「角を矯めて牛を殺す」 漫画・アニメ規制
Twitter をのぞいたら、東京都の青少年・治安対策本部参事の浅川英夫という人の都議会でのナンセンスな答弁に、漫画家の島本和彦という人が素晴らしいツッコミをした件が大変な話題になっている (参照)。
例の 「青少年健全育成条例の改正案」の審議の過程で、浅川参事が「小説は読む人によって様々な理解がある。その点、漫画やアニメは誰が見ても読んでも同じで一つの理解しかできない」という信じられない答弁をしたことに対し、島本和彦氏が「じゃあ『あしたのジョー』が最後になんで真っ白になって笑ってるのか解釈を」 と切り返したのだそうだ。
確かにうまいなあ、このツッコミ。
ただ私としては、何に限らず、誰が読んでも見ても同じものなんてこの世にあり得ないという当たり前すぎるほどの知見を持ち合わせない人が、都議会の答弁に立つ地位にあることに、開いた口がふさがらないほど驚いた。
で、結局この条例改正案は、民主、自民、公明の 3会派が「慎重な運用を求める」などの付帯決議を付けた上で賛成する方針を固めたのだそうで、15日には成立する見込みらしい。
これって、石原都知事が自分の趣味にもっともらしい理屈をつけて押しつけているという印象で、しかも、都知事は若い頃の自分の小説作品からみると結構な「転向」をされている印象でもあるし、ずいぶん馬鹿馬鹿しいことのように思えてしまうのである。
ただ、この馬鹿馬鹿しいことで商売に影響の出る人が結構いるので、反対意見がずいぶん出ている。多くの大手出版社が、東京アニメフェア 2011 への出展をボイコットすると表明しているらしい。このフェアは東京国際アニメフェア実行委員会という組織の主催で、その実行委員長は、石原慎太郎ということになっている。
「不健全な漫画やアニメ」 のみを排除して、「健全な漫画やアニメ」のみを育成しようなんてことは、虫のよすぎる了見である。そんなことはできるはずがない。「角を矯めて牛を殺す」と、ことわざに言うとおりである。石原都知事は、自らがプロモートする東京最大の地場産業の活力を、自らが削いでしまおうとしているように見受けられる。
| 固定リンク
「アニメ・コミック」カテゴリの記事
- 今どきの定期券事情を巡る冒険(2024.02.14)
- 漫画家は 赤塚不二夫、いしかわじゅん、いしいひさいち の 3人でいい(2022.11.05)
- 毎日新聞朝刊の 「サクラダ・ファミリア」(聖なる桜田家)(2015.02.09)
- 『ひみつのアッコちゃん』の『スキスキソング』と『庄内おばこ』(2015.02.07)
- 神戸新聞社の例のキャラが萌えない本当の理由(2011.01.17)
コメント
「理屈をつけて押しつけている」 - ごめんなさい、障子にペニスの先っちょを押しつけて。
この話題はフカーイ文化問題ですが、ウイキリークス問題にも共通していますね。
投稿: pfaelzerwein | 2010年12月12日 03:47
pfaelzerwein さん:
>ごめんなさい、障子にペニスの先っちょを押しつけて。
わはは (^o^)
>この話題はフカーイ文化問題ですが、ウイキリークス問題にも共通していますね。
確かにそうですね。
投稿: tak | 2010年12月12日 11:04