日本人旅行者は silent bomber?
日本人客は、海外では "silent bomber" (静かな爆弾)といわれているんだそうだ。アメリカ人はサービスが悪いとその場でクレームをつけるが、日本人はその場では我慢して何も言わず、帰国してからブログなどで悪口を書きまくるからだという。
J Cast の記事から少し引用してみよう。話の筋としては、海外で泊まったホテルのアメニティやサービスに失望したときにどうするかということからの続きである。
そのとき、読者の皆さまはキチンとフロントにクレームの電話を入れるだろうか。多くは短い滞在期間だし自分が我慢すればいいしと思うだろう。ところが、実際は日本人はそれでは気が済まない。帰国して自分のブログに、ハワイで泊まったホテル○○は最悪! 設備も悪くて2度と泊まりたくないと書き込む人が多いのだそうだ。
今どきは個人のブログとはいえ結構な影響力をもつことがあるらしく、海外のサービス業者はこうした現象に当惑して、「日本人は silent bomber」と言い始めているらしい。その場ではニコニコして帰り、帰国してから突然文句を言い出すという態度に、かなりミステリアスなものを感じているようなのだ。
どうしてこんなことになるのかというと、最もわかりやすい理由は、「日本人旅行者はクレームをつけるだけの英語力がない」ということだろう。日本国内でなら口うるさいお客も、海外に出るととたんに借りてきた猫のようにおとなしくなってしまうという現象は、よく眼にする。
しかしこれは、単純に「言語能力の不足」によるというだけではないと思うのである。私は海外でのサービスに(理不尽でない)不満があったら、「日本語でいいから、怒ればいいんだよ」とアドバイスしている。そうすれば、向こうが日本語のできるスタッフを連れて来るなり、なんとかしてくれる。ところが日本人は、海外に出ると怒ることもできなくなる。
今月 10日に 「Guest と customer は別の単語」という記事を書いた。これは、英語では商売上の客である "customer" (顧客)と個人的なお客である "guest" とは別なのに、日本では両方とも「お客様」で、区別なく神様扱いしてしまうということを書いたものだ。
サービス提供者と "customer" は、原則として平等である。だから米国の顧客はことさらに丁寧なサービスを求めない。たまにすごいサービスをしてもらうと、感激してしまう。ところが日本人は、下にもおかぬおもてなしをされて、初めて「当然」と思う。
まあ、ホテルのお客の場合は英語でも "hotel guest" というが、最近では "visitor" という語が幅をきかせているようだ。つまりホテルの客も、基本的には "customer" なのである。だから、米国のホテルでは気持ち悪いほどの微笑を浮かべた下にも置かぬおもてなしなんて、あまり期待しない方がいい。
部屋の電球が切れていても、アメニティが多少貧弱でも、オーシャンビューが売り物のはずなのに反対側の部屋に泊められても、それは「ありがち」なことなのだ。しかし、その場で苦情(「クレーム」ではなく "complaint")を言えば、まあ、米国のことだから迅速にではないにしろ、ちゃんと対応してもらえることが多い。
日本人の場合は何も言わずに不思議な微笑ををたたえているから、単純な米国人は「満足しているんだな」と思ってしまうのである。
それは、単に英語ができないからということもあるが、もっと大きな雰囲気として、"customer" 文化の空気に飲み込まれて、「私はお客よ、神様よ」という振る舞いができなくなってしまっているからだ。まあ、もっと正確に言えば、どうふるまったらいいかわからず、困惑して遠慮しっぱなしということになってしまうのだろうが。
ところが日本に帰った途端に、再び「お客様は神様」文化の空気を吸って、めらめらと不満が頭をもたげる。「あのサービスは、一体何なんだ!」となり、我慢ができず、ついブログにも書いてしまう。
海外旅行から帰ったばかりの人がつい陥りがちな、「海外のサービスはひどい。日本は素晴らしい」みたいな、ちょっとした愛国的感情もそれに拍車をかける。それで話にも尾ひれがつきがちだ。
この文化ギャップは、なかなか根が深い。ちなみに、"bomber" の読みは 「ボンバー」 ではなく 「ボマー」。
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コメント
お久しぶりです。
例の「お客様は神様です」という言葉に関しては、日本人の大多数が本来の意味を間違って(というか、都合よく)理解しているらしいですね。
「お客様は神様です」で検索すると、南春夫さんが本来意図した意味が引っかかってきます。
まあ、日本人が一神教の国に出かけた時に妙に堪能な英語で「オレはお客様だから神様だぞ!」なんて言わないことを願いたいですけどね(笑)
ニヤニヤ黙ってる方が無難かもしれません。
あ、そうそう。
じゃがポタ味噌カレーラーメンはなかなか美味でしたよ。
寒い時期には温まります。
投稿: karin | 2011年1月18日 18:47
karin さん:
>「お客様は神様です」で検索すると、南春夫さんが本来意図した意味が引っかかってきます。
三波春夫ですね ^^;)
「お客様は神様」論について、私は何度か書いておりまして、代表的なのは "「客であること」 はどれほどのことか?" という記事です。
https://tak-shonai.cocolog-nifty.com/crack/2006/11/__2170.html
「お客様は神様」 というより、本来は 「神様がお客様」 ということを書いています。
まあ、これは芸能論における 「観客論」 なので 「顧客」 というのとは違いますが。
投稿: tak | 2011年1月18日 21:01
日本のお客様の勘違いがはなはだしくなりだしたのは、コンビニの出現が大きいのではと個人的には思っています。それまでのスーパーにしろ、個人商店にしろ大概は素っ気なかったように思うのですが、コンビニが少額のお客様に対しても下へも置かぬ対応をするので、慌てたスーパーがそれに追随し、バカ丁寧な応対になって、子供の頃からそれが当たり前の環境で育った日本人は世界基準?からちょっとづつ外れていったのではないでしょうか。
投稿: tomato | 2011年1月20日 11:57
tomato さん:
>日本のお客様の勘違いがはなはだしくなりだしたのは、コンビニの出現が大きいのではと個人的には思っています。
もしかしたら、それもあるかも。
個人商店での買い物は、なかなか親密な対等関係がありましたよね。
魚屋さんで、
客「今日は何かおいしいいもの入った?」
魚屋 「おぅ、いいサンマが入ったよ。お父ちゃんに焼いて食わしてやんな!」
とかね。
店と客の付き合いというより、ご近所づきあいの一環でしたね。
人間関係が疎遠になったので、「下にもおかぬおもてなし」 さえしておけばいいってなことになったのかもしれませんね。
投稿: tak | 2011年1月20日 16:51