神戸新聞社の例のキャラが萌えない本当の理由
ululun さんの記事で、神戸新聞社の「緊急雇用創出事業に基づくアルバイト募集」の募集告知(参照)というのを知った。一部では既にかなり話題になっているらしいが、「右のキャラクターがいまいちいけていない(萌えていない)理由を 3つあげなさい」という例のアレだ。
リンク先をみていただければ一目瞭然だが、本当に「いけていない(萌えない)」キャラなのである。ただ、その萌えない理由を 3つ、言葉で挙げて説明するというのは、なかなか難しい。ululun さんも、"イラストにすると「わかりやすい」ものも文章にすると今ひとつ伝わりにくい" と書いておられる。
それで私も、次のような tweet をした。(参照)
例の萌えない理由を三つ書くとかいうアレ、あれこれ言うよりも「こんなんで萌えるわけない」という言い切りで十分なんじゃないかなあ。一目瞭然の感覚的事項を下手に説明すると、その言葉によって裏切られる。
こう書いたのは、告知広告のイラストを見れば、それが「萌えない」ということは一目瞭然なので、わざわざ言葉で説明する必要がないと判断したからである。「萌える絵」はいくらでもあって、それらと見比べれさえすれば、イヤでも一目で違いがわかる。こうしたことは、あえていろいろなことを説明しようとすると、かえってわからなくなる。
Togetter をみると、「髪型とキャラ像があってない」「目が死んでる」「生気がない」「単色すぎる」「髪の色と服が同色」「表情がない」「属性が想像できない」「へただから」とかいうのから、「鼻が高すぎる。鼻と口の位置が上すぎる」とかいうやや専門的なものまで、いろいろな意見が書かれている。
だが、こうしたポイントを備えていながら、それでも十分萌えるというキャラも中にはあるはずだから、一つ一つの事項を挙げても、究極的な答えにはならない。やはり、「一目見ればすぐわかる」というしかないような気がする。「萌える」という、極めて感覚的な事項を言葉で説明するのは、本当にむずかしいのだ。
ただ、これを少し視点を変えて論じると、例のキャラが萌えないのは、「神戸新聞社からの『萌えないキャラを描いて』という注文に、イラストレーターが忠実に応えて描いたから」ということができると思う。ある意味、ちょっとした職人芸である。
イラストレーターが「萌えないキャラ」という注文に対応するためにどんな手法を使ったのかというと、「パーツ」としての「萌え要素」を、少しずつビミョーに換骨奪胎的にズラして備えたキャラを描くことによって、「萌えない」という要素を満たしたのだと推察される。
ミク的なスタイルを少しズラしてダサダサにし、大きな目に瞳をいれずにぼんやりさせてしまうことで存在感を希薄にし、顔や体のバランスを少しずつ貧弱方向にズラすことで「フィジカルな萌え感」を微妙に裏切っている。
そうした手法によらずに、個人のイラストレーターの主観で「萌えない絵」を描いてしまったら、もしかしてそうしたテイストに逆に限りなく萌えてしまう人間がいないとも限らない。しかし、既存のティピカルな萌え要素を少しずつ裏切るという手法なら、大抵の場合は「萌えない」で済む。
「萌えない」の最大公約数を作るには、「萌える」のそれぞれのパーツをちょっと足したり引いたりしてアレンジするだけでいいのだ。絶世の美人がちょっと顔をゆがめるだけで、がっかり顔になったり、流行から外れたばかりのスタイルが一番もっさりして見えるのと同じ理屈である。
つまり、このキャラが萌えないのは「萌え要素を少しずつ裏切って萌えないように描いたから」というしかない。決して「下手だから」というのではなく、クライアントの要求に極めて忠実に応えた結果なのである。ここまで微妙に萌えない絵を描くというのも、なかなか大変だったろうと思われる。
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