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2011年1月 5日

餅をわしわし食うことのリスク

東京消防庁によると、正月三が日の間に、東京都内で高齢者 8人が餅を喉に詰まらせて死亡した(参照)。この数は過去 5年間のどの年よりも多いという。高齢者の増加につれて、餅を食うことのリスクはどんどん高くなっている。

私は 4年前の正月にも「餅のリスクをマジで軽減せよ」という記事を書いていて、その中で「のどに詰まりにくい餅」の商品開発をすべきだと主張している。例えば、小さく一口大に切った餅とか。

ところが、小さく一口大に切った餅は、それだけでは効果の程は甚だ怪しいということが、記事を書いた 5日後にわかってしまった。ラジオを聞いていたら、永六輔さんが慎重に小さく切った餅を電子レンジでチンしたら、せっかく切り分けた餅がふくらんでくっついてしまい、元に戻ったのだそうだ。これについて私は、"命がけで守る「美しい日本」" という記事にしている。

こんなことがないようにするには、切り分けた餅を少しずつチンすることになるが、年を取っても餅をわしわし食ってしまうようなせっかちなじいさんは、そんな手間のかかることはしないだろう。つまり、実効性が期待できないということだ。

「せっかちなじいさん」と書いたが、毎年餅をのどに詰まらせて死ぬのは、圧倒的に男が多い。今年の 8人の死者も、全員が男だ。同じ年寄りでもばあさんは「女が大口開けて食うのはみっともない」という美意識で育てられた世代だから、あまり息せき切ってわしわし食ったりしないのだろう。それだけで死ぬリスクは圧倒的に低下する。

とにかく、餅を喉に詰まらせて死なないための、最も効果的な対策は、「わしわし食わず、ちまちま食う」ということに尽きるようなのだ。年を取ると、食べ物を嚥下する力は思いの外弱まってしまうもののようなのである。過信しないで、ちまちま食うに限るのだ。

 

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コメント

餅の食べ方なんて、個人の責任ではないでしょうか?
喉に詰まらない餅をメーカーが開発すべき・・・なんて行き過ぎです。
(4年前の記事にコメントすべきだったかもしれませんが)

なんでもかんでもメーカーに責任を押しつける最近の日本の風潮には正直がっかりしています。
(回転ドアにしろ、蒟蒻ゼリーにしろ)

それが過度に進むと、メーカ側も自己保身に入り、取説や免責事項が分厚くなり、くだらない役所仕事が増え、ストレス社会が進み、ギスギスしたつまらない社会になります。

お餅ちはよく咬んで食べなさい、とか、
回転ドアで遊んじゃ行けません、とか、
私が子供の時は親に厳しく言われたものです。

消費者側だって使うこと/食べることに責任を持つべきです。

いつも楽しく拝読しておりますが、
今日の記事ついては全く納得がいかず、思わず筆を執ってしまいました。

投稿: みえこ | 2011年1月 5日 16:06

そうですね。安全第一!

サンマも そのまま焼いては年寄りには危ない。
蒸して脂をすっかり抜いて、小骨も残らず毛抜きで抜いてから供しましょう。

投稿: McC | 2011年1月 5日 21:11

「坂の上の雲」を見ていると、「また、餅喰い競争をしよう」などという士官同士のセリフがありました
史実なのかどうかは知りませんが、おもわず「アホちゃう?」とつぶやいてしまいました
コンニャクゼリーの問題でも、腹が立ちましたが、餅も小さくしてはいけません(笑)

私、今年は時間が無くて、いつもの餅屋でつきたての餅を買わずに、スーパーで買ったら、時代の配慮か?チマチマしたコインサイズの餅で腹が立ちました
餅は、ある程度大きなサイズのものをガバッと食べてこそ味があるのです
喉に詰まらせて死ぬような粗忽者や、嚥下力の衰えたものは、自然淘汰で死んでもいいのです
どうせ、死期がちょっとはやまっただけです
この世の中、濡れた鼻紙だけでも死ぬものは死にます(間引きですが)

失礼いたしました
 <(_ _)>


投稿: alex99 | 2011年1月 5日 21:50

みえこ さん:

>餅の食べ方なんて、個人の責任ではないでしょうか?
>喉に詰まらない餅をメーカーが開発すべき・・・なんて行き過ぎです。
>(4年前の記事にコメントすべきだったかもしれませんが)

>なんでもかんでもメーカーに責任を押しつける最近の日本の風潮には正直がっかりしています。
>(回転ドアにしろ、蒟蒻ゼリーにしろ)

えぇと、何か誤解しておいでではないですか?

