岡本太郎氏の大芸術家ぶり
今日が岡本太郎氏の生誕 100周年だったそうだ。岡本太郎氏の姿は、一度だけナマで拝見したことがある。あれは昭和 48年頃だったと思う。例の大阪万博の『太陽の塔』のイメージがまだ鮮明だった頃のお話だ。
NHK 教育テレビで、何という番組だったか、若者の意識を探るというようなテーマの番組に、大学生 100人のうちの一人として出ることになった。謝礼として 5000円ぐらいもらった憶えがある。当時としてはかなりおいしいバイトだった。
スタジオに 100人の学生が座るひな壇が用意され、そこに座らせられる。ボタンが二つ付いたポケットベルみたいな器具が各自に渡され、質問にイエスだったら 1番、ノーだったら 2番のボタンを押すようにと説明された (ような記憶がある)。我々がボタンを押すたびに、スタジオの電光掲示板にイエスとノーの数が瞬時に表示される。
我々 100人の学生の前には、著名人代表が 確か 3名ぐらい着席された。全員は覚えていないが、その中の岡本太郎氏だけは鮮烈に覚えている。
番組制作者側の意図としては、いろいろな質問をして我々にイエスかノーかで答えさせ、その合間に我々の言いたいことをちょっとずつ言わせることで、当時の若者気質を浮き彫りにすることにあったと思う。
当時は連合赤軍の浅間山荘事件を徒花として、あれだけ盛り上がっていた学生運動がしらけたまま収束に向かい、それに代わって、「神田川」という歌に象徴されるような四畳半下宿趣味やらカウンターカルチャーやらが、台頭しつつある頃だった。
そうしたキーワードに焦点を当てつつ、ゲストの著名人にもちょっとずつコメントしてもらうということだったのだと思う。それはもう、番組が始まる前から露骨に感じられた。我々学生は、そのダシに使われているのだから、謝礼をもらう以上、その番組制作意図にしっかりと協力しなければならないような雰囲気が漂っていた。
ところが、岡本太郎氏だけは、そんな番組制作者の意図を完全に無視していた。一度マイクを向けられたが百年目、驚くほどの長々とした独演会になってしまったのである。
どんなことをしゃべったのかというと、「今の (もちろん 1970年代のという意味)若者は型にはまりすぎている」とかいう批判から始まり、話は弥生文化、縄文文化に飛躍する。今の日本文化は弥生文化の影響下にあるが、本来の源流は縄文文化にあるのであり、若者たちは縄文文化をもう一度見直すべきだというようなことを蕩々と力説された。
なにしろ、相手は大芸術家である。その大演説をさえぎる度胸のあるものは、スタジオには一人もいない。岡本氏は例の燃え上がるような目をカッと見開いて一人で盛り上がり、学生たちはその逆で、目が点になったまま呆然としていた。私としては大芸術家の文化論をバイト代もらって聞いたので、とてもトクしたような気持ちだったが。
いずれにしても、大芸術家は「空気を読む」なんてしゃらくさいことには一切無頓着で、日の出るような勢いで自分の姿勢を示した挙げ句、番組をぶちこわしたことなど全く意に介さず、意気揚々とお帰りになったのだった。
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コメント
大芸術家・岡本太郎画伯の芸術
私には,芸術なのかどうか、わからない
投稿: alex99 | 2011年2月27日 09:01
alex さん:
あの方の知見に関しては、実はすごいものがあったと思うのですが、作品に関しては、実は私もよくわかりません ^^;)
投稿: tak | 2011年2月27日 10:13
こんにちは~
おもしろいですね~~
芸術って・・・
私にも、あの芸術性はよくわかりませんでした。
私の芸術に関する範疇には無いような
好みではない芸術だった・・・・
しかし、
ああいう方は
世に認められるだけの、見識がおありなんですよね。
そう、思います。
投稿: tokiko68 | 2011年2月27日 14:38
おっと!
肝心なことを書き忘れました~~
tak_shonaiさんって、
よく、選ばれるお人ですよね?
なんでしたっけ、
着ぐるみのグルジイヨオ=というのを
着せられて
死にかけたってこともあったし・・
その他イロイロ うふふ
投稿: tokiko68 | 2011年2月27日 14:43
tokiko68 さん:
>ああいう方は
>世に認められるだけの、見識がおありなんですよね。
なにしろ、パリ大学でかなりいろいろな勉強をした人ですからね。
フツーの常識にかからなかった人なんだと思います。
>tak_shonaiさんって、
>よく、選ばれるお人ですよね?
このときは、確か NHK にコネのある友達から声がかかって、「そりゃ、おいしいバイトじゃん!」 と大喜びで参加しただけなんです。
ですから、その友達の顔を潰しちゃいけないので、意識しておとなしくしてました。
そして、あまり一方的数字が出ないように、質問の内容に関わりなく、ずっと 「ノー」 を押し続けてました。
岡本太郎氏よりずっと 「オトナ」 の私でした (^o^)
投稿: tak | 2011年2月28日 05:35