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2010年12月21日

「~が売ってる」 という表現

言葉の問題で最近よく話題になるのが、「コンビニでおでんが売ってる」というような表現である。「(目的格)が売ってる」というような言い方は文法的には誤りで、「~が売られている」と言うべきだというのだ。

しかし「~が売ってる」という表現は、今や確実に市民権を得つつある。個人的には絶対に使いたくないが、他人にそう言われても、あるいはそう書いてある文章をみても、むやみにイチャモンをつけようとは思わなくなった。これはもう、仕方がない。「売る」という単語に 「売られる」 という意味合いが公式に加わるのも時間の問題だろう。

最初に出した例でいえば、文法的に正しいのは、「コンビニでおでんが売られている」だが、細かいことを言えば、論理的ではあるが受動態表現がうっとうしいことは確かだ。私なら「コンビニでおでんを売ってる」と言いたいところである。ただ、「おでん」を主語として語りたいという場合は、「おでんが売ってる」と言いたくなる気持ちもわからないではない。

昔だったら、「あの店にはおでんがある」とか「おでんをやってる」とか言ったところだが、最近のようにマスプロ商品の時代になると、あの店のおでんもこの店のおでんも同じようなものである。店ではなく、おでんの方が前面に出る。だから「おでん」の方を主語にして語りたくなる素地ができてしまったわけだ。

「~が売ってる」 という言い方は、現代的な流通形態の時代だからこそ出てきた表現なのかもしれない。

【追記】

きっしーさんからのコメント ("sell" という英語との関連) について、翌日の記事に書いたので、よろしければご参照いただきたい。

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コメント

たまたまだと思うのですが、英語の sell も、もともとは他動詞だから商品が主語なら受動態になるはずなのに、自動詞として使われていますね。
"The rose sells at $10 a dozen." といったふうに。
他には、たとえば "He sold out." (ヤツは裏切った)といった言い方が思い浮かびますが、これは "He sold himself out" が崩れた形だろうと察しがつきます。

ちなみに、tak さんが例に出されたおでんの例に関して、私は、「あの店ではおでんが売っている」には抵抗がありますが、「あの店ではおでんが一杯500円で売っている」ならOKです。なぜなんでしょうかね。

投稿: きっしー | 2010年12月22日 10:21

きっしー さん:

>たまたまだと思うのですが、英語の sell も、もともとは他動詞だから商品が主語なら受動態になるはずなのに、自動詞として使われていますね。

それについては、この記事を書く際に、私も意識してました。

It sells well. (売れ行きがいい) なんて言いますし、"good seller" なんてのも、「いい売り手」 ではなく、「よく売れてるもの」 ですからね。

英語の話なのであえて触れなかったのですが、とても似た構造ではありますね。

というわけで、ちょっと 「追記」 として書いておこうと思います。

投稿: tak | 2010年12月22日 10:47

きっしー さん:

よく考えると、「追記」 で書くにはもったいないので、新しい記事として書くことにしました。

投稿: tak | 2010年12月22日 11:03

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