続けることができるなら、
それは生物としてのある種の理想形であると言えるのではないでしょうか。

冬眠(休眠)中の熊は、完成された生物に近いなあと思います。
人間も冬眠(休眠)する生き物だったらなあ。

投稿: キセ | 2010年11月22日 15:20

「死んで、何度でも生き返る。」
出羽三山信仰じゃないですか。

投稿: ケジボン | 2010年11月22日 22:22

キセ さん:

>生きものにとって理想的な状態は、矛盾しているようですが「死」だそうです。

なるほど。

ただ、死んでしまうと、その状態は長続きしませんね。
生きている間は生き続けていられますが、死んでしまうと、「死」の状態を安定的に保っていられない。分解されてしまう。

いずれにしても、なかなか大変だなあと思ってしまいます ^^;)

投稿: tak | 2010年11月22日 22:46

ケジボン さん:

上のレスで、

>死んでしまうと、「死」の状態を安定的に保っていられない。分解されてしまう。

と書いたそのそばから、

>出羽三山信仰じゃないですか。

と言われると、

「そうか、ミイラになれば、かなり安定するなあ」 と思ったりしてます。

投稿: tak | 2010年11月22日 22:48


私、自分のブログで
「開高先生によれば、セックスの後には眠気を誘われるが、これを、フランスでは『小さな死 petite mort』と言うというエントリーを書いております

http://plaza.rakuten.co.jp/alex99/diary/200407190000/

久しく、こ~ゆ~死に方をしておりません(涙)

投稿: alex99 | 2010年11月23日 11:18

「死」とも「眠り」とも関係が無くて、申し訳ないのですが、こ~ゆ~記事を見つけました
iPhoneユーザーのtak shonaiさんのご意見を賜れば幸甚です

       ―――― ◇ ――――


ホリエモンこと堀江貴文さんが、自身のケータイであるiPhoneに対し不満を漏らしています。明確にいえば不満に思っているのはiPhoneではなくキャリアのソフトバンクモバイルに対してで、「iPhone電波悪すぎ」と不満の声を漏らしているのです。

さらに堀江さんは「iPhoneユーザとしてはそろそろ我慢の限界。日本通信のSIMに切り替えよう」とも話しており、もうすぐソフトバンクモバイルと「回線上の決別」をする事がわかりました。日本通信はSIMフリーのiPhoneを販売しており、ドコモのFOMA回線を利用してデータ通信と音声通話が可能です。

ドコモ回線はソフトバンクモバイルよりはるかに快適に、そして広範囲で電波をキャッチすることができ、iPhoneの性能をフル活用する事ができます。

投稿: alex99 | 2010年11月23日 12:49

alex さん:

>私、自分のブログで
>「開高先生によれば、セックスの後には眠気を誘われるが、これを、フランスでは『小さな死 petite mort』と言うというエントリーを書いております

読みました。印象的な記事の一つであります。

"petite mort" は知っていましたが、"lover's pillow" は、この記事で知りました。

最近は、この枕も 「寝にくい」 と言われて敬遠されております ^^;)

投稿: tak | 2010年11月24日 10:31

alex さん:

ソフトバンクモバイルの回線の悪さに関しては、私も不満を持っています。

庄内空港のロビーでも不安定で、突然「圏外」表示になった時には、ぶち切れそうになりました。

ただ、普段は 「我慢の限界」 というほどでもないので、何とか使っています。

基本的には 日本の iPhone も SIM フリーにすべきだと私も思っています。

不満を持ちながらも、初期契約条件のしがらみ (二年縛りなど) で、ソフトバンクモバイルのままで使っています。

また、いくらソフトバンクモバイルでも、少しは基地局の増設をしているようで、ちょっと前まで回線が不安定だったところでも、ある日急に快適になったりすることもあります。

投稿: tak | 2010年11月24日 10:49

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