私は餅が喉につまったらメーカーの責任なんて、一言も言ってません。

ただ、老人用に一口大に小さくした餅があってしかるべしと提案しただけなのです。
(餅のユニバーサルデザインというか)

しかも、その提案は実効性があまりないかもねと、後で書いているのであります。

そして、結局は餅を食う側の自己責任というところに落ち着いているのであります。

4年前の 1月 8日の記事で、以下のように書いている通りであります。

>こうなったら、リスクを冒してでも、餅をわしわし食うか、一口大に切った餅を、本当に一個ずつチンしてちまちま食うか、歳をとったら二つに一つを選ばなければならないようだ。餅を食うというのも、なかなか大変なことだ。

>「美しい日本」 の文化を守るのは、本当に命がけである。

投稿: tak | 2011年1月 5日 23:03

McC さん:

>サンマも そのまま焼いては年寄りには危ない。
>蒸して脂をすっかり抜いて、小骨も残らず毛抜きで抜いてから供しましょう。

やっぱりサンマは目黒に限るのう。

投稿: tak | 2011年1月 5日 23:06

alex さん:

>「坂の上の雲」を見ていると、「また、餅喰い競争をしよう」などという士官同士のセリフがありました

それって、つきたての餅を、噛まずにどんどん連続的に胃に送り込んでしまう食い方なんでしょうかね。

「そば清」という落語は、上方ではそばじゃなくて餅だそうですね。まだ聞いたことありませんが。

蕎麦も餅も、通は噛まずに飲み込むもののようです。

まさに 「命がけで守る日本文化」ですね。

>餅は、ある程度大きなサイズのものをガバッと食べてこそ味があるのです

今年の三が日で死んだ 8人のご老人も、そういうポリシーだったんだろうなあと思います ^^;)

>喉に詰まらせて死ぬような粗忽者や、嚥下力の衰えたものは、自然淘汰で死んでもいいのです

私は自分が粗忽者であるからこそ、少しは気を付けようかなと思ってます ^^;)

実は、一昨日、わしわしっと食った餅が、ほんのちょっとつっかえかかりました。

全然大したことなかったんんですが、やっぱり自分自身の嚥下力も多少は衰えているのかと感じました。

そして私は、痛いのとか、苦しいのとか、重いのとか、疲れるのとか、そういうの嫌いですので、そうならないように注意しようと思った次第です。

(「痛いのとか、苦しいのとか、重いのとか、疲れるのとか、嫌い」 というのは、酒田の親父の名言で、息子の私としても同様です ^^;)

投稿: tak | 2011年1月 5日 23:19

食品業界でお客様相談室を専らの生業としており、かつ高齢の親類を介護している私としては、食べ方を個人の責任にはしたくない。

なにかことあればたいへんですので。

また、実際うちの爺さんもシイタケで死にかけたりしましたので、面倒みる余地あればお願いします。

身近にそんな方がいらっしゃればまたお考えも変わるのではないですか。

投稿: jersey | 2011年1月 6日 00:25

すみません、さっきの私のコメントは「みえこ」様へのものでした。

不慣れなもので

投稿: jersey | 2011年1月 6日 00:29

jersey さん:

みえこ さんへのコメントということですが、横レス失礼。

>食品業界でお客様相談室を専らの生業としており、かつ高齢の親類を介護している私としては、食べ方を個人の責任にはしたくない。

サプライヤーの責任か、消費者の責任かというのは、すべてか無かで割り切れるものではないですね。

それは当然のことなのですが、ヘタすると、どちらかが一方的に悪いような言い方が一人歩きしてしまいがちです。

もちに関しても、サプライヤー側が老人向けの 「喉につまりにくい餅」 を開発すべきだろうとい私の考えは、依然として変わりません。

ただ、「それをしないメーカーが悪い」というのではありません。今の状態はいいとか悪いとかではなく、伝統文化としてニュートラルです。

「喉につまりにくい餅」 開発は、積極的企業努力として、プラスの評価をしてあげたいということです。
(それができたら、老齢化社会ですから売れると思うなあ)

そして、「すべての餅を小さくしろ」 という主張ではないということは当然のことですが、誤解されるといけないので書き添えておきます。

小さく切った餅は、子供や老人向けです。大きな餅をわしわし食う文化をなくしてはいけません。

そして、いくつになっても大きな餅をわしわし食うという美意識に忠実だった結果、それで死んでしまったということなら、それは自己責任というものであります。

投稿: tak | 2011年1月 6日 07:46

再度お邪魔します。

窒息は、餅を飲み込もうとしたときに、誤って食道ではなく気管に入ってしまうことで起こる。
(液体等の場合は、誤嚥性肺炎の原因となる。)

>とにかく、餅を喉に詰まらせて死なないための、最も効果的な対策は、「わしわし食わず、ちまちま食う」
歯ごたえ、喉ごし、も餅にとって重要なファクターで、「ちまちま」では美味くあるまい。
また、肺炎にもなりたくない。
そこで老いたる食通は、
「ぱくぱくゴックン」⇒「ぱくぱくぱくぱくぱくぱくゴックン」
と、ゆったりと楽しむのが良いのではあるまいか。

http://www.tmg.gr.jp/hokensinpou/040303-sessyokuenge.html
>食べることに意識を集中し、口の中に食物が入っているときには話しかけないようにします。また、ゆっくりとしたペースで食べられるよう焦らせない配慮も必要です。

投稿: McC | 2011年1月 6日 19:21

McC さん:

>そこで老いたる食通は、
>ぱくぱくゴックン」⇒「ぱくぱくぱくぱくぱくぱくゴックン」
>と、ゆったりと楽しむのが良いのではあるまいか。

なるほど。
「ちまちま」 ではなく 「ゆっくり」 ですね。

納得です。
有意義なご指摘、ありがとうございます。

投稿: tak | 2011年1月 7日 16:39

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